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13. 決断されたもの
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「追い出された理由に心当たりは?」
「話を聞かれていたみたいで……お母様に……」
詳しく聞いてみると、お義母様に「婚前に子を宿すなんて恥になる! そんなのは私の子供ではない! 出ていきなさい!」と荒く言い放たれた上に、階段で侍女たちに引き摺り下ろされたらしい。
それなのに油にまみれていないのは、上着を取られてしまったかららしい。
確かに、さっき見た時に羽織っていた服は見当たらない。
「野垂れ死ねばいいのよって言われたときは傷ついたわ……」
そんなことがあったから、打ち付けられた背中が痛んでいたらしい。今は治癒魔法で治したみたいだけれど。
ちなみに、お義母様は階段で盛大に転んで立ち上がれなくなったそうだけど、それでも侍女達に追い出すことを優先させたというのだから驚きよね……。
「そういえば、忌み子が帰ったら片づけるように言ったわよね、と侍女達を怒鳴っていたわ……」
「犯人はお義母様だったのね……」
思ってもいなかった形で油の犯人が分かったのだけれど、今はレベッカの問題が先。
だから、アルバート様も交えた話をすることにした。
もしも彼をレベッカが狙うようなことがあったら、その時は見捨てるしかないけれど……。
ちなみに衛兵さん達も事態に気付いて何人か集まったけれど、私が対応していることに気付いたらすぐに持ち場に戻っていった。
「アルバート様は王城に来てもいいと言って下さってるわ。あとは貴女の答え次第よ」
「あの殺意は本物でした。だから、王城に避難したいです」
「分かった。そのように手配しよう。ただし、王宮には立ち入らないように」
「分かりました、ありがとうございます」
レベッカの後に、私もお礼を口にした。
ちなみに、王城と王宮は隣り合ってはいるけれど違う建物になっている。
王宮は王族の住まいだから、親衛隊や王宮の侍従の他に許可を出された人しか入ることが許されない。
もう一方の王城は王国の政を担う建物になっていて、貴族が宿泊できる部屋がいくつも用意されている。
「しかし腑に落ちないな。レベッカ嬢はシルフィーナの義母の娘なのだろう? そこまで殺意を出せるものなのか?」
「プライドが高いのかもしれませんわ。外聞を異常なくらい気にしていましたから」
「そうだとすれば余計に厄介だな。公爵は何故そんな人を後妻にしたのだ……」
私が今までずっと疑問に思っていたことを口にするアルバート様。
魔法の才があるレベッカ目当てなのは分かっているけれど、これだけ身勝手に振舞われても放置していることは不思議だった。
そもそも本来の目的は、私の支えになるように……と聞いているのだけれど。その目的と真逆になっているのよね。
「私にもわかりません。ですが、私には言えない意図があると思っていますわ」
「シルフィーナも同じ考えなら、そうなのだろう。今は静観しよう」
「分かりましたわ」
頷く私。
それからしばらく、馬車の音だけが響いていた。
☆
「お父様、報告があります」
あれからしばらくして、私は王城内にある魔法省の一室に来ていた。
ここはお父様の仕事場で、普段は邪魔しないようにと私が立ち入ることはしていない。
けれども、いつでも来ていいとお父様から言われているから、レベッカのことを報告するために足を運んでいる。
「何かあったんだな?」
「はい。レベッカが薄着のまま屋敷から追い出されましたわ」
「何だと? 追い出したのは誰だ?」
「お義母様ですわ」
事実だけを口にすると、お父様は頭を抱えてしまった。
「レベッカはどこにいる?」
「王城に来ていますわ。たまたま、その場に居合わせることになりましたので」
「そうか、それは申し訳ないことをしたな」
今は私が嫌がらせされていたことを知っているからか、お父様は申し訳なさそうな様子。
本当はもっと言いたいことがあるのだけど、今話すことではないからぐっとこらえる。
「レベッカのことは、今はそれほど気にしていないから大丈夫ですわ。問題は、レベッカが追い出された原因の方ですの」
「まだあるのだな?」
「ええ」
私はレベッカが置かれている状況について説明した。
お義母様から殺意を向けられていることや、私が階段で罠にはまりそうになったことも含めて。
「教えてくれてありがとう。そろそろ離縁せねばならないようだな」
