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6. 依頼を受けます
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「依頼はこの掲示板に出されているから、自分が達成出来そうなものを取って受付に持っていくんだ。
俺は魔物討伐の依頼がやりやすいけど、セシルはどうしたい?」
「この薬草採取はどうかしら?」
ルイスに言われて掲示板の前に立つと、私にも出来そうな依頼が目に入った。
聖女として薬草の知識も持っているから、珍しい薬草でも見つけるのはあまり難しくない。
けれどルイスは採取の依頼にいい思い出がないみたいで、渋い顔をされてしまう。
「セシルの手にかかれば簡単に見つかるかもしれないけど、森の中で魔物を警戒しながら採取するのは大変なんだ」
「……魔物のことは考えていなかったわ。ルイスなら、この中からだとどの依頼を選ぶ?」
「俺なら……このワイバーン討伐とオークの群れ討伐だな。どちらも見つけやすいから、すぐに達成できる」
「ワイバーンは見つけるのは簡単かもしれないけれど、倒すのに苦労しそうだわ」
ワイバーンは空を自由に舞う魔物で、弓矢の類はもちろん、攻撃魔法さえも当てるのが難しいと言われている。
相手を追尾する攻撃魔法もあるけれど、魔力を沢山使うから私には難しいのよね。
そう思っていると、ルイスは自信に満ちた表情で再び口を開いた。
「ワイバーンはコツを掴めば簡単に倒せるんだ。見つけやすくて倒しやすい、これ以上良い依頼は無いと断言するよ」
「そういうことなら、これを受けてみるわ」
そう口にして依頼を手にとると、三人組の男性冒険者が近付いてきた。
彼らは仲間同士のようで、談笑しながら依頼を探している様子だ。
冒険者の会話は聞いたことが無いから、ルイスが依頼を受けている間に聞き耳を立てる私。
すると、少し気になる会話が聞こえてきた。
「薬草の依頼が多いな」
「ノワール王国の聖女様が行方不明になったせいで、需要がかなり上がっているらしい」
私が国外追放になったことは伏せられているのね……。
ルイスの話を聞いて予想はしていたのに、こうして事実を知ると悲しくなってしまう。
けれども、今まで重かった気持ちが軽くなった気がする。
上手く説明できないけれど、王家が私をぞんざいに扱ったことを後悔するかもしれないと期待してしまったから。
……他人の不幸を望むなんて、この気持ちが知られたら悪女と罵られてしまいそうだ。
「その話だが、王女様が新聖女になったと聞いたぞ?」
「その新聖女様が問題で、一日に十人も治療出来ないらしい。前の聖女様は一日に数百人は治療していたという話だから、薬草が足りなくなって当然だろう」
「前の聖女様が有能すぎたのか、新しい聖女様が無能なのか、どっちなんだ?」
「先々代の聖女様は多くても一日に数十人だったらしい。この前、親父から聞いたよ」
先代の聖女様は私に色々なことを教えてくれていたのだけど、馬車の事故で亡くなってしまったのよね。
……思い出したら、目頭が熱くなってしまう。
誰にも気付かれないように目を細めている間も、三人組の会話は続いた。
「となると、前の聖女様が天才だったというわけか」
「ああ。しかし、英雄様も聖女様も行方不明になるとは、ノワール王国の体制はどうなっていやがる」
「さあな? 王家に嫌気が差して、二人で駆け落ちしているかもしれないな」
「それは無いだろ」
その英雄様も聖女もここに居るのだけど、彼らは気付いていない様子。
でも、目が合えば気付かれてしまいそうだから、早くこの場をはなれたい。
ルイスも同じことを考えたみたいで、私の耳元でこう呟いた。
「早くここを出よう」
「ええ」
頷いて、出来るだけ気配を殺しながらギルドを後にする私達。
それから、依頼のために町の外へと足を進めた。
俺は魔物討伐の依頼がやりやすいけど、セシルはどうしたい?」
「この薬草採取はどうかしら?」
ルイスに言われて掲示板の前に立つと、私にも出来そうな依頼が目に入った。
聖女として薬草の知識も持っているから、珍しい薬草でも見つけるのはあまり難しくない。
けれどルイスは採取の依頼にいい思い出がないみたいで、渋い顔をされてしまう。
「セシルの手にかかれば簡単に見つかるかもしれないけど、森の中で魔物を警戒しながら採取するのは大変なんだ」
「……魔物のことは考えていなかったわ。ルイスなら、この中からだとどの依頼を選ぶ?」
「俺なら……このワイバーン討伐とオークの群れ討伐だな。どちらも見つけやすいから、すぐに達成できる」
「ワイバーンは見つけるのは簡単かもしれないけれど、倒すのに苦労しそうだわ」
ワイバーンは空を自由に舞う魔物で、弓矢の類はもちろん、攻撃魔法さえも当てるのが難しいと言われている。
相手を追尾する攻撃魔法もあるけれど、魔力を沢山使うから私には難しいのよね。
そう思っていると、ルイスは自信に満ちた表情で再び口を開いた。
「ワイバーンはコツを掴めば簡単に倒せるんだ。見つけやすくて倒しやすい、これ以上良い依頼は無いと断言するよ」
「そういうことなら、これを受けてみるわ」
そう口にして依頼を手にとると、三人組の男性冒険者が近付いてきた。
彼らは仲間同士のようで、談笑しながら依頼を探している様子だ。
冒険者の会話は聞いたことが無いから、ルイスが依頼を受けている間に聞き耳を立てる私。
すると、少し気になる会話が聞こえてきた。
「薬草の依頼が多いな」
「ノワール王国の聖女様が行方不明になったせいで、需要がかなり上がっているらしい」
私が国外追放になったことは伏せられているのね……。
ルイスの話を聞いて予想はしていたのに、こうして事実を知ると悲しくなってしまう。
けれども、今まで重かった気持ちが軽くなった気がする。
上手く説明できないけれど、王家が私をぞんざいに扱ったことを後悔するかもしれないと期待してしまったから。
……他人の不幸を望むなんて、この気持ちが知られたら悪女と罵られてしまいそうだ。
「その話だが、王女様が新聖女になったと聞いたぞ?」
「その新聖女様が問題で、一日に十人も治療出来ないらしい。前の聖女様は一日に数百人は治療していたという話だから、薬草が足りなくなって当然だろう」
「前の聖女様が有能すぎたのか、新しい聖女様が無能なのか、どっちなんだ?」
「先々代の聖女様は多くても一日に数十人だったらしい。この前、親父から聞いたよ」
先代の聖女様は私に色々なことを教えてくれていたのだけど、馬車の事故で亡くなってしまったのよね。
……思い出したら、目頭が熱くなってしまう。
誰にも気付かれないように目を細めている間も、三人組の会話は続いた。
「となると、前の聖女様が天才だったというわけか」
「ああ。しかし、英雄様も聖女様も行方不明になるとは、ノワール王国の体制はどうなっていやがる」
「さあな? 王家に嫌気が差して、二人で駆け落ちしているかもしれないな」
「それは無いだろ」
その英雄様も聖女もここに居るのだけど、彼らは気付いていない様子。
でも、目が合えば気付かれてしまいそうだから、早くこの場をはなれたい。
ルイスも同じことを考えたみたいで、私の耳元でこう呟いた。
「早くここを出よう」
「ええ」
頷いて、出来るだけ気配を殺しながらギルドを後にする私達。
それから、依頼のために町の外へと足を進めた。
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