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第2章
76. 移動のために
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家を出てから一時間。
広い帝都からようやく出る事が出来た私達は、獲物を探して空を回っているワイバーンを見つけた。
全部で五匹。普通なら二人では戦わない相手だけれど、私達には関係ないのよね。
「お、こっちに来るぞ。
魔法の準備を」
「もう出来ているわ」
「分かった」
魔法が届く距離になるまで待ってから、詠唱を済ませておいた闇魔法を飛ばす。
すると、本当に思い通りにワイバーンを動かせるようになった。
「おぉ……」
ゆっくりと私達の前に降りて来るワイバーンを見て、クラウスが感心したような声を漏らす。
今使った魔法は、相手を洗脳するための魔法。難易度が高くて容易に使えるものではないみたいだけど、無事に成功したらしい。
「成功したみたい」
「そのようだな。本当にペットだと認識させるとは、恐ろしい……。
悪用するなよ?」
「しないわよ。
でも……こんなことが出来るなら、急いで対策しないと大変なことになるわね」
同じような魔法をアイリス様も使えていると思うと、本当に恐ろしいのよね。
ワイバーンに向かって手を右に向けると、その通りの向きに首が向けられる。
逆も同じで、犬にするように手を差し出してみると口を近付けてくれる。
人を獲物としか思っていないワイバーンとは思えない仕草で、少し可愛く見えてしまった。
でも、あの牙で噛まれたら痛そうだわ……。
「ここまで洗脳できるなら、人でも同じだろうな。
ちょっと試してくれ」
「こんな場所で大丈夫なの?」
「例えば、シエルが手を挙げたら俺が座る……という感じにしていれば、危険は無い。
解き方も教えた通りだから、大丈夫だろう」
「分かったわ」
言われた通りに、私が手を叩くと左手を挙げるという洗脳をかけてみる。
それからすぐに手を叩くと、すぐに彼は左手を空に掲げた。
でも、その行動をおかしいとは思っていないみたい。
「急に手を叩かないでくれ。手を挙げてしまったじゃないか。
戦闘中だったらどうする」
「本当に洗脳出来るのね……」
「今のは無意識だった。まさか……」
このままだと大変な事になると思ったから、クラウスにかけた魔法だけを解く私。
すると違和感に気付いたみたいで、彼は唖然としている様子を見せた。
術中に嵌っていることに気付かないなら、今まで私がアイリス様に魔法をかけられていても気付けないことになる。
今更かもしれないけれど、大慌てで私にも解呪の魔法をかけた。
「ここまで酷いとは思わなかったよ。
これなら、人間を操り人形に出来てしまう。」
「もしかしたら、お兄様も……。
この魔法がかけられているか調べる方法は無いのかしら?」
「魔力の気配を感じることくらいしか出来ないと思う。
俺は適性が無いから分からないが、シエルなら気付けるはずだ」
そんな言葉を交わしながら、従順になっているワイバーンの背中に乗る私達。
私には洗脳の魔法はかけられていなかったみたいだけど、お兄様は確実に幻惑の魔法をかけられているから、すぐにワイバーンを羽ばたかせた。
今回は、私もクラウスも同じワイバーンに乗っているから、叫ばなくても会話が出来る。
いつも叫びすぎて喉を嗄らしていたから、今日はすごく気持ちが楽なのよね。
お兄様のことは心配だけれど、どんなに急いでもワイバーンが飛べる速さまでしか急げないのだから。
「気付けないかもしれないから、防御魔法は切らさないようにするわ」
「助かる。
今更かもしれないが、妹と会うのは大丈夫なのか?」
「ええ。反省しているとお兄様が言っていたから、心配していないわ」
妹のリリアはことあるごとに私の物を欲しがっていたけれど、私が家から出てすぐに態度を改めたらしいのよね。
リリアは私のことを心配していたそうだから、姉妹だと思ってくれているのだと思う。
それに取られていたと言っても、私がおねだりに負けて渡していたから、私の責任もあるはずなのよね。
だから責めるつもりはないし、反省してくれていればそれで満足。
血の繋がった妹だもの。憎むより仲良くしていた方が幸せになれると思うから。
「それなら良かった」
話している間に、少しずつ国境の山が大きく見えるようになってくる。
あの山の上半分は一年を通して雪に覆われているくらいに極寒の環境だから、今の私達は寒くもないのに万全になるように着こんでいるのよね。
ワイバーンは寒い場所でも気にならないみたいだけど、私達は凍えてしまうから。
「あの雲、向こうに避けた方が良いかしら?」
「雲の上を飛ぼう。寒くなるが、雨に濡れるよりは良いだろう」
「分かったわ」
高い空はまだ経験が無いけれど、国境の山脈のような寒さなのだと思うから、マジックバッグから服を出して着込んでいく。
強い風だけなら私の防御魔法で魔力を使わずに防げるけれど、寒さまでは防げないのよね。
でも、上質なものを選んでいるお陰で、雲より高くなってもあまり寒さは感じなかった。
「暖かいのにまつ毛が凍りそうだわ……。
クラウスは大丈夫?」
「ああ。シエルの防御魔法は本当にすごいよ」
吐き出す息がすぐに氷になって、キラキラと輝くほどの寒さなのに、防御魔法があるお陰で何とも思わないのよね。
けれど、山の中腹を覆う雲に入る覚悟が決められない。
「あの雲の中、入っても大丈夫かしら?」
「この服なら大丈夫。でも、離れたら見失うことになるから、手を繋いでおこう」
「分かったわ」
そう言葉を返してからワイバーンを雲に向けて飛ばすと、一瞬で周りが白く染まった。
