死にかけ令嬢は二度と戻らない

水空 葵

文字の大きさ
19 / 36

19. 信頼出来る人

しおりを挟む
 あれから少しして、お茶会は無事にお開きになった。
 ライアス様の様子も途中から元に戻っていたから、きっと大丈夫だと思う。

「エリーさん、お疲れ様。兄がヘタレで申し訳なかったですわ」

「ありがとうございます。
 ライアス様はどうしてあんな風になってしまったのでしょうか……?」

「……本気で気付いていませんの?
 お兄様はエリーさんのことを女性として好きになっているみたいですわ……」

「えっ?」

 フィリア様の言葉を聞いて、思わず間抜けな声を漏らしてしまう。
 今の私はまだ痩せ細っていて、背も子供みたいに低くて、女性らしい雰囲気なんて欠片も無い。

 そんな私を女性として好きになるって……。
 私はライアス様に助けられてばかりで、彼には何も出来ていなかったのに。

「思い返せば、最初からエリーさんに気があるとしか思えない行動ばかりでしたわね。
 最初はエリーさんを王家の養子にすることになっていましたの。貴女は控えめに言って天才ですから、王家としては手放したくありませんの」

「私が天才ですか……?」

「無自覚でしたのね……。
 マナーの勉強を一週間で終えるなんて、普通は出来ませんわ。だから王家の養子にしようと話が纏まりそうでしたの」
 でも、お兄様が猛反対して、他家の養子にすることになりましたわ。もっともらしい理由を言っていましたけれど、本音はエリーさんを婚約者にするためだと思いますわ」

「そうだったのですね。
 でも、どうしてライアス様は私を好きになったのでしょうか?」

「それは本人に聞かないと分かりませんわ」

「そうですよね……」

 ライアス様が何を考えているのかは、フィリア様でも分からないらしい。
 人の心なんて覗けないから、当然なのだけど。

「エリーさんはお兄様のこと、男性としてどう思っていますの?」

「助けられてからずっと優しくして頂いているので、一緒に居られたら嬉しいと思っています」

「そういうことではなくて、顔とか性格とか、その辺りはどう思っていますの?」

「顔も性格も嫌いではないですけれど、考えるとよく分かりませんの。
 心にもやがかかっているような感じがして……」

「エリーさんとお兄様は両想いなのかもしれませんわ。
 私が見ている限りでは、お付き合いから始めても良いと思います」

「ライアス様に言われたら考えてみますわ」

 令嬢として育てられていなかったから忘れていたけれど、貴族の養子になるということは、その家の関係構築のために誰かと婚姻を結ぶことになる。
 けれど殆どは政略的なものだから、好きな人と結ばれることは難しいのよね……。

 お母様がお父様と結婚したのも政略的な理由が大きかったと聞いたことがあるから、噂は本当だと思う。

 だからライアス様と婚約した方が幸せになれる気がするけれど、私はまだこんな身体だから、誰かと婚約なんて出来ないと思う。
 そう思っていたら、フィリア様はこんなことを口にした。

「お兄様に告白する勇気は無いと思いますから、エリーさんから告白しても大丈夫ですわ。
腹黒い方と婚約するよりも、エリーさんの方が安心出来ますもの」

「フィリア様にそう言って頂けるなんて、光栄です!」

「そんな、大げさです。
 私はただ、信頼出来る方が親戚になるのが嬉しいのですわ」

 フィリア様は私のことを信頼してくれているみたい。
 マリア様やライアス様、他の王族の方々がどう思っているのかは分からないけれど、味方を増やせて本当に良かったと思う。
 でも、ここで嫌われたら元も子もないから、好待遇に甘えないようにしなくちゃ。

 そんなことを考えながら、部屋に向けて足を進める私。
 廊下の途中でフィリア様とは分かれて、私は侍女さん二人に付き添われて部屋へと戻った。

 その後の夕食は少し気まずかったけれど、ライアス様とも問題なくお話し出来たから、心配しなくても大丈夫よね……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】旦那様に隠し子がいるようです。でも可愛いから全然OK!

曽根原ツタ
恋愛
 実家の借金返済のため、多額の支度金を用意してくれるという公爵に嫁ぐことを父親から押し付けられるスフィミア。冷酷無慈悲、引きこもりこ好色家と有名な公爵だが、超ポジティブな彼女は全く気にせずあっさり縁談を受けた。  公爵家で出迎えてくれたのは、五歳くらいの小さな男の子だった。 (まぁ、隠し子がいらっしゃったのね。知らされていなかったけれど、可愛いから全然OK!)  そして、ちょっとやそっとじゃ動じないポジティブ公爵夫人が、可愛い子どもを溺愛する日々が始まる。    一方、多額の支度金を手に入れたスフィミアの家族は、破滅の一途を辿っていて……? ☆小説家になろう様でも公開中

(完結)妹の身代わりの私

青空一夏
恋愛
妹の身代わりで嫁いだ私の物語。 ゆるふわ設定のご都合主義。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

侍女から第2夫人、そして……

しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。 翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。 ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。 一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。 正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。 セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

処理中です...