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第2章
107. 畏れ多いので
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綺麗に舗装された道の上を進んでいく馬車に揺られること十数分。
御者台の方から声がかけられた。
「到着致しました」
「分かった」
この馬車に乗っているのは、私とクラウスにエイブラム家の侍女が二人。
今回のパーティーは冒険者として参加するのだけど、メイクや髪型が崩れてもすぐに直せるようにしているのは、これからの計画に必要だからなのよね。
そもそもSランク冒険者は貴族と同じような扱いだから、パーティーに参加する時には貴族に相応しい装いが求められているのだけど、今日はもっと大事なことがある。
「足元、お気をつけて下さいませ」
「ああ、ありがとう」
踏み台を置いてくれた護衛にお礼を言ってから、ゆっくりと馬車から降りるクラウス。
私も彼に続けて足を踏み出そうとすると、先に降りたクラウスから手を差し出された。
「ありがとう」
その手をとってから、私も慎重に降りていく。
普段の動きやすい服装と違って、今日は慣れないドレスだから、うっかり裾を踏まないように気を付けないといけないのよね。
踏み台があっても馬車からの段差は大きいから、裾を床に擦ってしまわないかも心配になってしまう。
「大丈夫か?」
「裾を擦らないか心配だったの」
「ああ、そういうことか。
気付けなくて申し訳ない」
「気にしないで。手を貸してくれただけで十分よ」
無事に馬車から降りて顔を上げると、皇宮の侍従達がこちらに向かってきている様子が目に入る。
Sランク冒険者は高位の貴族と同じ待遇になるとは聞いていたけれど、この人数はどう考えても多すぎると思うのよね……。
「出迎えにしては多い気がするな……。
前回参加した時の倍の人数だ」
「倍ってことは……私が加わった分増えているということかしら?」
「それしか考えられない」
すぐ目の前で一列に並んでいる侍従達に聞こえない声で呟くと、クラウスが小さく頷きながら答える。
それから間もなく、一列に並んだ侍従達の中から執事に見える方が一歩前に出てきて、こう口にした。
「本日はお忙しい中お越し頂き、ありがとうございます。
今回も控室の方をご用意致しましたので、早速ですがご案内致します」
「お願いします」
「お願いしますわ」
ゆっくり歩く執事さんの後を追って皇宮に足を踏み入れると、煌びやかな調度品の数々が目に入る。
ここに来るのは今日で三回目だけれど、この眩しさは慣れる気がしないわ。
これが王国の貴族なら、黄金だらけの品の無い様相を生み出すところなのだけど、帝国は煌びやかながらも落ち着きを感じられる雰囲気で、居心地は悪くない。
少し眩しすぎるだけなのよね。
「こちらの二部屋をご用意致しましたので、ご自由にお使いください」
「「ありがとうございます」」
「とんでもないことでございます。
では、私は次の方の案内がありますので、これにて失礼させて頂きます。
何かございましたら、侍女の方へお願いします」
恭しく頭を下げた執事さんを見送ってから、案内された部屋に入る私達。
中は広々としていて、クラウスと二人で生活しても持て余しそうだ。
廊下と違って部屋の中の調度品は控えめ……なのだけど、一目見るだけで高級品だと分かるものしか置かれていなかった。
流石は帝国といったところかしら?
壊しても弁償案なんて出来ないと思うから、あれには近付かないようにしなくちゃ。
「その置物が怖いのか?」
「うっかり落としても弁償なんて出来ないもの」
「それくらいは払えるから、心配しなくて良い。
隣の部屋も見てみよう」
「ええ。この扉から行けるのかしら?」
「左様でございます。
喧嘩をされた時やお色直しなどにご活用頂いている部屋ですので、あまり期待はなさらないでください」
侍女の申し訳なさそうな言葉に遅れて、隣の部屋につながる扉を開ける私。
少しずつ視界に入ってくるのは、うっかりしても絶対に落とせない余計な調度品が一切置かれていない部屋だった。
低めのテーブルとソファだけが置かれている簡素に見える部屋でも、クッションは一級品だから手は一切抜かれていない。
「こっちの方が落ち着きそうね」
「確かに、向こうは広すぎて落ち着かないな。
すまないが、こちらで過ごしても問題無いだろうか?」
「構いません。どうぞご自由にお過ごしくださいませ。
私は隣のお部屋におりますので、何かございましたらお声がけください」
「ありがとう」
侍女が部屋を後にしてから、ソファに腰を下ろす私。
それからパーティーが始まるまでの間、のんびりとお話しをしながら過ごした。
◇
控室に案内されてから数十分。
パーティーが始まる時間が迫ってきたから、私達は会場へと向かうことになった。
今回のパーティーは参加する人がかなり多いそうで、地位が高い人に退屈させないようにと控室が用意されていたらしい。
私とクラウスが入るのは、最後から二番目。
地位が高い人ほど後から会場入りするのが普通なのだけど、どうして私達が最後の方なのかしら?
