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12. これから必要なこと
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翌朝。
私は礼儀作法の勉強のために、朝早くから身支度を済ませた。
朝早いと言っても、ザーベッシュ邸で暮らしていた時よりは遅いから、欠片も眠くない。
侍女達には心配されたけれど、私が苦手なのは夜だから今は大丈夫だ。
今日から私の先生をしてくれる人は何人もいるそうで、それぞれ専門分野が違うらしい。
最初は社交界でのマナーの勉強なのだけど、先生はまさかの伯母様だった。
「伯母様が先生だなんて、驚きました」
「私も、推薦された時は驚いたわ」
分かりにくくなるから伯母様と呼んでいるけれど、今は私の義母だ。
けれども、お義母様と呼ぶとザーベッシュ邸でのことを思い出してしまうから、許可を頂いて伯母様と呼び続けている。
「推薦ですか? 伯母様、そんなに凄いのですね!」
「私なんてまだまだよ。王妃様の方がずっと綺麗な所作をしているわ」
こうしてお話している時、柔らかな笑みを浮かべる様子からは、凄い人とは思えない。
だから油断していたのだけど、いざ学ぶ時間になると伯母様が纏う空気がガラリと変わった。
「――そろそろ時間だから、始めましょう」
「は、はい!」
学ぶ内容をまだ知らないせいか、なんだか緊張してしまう。
「まずは食事のマナーからね。ダイニングに移動しましょう」
最初の勉強は、実践しながら学ぶらしい。
ジュリア達の作法を見ていたから全く知らないわけではないけれど、最初から実践だなんて。
伯母様は見かけによらず厳しいらしい。
そんなことを思いながらダイニングに入ると、伯母様が再び口を開いた。
「まずは私が手本を見せるから、真似てみるのよ」
「分かりました」
「座るときは……」
説明を聞いてから同じ動きをすると、頷きが返ってくる。
どうやら上手く出来たらしい。
ジュリア達の動きとは違うけれど、王族に推薦された伯母様が間違っているとは思えなかった。
きっと、ジュリア達の所作は間違いなのだと思う。社交界でも同じことをしているなら、家名は傷だらけのボロボロに違いないわ。
そう思ってしまったけれど、食事のマナーと一括りにしても覚えることは沢山ある。
だから、私がアースサンドの家名に傷を付けないように、完璧になるまで練習することに決めた。
「――ここまでが食事の流れだけど、大丈夫そう?」
「まだ自信はありません……」
「慣れていけば意識しなくても出来るようになるわ。今は間違えても大丈夫だから、ゆっくり身に着けていきましょう」
伯母様も協力してくれるみたいだから、その言葉に頷く。
それからは朝食をとることになり、今学んだばかりのことに気を付けながら席に座る。
アースサンド家の方々はすごく優しいから、失敗しても怒られないとは思うけれど、今まで少しのミスも許されていなかったせいで緊張してしまう。
「もっと気楽にして良いのよ。マナーも大事だけれど、食事は楽しむことが一番なの」
「楽しむこと……」
「だから、気を張らなくて大丈夫」
すぐに伯母様が声をかけてくれたから、緊張は解けた。
でも、学んだ作法には気を付けて食事を進めていく。
そしてお皿を空にすると、皆から小さく拍手を送られた。
「昨日とは見違えるほど良くなったわ。一回目でここまで出来るなら、すぐに社交界に出られそうね。アイリスちゃんは天才だわ」
「これなら、聖女候補の肩書が無くても見下されないだろう。将来が楽しみだ」
伯母様と伯父様はそんな風に言ってくれる。
二人とも所作が洗練されているから、毎日真似をするだけでも成長出来ると思う。
「すぐに身に着けられるように頑張ります」
「良い心構えだ。だが、無理はしないように」
「はい!」
次は歩き方について学ぶことになり、廊下を実際に歩いていく。
令嬢らしい歩き方は今までの歩き方とは違っていて、慣れるまで苦労しそうだ。
「難しいです……」
「足音を立てないことが一番難しいのに、もう出来ているから大丈夫よ。
動きはすぐ慣れるわ」
「こっそり動かないと叩かれていたので、気配を消すことだけは得意なんです」
「そんなに苦しんでいたのね……。助けられなくてごめんなさい」
「伯母様は何も悪くありません。だから謝らないでください」
悪いのはお義母様やジュリア達だ。
あの人達さえ居なければ、私は苦しまずに済んだと思う。
だから……お義母様達には相応の罰を受けてもらいたい。
今すぐに追い詰めることは無理でも、せめて見返せるようになる。
