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第5章 公爵令嬢、幸せの糸を掴みます
44. 自分で作った結果①
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少しして、休憩を終えたマリエット達はオニオンを切り進めていく。
テオドールは相変わらず目に涙をためているけれど、目は見開いたまま慎重に包丁を動かしていた。
(私は慣れるまで目を開け続けられなかったのに……)
マリエットとて目が沁みないわけではない。
今はオニオンから少し距離を取っているため涙こそ流れていないが、料理スキルを使わずに切ると涙を堪えきれないこともあった。
だからスキルを使わずに涙を堪え切っているテオドールが凄く見える。
男性なら当たり前のように思えるかもしれないけれど、マリエットの父は厨房を覗いただけで涙が止まらなくなっていたから、個人差も大きいのだろう。
「……なんとか切り終えたよ」
「では、最後にお肉を切っていきましょう」
「分かった。一つ質問なのだが、肉を最後にするのには何か理由があるのか?」
オニオンを入れたボウルに蓋をし冷蔵庫に足を向けると、テオドールがそんな問いかけをする。
大抵の料理人は順番を気にしないけれど、彼は興味を持ったらしい。
「お肉の方が傷みやすいので、出来るだけ放置したくないのです。なので、今から冷蔵庫に取りに行きます」
「なるほど。食中りのことも考えないといけないのだな」
「ええ。食中りで命を落とすこともあるので、とても大事ですわ」
言葉を交わしながら、マリエットは豚肉を取り出しまな板の上に運ぶ。
今回は王宮に卸されている肉を使うから、中身は既に薄く切られていた。
「お肉はこんな風に、食べやすい大きさに切っていきますわ」
「分かった」
ほぐすだけでも料理には使える状態だけれど、マリエットは手を加えることを選ぶ。
ちなみに、肉を切るテオドールの手際は今までで一番良く、上達を感じられた。
「……これで良いだろうか?」
「とてもお上手ですわ。食材の用意はこれで終わりなので、次は炒めていきましょう」
「いよいよ火を使うのだな」
「ええ。火傷しないように気を付けてくださいね」
そう前置きをして、フライパンの上に油をひいていく。
すると、テオドールから疑問が投げかけられた。
「油をひかなかったら、どうなるのだ?」
「食材が焦げ付いたり、味が落ちたりしますわ」
「味にも影響するのか……忘れないようにしよう」
続けて、マリエットは今日初めて料理スキルを使う。
テオドールは炎のスキルが使えるから、料理スキルでも炎を使うだけなら問題ないと考えての行動だった。
(スキルは活用しないと、大変なだけなのよね……)
せっかく使えるのだから、活かさないなんて勿体無い。
テオドールはマリエットの意図に気付いたようで、薪に伸ばしかけていた手を戻す。
「最初は軽くフライパンを温めて、油を広げます」
「温めると広がりやすくなるのだな」
「その通りです。……これくらいになれば十分なので、食材を入れていきますわ」
そう口にし、手本のために肉を入れていく。
するとジュ―っという音が響いた。
「この音は肉を焼いていたのか」
「ええ。テオドール様も入れてみますか?」
「もちろん」
テオドールもマリエットの動きを真似して、肉を伸ばしながらフライパンに入れる。
そして最後まで入れ終えると、再びマリエットがフライパンの前に立ち、炒め方の手本を見せた。
「こんな風に、満遍なく火を通していきます」
「分かった」
説明を受けたテオドールは最初こそ覚束ない動きだったけれど、慣れてくると動きも様になっていた。
次第に肉に火も通ってきて、香ばしさが漂う。
すると、マリエットはこんな言葉を口にした。
「テオドール様、この野菜も右から順番に入れて炒めてください
「分かった」
料理スキルはもう使っていないけれど、マリエットの指示は的確だ。
だから、味付けも済ませて完成が近づくと、美味しそうな香りが周囲に漂い始めた。
テオドールは相変わらず目に涙をためているけれど、目は見開いたまま慎重に包丁を動かしていた。
(私は慣れるまで目を開け続けられなかったのに……)
マリエットとて目が沁みないわけではない。
今はオニオンから少し距離を取っているため涙こそ流れていないが、料理スキルを使わずに切ると涙を堪えきれないこともあった。
だからスキルを使わずに涙を堪え切っているテオドールが凄く見える。
男性なら当たり前のように思えるかもしれないけれど、マリエットの父は厨房を覗いただけで涙が止まらなくなっていたから、個人差も大きいのだろう。
「……なんとか切り終えたよ」
「では、最後にお肉を切っていきましょう」
「分かった。一つ質問なのだが、肉を最後にするのには何か理由があるのか?」
オニオンを入れたボウルに蓋をし冷蔵庫に足を向けると、テオドールがそんな問いかけをする。
大抵の料理人は順番を気にしないけれど、彼は興味を持ったらしい。
「お肉の方が傷みやすいので、出来るだけ放置したくないのです。なので、今から冷蔵庫に取りに行きます」
「なるほど。食中りのことも考えないといけないのだな」
「ええ。食中りで命を落とすこともあるので、とても大事ですわ」
言葉を交わしながら、マリエットは豚肉を取り出しまな板の上に運ぶ。
今回は王宮に卸されている肉を使うから、中身は既に薄く切られていた。
「お肉はこんな風に、食べやすい大きさに切っていきますわ」
「分かった」
ほぐすだけでも料理には使える状態だけれど、マリエットは手を加えることを選ぶ。
ちなみに、肉を切るテオドールの手際は今までで一番良く、上達を感じられた。
「……これで良いだろうか?」
「とてもお上手ですわ。食材の用意はこれで終わりなので、次は炒めていきましょう」
「いよいよ火を使うのだな」
「ええ。火傷しないように気を付けてくださいね」
そう前置きをして、フライパンの上に油をひいていく。
すると、テオドールから疑問が投げかけられた。
「油をひかなかったら、どうなるのだ?」
「食材が焦げ付いたり、味が落ちたりしますわ」
「味にも影響するのか……忘れないようにしよう」
続けて、マリエットは今日初めて料理スキルを使う。
テオドールは炎のスキルが使えるから、料理スキルでも炎を使うだけなら問題ないと考えての行動だった。
(スキルは活用しないと、大変なだけなのよね……)
せっかく使えるのだから、活かさないなんて勿体無い。
テオドールはマリエットの意図に気付いたようで、薪に伸ばしかけていた手を戻す。
「最初は軽くフライパンを温めて、油を広げます」
「温めると広がりやすくなるのだな」
「その通りです。……これくらいになれば十分なので、食材を入れていきますわ」
そう口にし、手本のために肉を入れていく。
するとジュ―っという音が響いた。
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「もちろん」
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すると、マリエットはこんな言葉を口にした。
「テオドール様、この野菜も右から順番に入れて炒めてください
「分かった」
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だから、味付けも済ませて完成が近づくと、美味しそうな香りが周囲に漂い始めた。
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