私は一応貴族でもあるけれど、貧乏だった伯爵家の令嬢。クラウスは元王族だけれど、今は王家を出ているから大した地位は持っていないはずなのよね。
いくら冒険者が重要とされていても、高位貴族を差し置いて最後の方に入るなんて……畏れ多くて気が引けてしまうわ。
御者台の方から声がかけられた。
「到着致しました」
「分かった」
この馬車に乗っているのは、私とクラウスにエイブラム家の侍女が二人。
今回のパーティーは冒険者として参加するのだけど、メイクや髪型が崩れてもすぐに直せるようにしているのは、これからの計画に必要だからなのよね。
そもそもSランク冒険者は貴族と同じような扱いだから、パーティーに参加する時には貴族に相応しい装いが求められているのだけど、今日はもっと大事なことがある。
「足元、お気をつけて下さいませ」
「ああ、ありがとう」
踏み台を置いてくれた護衛にお礼を言ってから、ゆっくりと馬車から降りるクラウス。
私も彼に続けて足を踏み出そうとすると、先に降りたクラウスから手を差し出された。
「ありがとう」
その手をとってから、私も慎重に降りていく。
普段の動きやすい服装と違って、今日は慣れないドレスだから、うっかり裾を踏まないように気を付けないといけないのよね。
踏み台があっても馬車からの段差は大きいから、裾を床に擦ってしまわないかも心配になってしまう。
「大丈夫か?」
「裾を擦らないか心配だったの」
「ああ、そういうことか。
気付けなくて申し訳ない」
「気にしないで。手を貸してくれただけで十分よ」
無事に馬車から降りて顔を上げると、皇宮の侍従達がこちらに向かってきている様子が目に入る。
Sランク冒険者は高位の貴族と同じ待遇になるとは聞いていたけれど、この人数はどう考えても多すぎると思うのよね……。
「出迎えにしては多い気がするな……。
前回参加した時の倍の人数だ」
「倍ってことは……私が加わった分増えているということかしら?」
「それしか考えられない」
すぐ目の前で一列に並んでいる侍従達に聞こえない声で呟くと、クラウスが小さく頷きながら答える。
それから間もなく、一列に並んだ侍従達の中から執事に見える方が一歩前に出てきて、こう口にした。
「本日はお忙しい中お越し頂き、ありがとうございます。
今回も控室の方をご用意致しましたので、早速ですがご案内致します」
「お願いします」
「お願いしますわ」
ゆっくり歩く執事さんの後を追って皇宮に足を踏み入れると、煌びやかな調度品の数々が目に入る。
ここに来るのは今日で三回目だけれど、この眩しさは慣れる気がしないわ。
これが王国の貴族なら、黄金だらけの品の無い様相を生み出すところなのだけど、帝国は煌びやかながらも落ち着きを感じられる雰囲気で、居心地は悪くない。
少し眩しすぎるだけなのよね。
「こちらの二部屋をご用意致しましたので、ご自由にお使いください」
「「ありがとうございます」」
「とんでもないことでございます。
では、私は次の方の案内がありますので、これにて失礼させて頂きます。
何かございましたら、侍女の方へお願いします」
恭しく頭を下げた執事さんを見送ってから、案内された部屋に入る私達。
中は広々としていて、クラウスと二人で生活しても持て余しそうだ。
廊下と違って部屋の中の調度品は控えめ……なのだけど、一目見るだけで高級品だと分かるものしか置かれていなかった。
流石は帝国といったところかしら?
壊しても弁償案なんて出来ないと思うから、あれには近付かないようにしなくちゃ。
「その置物が怖いのか?」
「うっかり落としても弁償なんて出来ないもの」
「それくらいは払えるから、心配しなくて良い。
隣の部屋も見てみよう」
「ええ。この扉から行けるのかしら?」
「左様でございます。
喧嘩をされた時やお色直しなどにご活用頂いている部屋ですので、あまり期待はなさらないでください」
侍女の申し訳なさそうな言葉に遅れて、隣の部屋につながる扉を開ける私。
少しずつ視界に入ってくるのは、うっかりしても絶対に落とせない余計な調度品が一切置かれていない部屋だった。
低めのテーブルとソファだけが置かれている簡素に見える部屋でも、クッションは一級品だから手は一切抜かれていない。
「こっちの方が落ち着きそうね」
「確かに、向こうは広すぎて落ち着かないな。
すまないが、こちらで過ごしても問題無いだろうか?」
「構いません。どうぞご自由にお過ごしくださいませ。
私は隣のお部屋におりますので、何かございましたらお声がけください」
「ありがとう」
侍女が部屋を後にしてから、ソファに腰を下ろす私。
それからパーティーが始まるまでの間、のんびりとお話しをしながら過ごした。
◇
控室に案内されてから数十分。
パーティーが始まる時間が迫ってきたから、私達は会場へと向かうことになった。
今回のパーティーは参加する人がかなり多いそうで、地位が高い人に退屈させないようにと控室が用意されていたらしい。
私とクラウスが入るのは、最後から二番目。
地位が高い人ほど後から会場入りするのが普通なのだけど、どうして私達が最後の方なのかしら?
私は一応貴族でもあるけれど、貧乏だった伯爵家の令嬢。クラウスは元王族だけれど、今は王家を出ているから大した地位は持っていないはずなのよね。
いくら冒険者が重要とされていても、高位貴族を差し置いて最後の方に入るなんて……畏れ多くて気が引けてしまうわ。
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