そう決めたから、どんなに厳しい勉強でも乗り越えられる気がした。
私は礼儀作法の勉強のために、朝早くから身支度を済ませた。
朝早いと言っても、ザーベッシュ邸で暮らしていた時よりは遅いから、欠片も眠くない。
侍女達には心配されたけれど、私が苦手なのは夜だから今は大丈夫だ。
今日から私の先生をしてくれる人は何人もいるそうで、それぞれ専門分野が違うらしい。
最初は社交界でのマナーの勉強なのだけど、先生はまさかの伯母様だった。
「伯母様が先生だなんて、驚きました」
「私も、推薦された時は驚いたわ」
分かりにくくなるから伯母様と呼んでいるけれど、今は私の義母だ。
けれども、お義母様と呼ぶとザーベッシュ邸でのことを思い出してしまうから、許可を頂いて伯母様と呼び続けている。
「推薦ですか? 伯母様、そんなに凄いのですね!」
「私なんてまだまだよ。王妃様の方がずっと綺麗な所作をしているわ」
こうしてお話している時、柔らかな笑みを浮かべる様子からは、凄い人とは思えない。
だから油断していたのだけど、いざ学ぶ時間になると伯母様が纏う空気がガラリと変わった。
「――そろそろ時間だから、始めましょう」
「は、はい!」
学ぶ内容をまだ知らないせいか、なんだか緊張してしまう。
「まずは食事のマナーからね。ダイニングに移動しましょう」
最初の勉強は、実践しながら学ぶらしい。
ジュリア達の作法を見ていたから全く知らないわけではないけれど、最初から実践だなんて。
伯母様は見かけによらず厳しいらしい。
そんなことを思いながらダイニングに入ると、伯母様が再び口を開いた。
「まずは私が手本を見せるから、真似てみるのよ」
「分かりました」
「座るときは……」
説明を聞いてから同じ動きをすると、頷きが返ってくる。
どうやら上手く出来たらしい。
ジュリア達の動きとは違うけれど、王族に推薦された伯母様が間違っているとは思えなかった。
きっと、ジュリア達の所作は間違いなのだと思う。社交界でも同じことをしているなら、家名は傷だらけのボロボロに違いないわ。
そう思ってしまったけれど、食事のマナーと一括りにしても覚えることは沢山ある。
だから、私がアースサンドの家名に傷を付けないように、完璧になるまで練習することに決めた。
「――ここまでが食事の流れだけど、大丈夫そう?」
「まだ自信はありません……」
「慣れていけば意識しなくても出来るようになるわ。今は間違えても大丈夫だから、ゆっくり身に着けていきましょう」
伯母様も協力してくれるみたいだから、その言葉に頷く。
それからは朝食をとることになり、今学んだばかりのことに気を付けながら席に座る。
アースサンド家の方々はすごく優しいから、失敗しても怒られないとは思うけれど、今まで少しのミスも許されていなかったせいで緊張してしまう。
「もっと気楽にして良いのよ。マナーも大事だけれど、食事は楽しむことが一番なの」
「楽しむこと……」
「だから、気を張らなくて大丈夫」
すぐに伯母様が声をかけてくれたから、緊張は解けた。
でも、学んだ作法には気を付けて食事を進めていく。
そしてお皿を空にすると、皆から小さく拍手を送られた。
「昨日とは見違えるほど良くなったわ。一回目でここまで出来るなら、すぐに社交界に出られそうね。アイリスちゃんは天才だわ」
「これなら、聖女候補の肩書が無くても見下されないだろう。将来が楽しみだ」
伯母様と伯父様はそんな風に言ってくれる。
二人とも所作が洗練されているから、毎日真似をするだけでも成長出来ると思う。
「すぐに身に着けられるように頑張ります」
「良い心構えだ。だが、無理はしないように」
「はい!」
次は歩き方について学ぶことになり、廊下を実際に歩いていく。
令嬢らしい歩き方は今までの歩き方とは違っていて、慣れるまで苦労しそうだ。
「難しいです……」
「足音を立てないことが一番難しいのに、もう出来ているから大丈夫よ。
動きはすぐ慣れるわ」
「こっそり動かないと叩かれていたので、気配を消すことだけは得意なんです」
「そんなに苦しんでいたのね……。助けられなくてごめんなさい」
「伯母様は何も悪くありません。だから謝らないでください」
悪いのはお義母様やジュリア達だ。
あの人達さえ居なければ、私は苦しまずに済んだと思う。
だから……お義母様達には相応の罰を受けてもらいたい。
今すぐに追い詰めることは無理でも、せめて見返せるようになる。
そう決めたから、どんなに厳しい勉強でも乗り越えられる気がした。
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