広い帝都からようやく出る事が出来た私達は、獲物を探して空を回っているワイバーンを見つけた。
全部で五匹。普通なら二人では戦わない相手だけれど、私達には関係ないのよね。
「お、こっちに来るぞ。
魔法の準備を」
「もう出来ているわ」
「分かった」
魔法が届く距離になるまで待ってから、詠唱を済ませておいた闇魔法を飛ばす。
すると、本当に思い通りにワイバーンを動かせるようになった。
「おぉ……」
ゆっくりと私達の前に降りて来るワイバーンを見て、クラウスが感心したような声を漏らす。
今使った魔法は、相手を洗脳するための魔法。難易度が高くて容易に使えるものではないみたいだけど、無事に成功したらしい。
「成功したみたい」
「そのようだな。本当にペットだと認識させるとは、恐ろしい……。
悪用するなよ?」
「しないわよ。
でも……こんなことが出来るなら、急いで対策しないと大変なことになるわね」
同じような魔法をアイリス様も使えていると思うと、本当に恐ろしいのよね。
ワイバーンに向かって手を右に向けると、その通りの向きに首が向けられる。
逆も同じで、犬にするように手を差し出してみると口を近付けてくれる。
人を獲物としか思っていないワイバーンとは思えない仕草で、少し可愛く見えてしまった。
でも、あの牙で噛まれたら痛そうだわ……。
「ここまで洗脳できるなら、人でも同じだろうな。
ちょっと試してくれ」
「こんな場所で大丈夫なの?」
「例えば、シエルが手を挙げたら俺が座る……という感じにしていれば、危険は無い。
解き方も教えた通りだから、大丈夫だろう」
「分かったわ」
言われた通りに、私が手を叩くと左手を挙げるという洗脳をかけてみる。
それからすぐに手を叩くと、すぐに彼は左手を空に掲げた。
でも、その行動をおかしいとは思っていないみたい。
「急に手を叩かないでくれ。手を挙げてしまったじゃないか。
戦闘中だったらどうする」
「本当に洗脳出来るのね……」
「今のは無意識だった。まさか……」
このままだと大変な事になると思ったから、クラウスにかけた魔法だけを解く私。
すると違和感に気付いたみたいで、彼は唖然としている様子を見せた。
術中に嵌っていることに気付かないなら、今まで私がアイリス様に魔法をかけられていても気付けないことになる。
今更かもしれないけれど、大慌てで私にも解呪の魔法をかけた。
「ここまで酷いとは思わなかったよ。
これなら、人間を操り人形に出来てしまう。」
「もしかしたら、お兄様も……。
この魔法がかけられているか調べる方法は無いのかしら?」
「魔力の気配を感じることくらいしか出来ないと思う。
俺は適性が無いから分からないが、シエルなら気付けるはずだ」
そんな言葉を交わしながら、従順になっているワイバーンの背中に乗る私達。
私には洗脳の魔法はかけられていなかったみたいだけど、お兄様は確実に幻惑の魔法をかけられているから、すぐにワイバーンを羽ばたかせた。
今回は、私もクラウスも同じワイバーンに乗っているから、叫ばなくても会話が出来る。
いつも叫びすぎて喉を嗄らしていたから、今日はすごく気持ちが楽なのよね。
お兄様のことは心配だけれど、どんなに急いでもワイバーンが飛べる速さまでしか急げないのだから。
「気付けないかもしれないから、防御魔法は切らさないようにするわ」
「助かる。
今更かもしれないが、妹と会うのは大丈夫なのか?」
「ええ。反省しているとお兄様が言っていたから、心配していないわ」
妹のリリアはことあるごとに私の物を欲しがっていたけれど、私が家から出てすぐに態度を改めたらしいのよね。
リリアは私のことを心配していたそうだから、姉妹だと思ってくれているのだと思う。
それに取られていたと言っても、私がおねだりに負けて渡していたから、私の責任もあるはずなのよね。
だから責めるつもりはないし、反省してくれていればそれで満足。
血の繋がった妹だもの。憎むより仲良くしていた方が幸せになれると思うから。
「それなら良かった」
話している間に、少しずつ国境の山が大きく見えるようになってくる。
あの山の上半分は一年を通して雪に覆われているくらいに極寒の環境だから、今の私達は寒くもないのに万全になるように着こんでいるのよね。
ワイバーンは寒い場所でも気にならないみたいだけど、私達は凍えてしまうから。
「あの雲、向こうに避けた方が良いかしら?」
「雲の上を飛ぼう。寒くなるが、雨に濡れるよりは良いだろう」
「分かったわ」
高い空はまだ経験が無いけれど、国境の山脈のような寒さなのだと思うから、マジックバッグから服を出して着込んでいく。
強い風だけなら私の防御魔法で魔力を使わずに防げるけれど、寒さまでは防げないのよね。
でも、上質なものを選んでいるお陰で、雲より高くなってもあまり寒さは感じなかった。
「暖かいのにまつ毛が凍りそうだわ……。
クラウスは大丈夫?」
「ああ。シエルの防御魔法は本当にすごいよ」
吐き出す息がすぐに氷になって、キラキラと輝くほどの寒さなのに、防御魔法があるお陰で何とも思わないのよね。
けれど、山の中腹を覆う雲に入る覚悟が決められない。
「あの雲の中、入っても大丈夫かしら?」
「この服なら大丈夫。でも、離れたら見失うことになるから、手を繋いでおこう」
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そう言葉を返してからワイバーンを雲に向けて飛ばすと、一瞬で周りが白く染まった。
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