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第5章 公爵令嬢、幸せの糸を掴みます
46. 初心者なのに①
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あれから二日。
今日はステーキを作る日だから、マリエットは朝から仕込みをしていた。
隣にはテオドールの姿もあり、初日の姿からは想像もつかないほど手際よく副菜の用意を進めている。
料理人ではない者が王族の口に入るものを作ることは本来なら許されない行為だけれど、テオドールが国王にお願いしたところ快諾されたのだ。
「陛下がどんな反応をするのか楽しみね」
「俺は緊張で夜しか眠れなかったよ」
「とても健康的ですのね。すぐに慣れるので、お昼も眠れるようになると思います」
「それは困るな。料理を学ぶ時間が消えてしまう」
テオドールもマリエットも、十何年も前からお昼寝はしない日々を送っている。
悠々自適に暮らしていると思われがちな貴族でも、社交界で通用するような作法や知識を身に着けるため、厳しい勉強をこなさなくてはならない。
教育が終わっても、人間関係を築くために毎日のように社交界に顔を出すから、平日休日問わず休みが無いことが殆どだ。
料理人になったマリエットは休日こそ休めるけれど、テオドールは王位を継ぐための勉強が残っているため、忙しい日々を送っている。
そのことを知っているから、マリエットは不安げな表情を浮かべた。
「……あまり無理はしないでくださいね」
「ありがとう。これくらいは無理にもならないから大丈夫だ」
「テオドール様はお強いですね」
マリエットも忙しい日々を送ってきたから体力はあるものの、王族の忙しさと比べると霞んでしまう。
けれどテオドールの表情は自信に満ちていて、その様子を見れば不安はどこかへ消えていった。
「俺はまだまだだよ。でも、マリーのお陰で俺も頑張れている」
「お役に立てて光栄ですわ」
そんな言葉を交わしている間に、テオドールは必要な食材を切り終えて包丁を置く。
マリエットが視線を向けると、最初とは見違えるほど綺麗に切り揃えられた野菜が目に入った。
(まだ一週間も経っていない初心者なのに……)
初心者とは思えない出来を見れば、彼の才能を感じずには居られない。
このまま料理を続けていけば、料理人に並ぶことだって想像出来る。
「……野菜、切り終えたよ」
「ありがとうございます。昨日よりも更に腕を上げられましたね」
「マリーの教え方が上手なお陰だ。ありがとう」
「テオドール様の才能があってこそですわ」
謙遜するテオドールに、マリエットはそう口にする。
大抵の貴族は褒めると驕る者が多いものの、彼は少し照れたような様子を見せるだけ。
(王宮の料理人になって良かったわ)
こんなにも仕え甲斐のある王侯貴族とは中々出会えないだろう。
もっとも、今は主従ではなく婚約者同士の関係だから、最初に想像していたものとは違った。
「次は何をすれば良いだろうか?」
「お肉にもう少し時間がかかるので、後片付けを進めて頂けると助かりますわ」
そう言葉を交わしていると、次第に芳ばしい香りが漂いはじめる。
マリエットは音を聞きながらタイミングを見計らい、ステーキをひっくり返していった。
今日はステーキを作る日だから、マリエットは朝から仕込みをしていた。
隣にはテオドールの姿もあり、初日の姿からは想像もつかないほど手際よく副菜の用意を進めている。
料理人ではない者が王族の口に入るものを作ることは本来なら許されない行為だけれど、テオドールが国王にお願いしたところ快諾されたのだ。
「陛下がどんな反応をするのか楽しみね」
「俺は緊張で夜しか眠れなかったよ」
「とても健康的ですのね。すぐに慣れるので、お昼も眠れるようになると思います」
「それは困るな。料理を学ぶ時間が消えてしまう」
テオドールもマリエットも、十何年も前からお昼寝はしない日々を送っている。
悠々自適に暮らしていると思われがちな貴族でも、社交界で通用するような作法や知識を身に着けるため、厳しい勉強をこなさなくてはならない。
教育が終わっても、人間関係を築くために毎日のように社交界に顔を出すから、平日休日問わず休みが無いことが殆どだ。
料理人になったマリエットは休日こそ休めるけれど、テオドールは王位を継ぐための勉強が残っているため、忙しい日々を送っている。
そのことを知っているから、マリエットは不安げな表情を浮かべた。
「……あまり無理はしないでくださいね」
「ありがとう。これくらいは無理にもならないから大丈夫だ」
「テオドール様はお強いですね」
マリエットも忙しい日々を送ってきたから体力はあるものの、王族の忙しさと比べると霞んでしまう。
けれどテオドールの表情は自信に満ちていて、その様子を見れば不安はどこかへ消えていった。
「俺はまだまだだよ。でも、マリーのお陰で俺も頑張れている」
「お役に立てて光栄ですわ」
そんな言葉を交わしている間に、テオドールは必要な食材を切り終えて包丁を置く。
マリエットが視線を向けると、最初とは見違えるほど綺麗に切り揃えられた野菜が目に入った。
(まだ一週間も経っていない初心者なのに……)
初心者とは思えない出来を見れば、彼の才能を感じずには居られない。
このまま料理を続けていけば、料理人に並ぶことだって想像出来る。
「……野菜、切り終えたよ」
「ありがとうございます。昨日よりも更に腕を上げられましたね」
「マリーの教え方が上手なお陰だ。ありがとう」
「テオドール様の才能があってこそですわ」
謙遜するテオドールに、マリエットはそう口にする。
大抵の貴族は褒めると驕る者が多いものの、彼は少し照れたような様子を見せるだけ。
(王宮の料理人になって良かったわ)
こんなにも仕え甲斐のある王侯貴族とは中々出会えないだろう。
もっとも、今は主従ではなく婚約者同士の関係だから、最初に想像していたものとは違った。
「次は何をすれば良いだろうか?」
「お肉にもう少し時間がかかるので、後片付けを進めて頂けると助かりますわ」
そう言葉を交わしていると、次第に芳ばしい香りが漂いはじめる。
マリエットは音を聞きながらタイミングを見計らい、ステーキをひっくり返していった。
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