けれども、すぐにこんな答えが返ってくるとは思っていなかったから、私は少しの間固まってしまった。
「話を聞かれていたみたいで……お母様に……」
詳しく聞いてみると、お義母様に「婚前に子を宿すなんて恥になる! そんなのは私の子供ではない! 出ていきなさい!」と荒く言い放たれた上に、階段で侍女たちに引き摺り下ろされたらしい。
それなのに油にまみれていないのは、上着を取られてしまったかららしい。
確かに、さっき見た時に羽織っていた服は見当たらない。
「野垂れ死ねばいいのよって言われたときは傷ついたわ……」
そんなことがあったから、打ち付けられた背中が痛んでいたらしい。今は治癒魔法で治したみたいだけれど。
ちなみに、お義母様は階段で盛大に転んで立ち上がれなくなったそうだけど、それでも侍女達に追い出すことを優先させたというのだから驚きよね……。
「そういえば、忌み子が帰ったら片づけるように言ったわよね、と侍女達を怒鳴っていたわ……」
「犯人はお義母様だったのね……」
思ってもいなかった形で油の犯人が分かったのだけれど、今はレベッカの問題が先。
だから、アルバート様も交えた話をすることにした。
もしも彼をレベッカが狙うようなことがあったら、その時は見捨てるしかないけれど……。
ちなみに衛兵さん達も事態に気付いて何人か集まったけれど、私が対応していることに気付いたらすぐに持ち場に戻っていった。
「アルバート様は王城に来てもいいと言って下さってるわ。あとは貴女の答え次第よ」
「あの殺意は本物でした。だから、王城に避難したいです」
「分かった。そのように手配しよう。ただし、王宮には立ち入らないように」
「分かりました、ありがとうございます」
レベッカの後に、私もお礼を口にした。
ちなみに、王城と王宮は隣り合ってはいるけれど違う建物になっている。
王宮は王族の住まいだから、親衛隊や王宮の侍従の他に許可を出された人しか入ることが許されない。
もう一方の王城は王国の政を担う建物になっていて、貴族が宿泊できる部屋がいくつも用意されている。
「しかし腑に落ちないな。レベッカ嬢はシルフィーナの義母の娘なのだろう? そこまで殺意を出せるものなのか?」
「プライドが高いのかもしれませんわ。外聞を異常なくらい気にしていましたから」
「そうだとすれば余計に厄介だな。公爵は何故そんな人を後妻にしたのだ……」
私が今までずっと疑問に思っていたことを口にするアルバート様。
魔法の才があるレベッカ目当てなのは分かっているけれど、これだけ身勝手に振舞われても放置していることは不思議だった。
そもそも本来の目的は、私の支えになるように……と聞いているのだけれど。その目的と真逆になっているのよね。
「私にもわかりません。ですが、私には言えない意図があると思っていますわ」
「シルフィーナも同じ考えなら、そうなのだろう。今は静観しよう」
「分かりましたわ」
頷く私。
それからしばらく、馬車の音だけが響いていた。
☆
「お父様、報告があります」
あれからしばらくして、私は王城内にある魔法省の一室に来ていた。
ここはお父様の仕事場で、普段は邪魔しないようにと私が立ち入ることはしていない。
けれども、いつでも来ていいとお父様から言われているから、レベッカのことを報告するために足を運んでいる。
「何かあったんだな?」
「はい。レベッカが薄着のまま屋敷から追い出されましたわ」
「何だと? 追い出したのは誰だ?」
「お義母様ですわ」
事実だけを口にすると、お父様は頭を抱えてしまった。
「レベッカはどこにいる?」
「王城に来ていますわ。たまたま、その場に居合わせることになりましたので」
「そうか、それは申し訳ないことをしたな」
今は私が嫌がらせされていたことを知っているからか、お父様は申し訳なさそうな様子。
本当はもっと言いたいことがあるのだけど、今話すことではないからぐっとこらえる。
「レベッカのことは、今はそれほど気にしていないから大丈夫ですわ。問題は、レベッカが追い出された原因の方ですの」
「まだあるのだな?」
「ええ」
私はレベッカが置かれている状況について説明した。
お義母様から殺意を向けられていることや、私が階段で罠にはまりそうになったことも含めて。
「教えてくれてありがとう。そろそろ離縁せねばならないようだな」
けれども、すぐにこんな答えが返ってくるとは思っていなかったから、私は少しの間固まってしまった。
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