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第2章
108. 同じくらいのようです
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会場に足を踏み入れると、会場中の視線が集まっているのがすぐに分かった。
でも、私が感じ取ったのはそれだけではない。
「クラス・レイノルド様とシエル・グレーティア様のご入場です!」
誰かが声高にそんな宣言したかと思えば、今度は私達がワイバーンから帝都を救ったというお話が語られ始めてしまった。
どこかの誇張された伝記を聞いているみたいで、すごく恥ずかしい。
「あれ、止めさせられないかしら?」
「無理だと思う。持ち上げられた方が動きやすくなるから、気にしないようにしよう」
「頑張ってみるわ……」
こんなに通る声で語られれば嫌でも耳に入ってしまうのだけど、心を鬼にして聞かないようにする私。
それから、先に会場入りしていたらしい皇帝陛下に挨拶をするために、赤い毛氈の上をゆっくりと歩いていく。
「まさか、陛下より後になるなんて思わなかったわ……」
「俺も同じことを思ったよ。主催であっても位が高ければ後から入るはずだからね」
私達が帝国で一番地位が高くなったりはしていないけれど、こういう形で敬意を表されると少し戸惑ってしまう。
けれど、この沢山の視線の前で失態を犯すことなんて絶対に許されないから、堂々としなくちゃいけない。
視線を変えずにクラウスの様子を見てみると、彼は王子様としか思えないような雰囲気を出していた。
……彼は正真正銘の王子様なのだけど。どう見ても冒険者には見えないのよね。
そんなことを思いながら足を進めると、広い会場の中央近くで帝国貴族達と談笑している皇帝陛下の目の前に辿り着いた。
「陛下。この度はご招待を頂き、本当にありがとうございます」
先にクラウスがそう口にして、彼の言葉に続けて私も「ありがとうございます」と口にしながらカーテシーをする。
「こちらこそ、招待に応じてくれたこと感謝している。
今日の主役はクラウス殿とシエル嬢だ。存分に楽しんで欲しい」
陛下の言葉が終わると、今度は大臣が一歩前に出てきてフレイムワイバーンを倒したことのお礼を言われた。
それが終わったかと思えば、今度は他の貴族達が私達の周りを囲っていく。
ほとんどの貴族は当たり障りの無い挨拶やフレイムワイバーンを倒したことのお礼を口にしたら去っていくのだけど、中には繋がりを狙って機嫌を取ろうとしてくる人もいた。
でも、私が笑顔を消せば察して引き下がっていくから、王国の貴族よりも印象は悪くないのよね。
一通り挨拶の波が過ぎ去ると、タイミングよく音楽が流れ始める。
「私達も踊りましょう?」
「ああ、もちろん。
真ん中に陣取ってみる?」
「それは遠慮……」
周りの方々がパートナーとダンスの準備をしているから、私もクラウスを誘って空いている場所を確保しに向かう。
出来れば目立たない場所の方が良いのだけど……。
「ぜひ主役は真ん中で!」
「シエル様達が端なら、私達は壁の中に行かないといけませんわ」
「……分かりましたわ」
……陛下やフィーリア様から会場の真ん中に行くように促されてしまったから、大人しく促された場所に向かう私。
クラウスは気にしていないみたいだけど、真ん中は注目されるからミス一つ許されないのよね。
王太子殿下の婚約者だった頃も失敗は許されなかったけれど、見ている人の目が肥えていなかったから、あの頃は誤魔化せていた。
けれど今日は違う。何もかもレベルが高い帝国だから、誤魔化しても見破られてしまう。
そう思うと、緊張せずにはいられないのよね。
「緊張しなくても大丈夫だ。
もしシエルがミスをしても、俺がしっかりリードする」
「ありがとう。
私も……クラウスがミスをしても助けられるように頑張るわ」
「ありがとう」
もう曲は流れ始めているから、クラウスと息が合うようにステップを踏んでいく。
彼と一緒に練習したのは片手で数えられるほどだけ。それでも、最初からお互いの動きがズレたりすることは無かった。
「やっぱりシエルは上手だね。かなり動きやすいよ」
「クラウスが上手なお陰だわ」
どれだけ技量のある人でも相手の技量が足りないと綺麗に見えないとはよく言うけれど、こんな風にお互いのペースが合っているのは私達の技量が同じくらいだからだと思う。
「……息が合えばダンスってこんなに楽しいのね」
「そうみたいだな。シエルとなら何時間でも踊っていられるよ」
「私も同じ気持ちよ」
今まではダンスなんて義務的にすることで、楽しくなんて無かった。
それどころか、王子には何度も足を踏まれて痛い思いをしていたのよね。
でも、クラウスとなら一曲踊り切っても痛いことも辛いことも無いから、王国に居た時のダンスが嘘のように楽しい時間に感じられている。
「次は少し難しい曲みたいだな。まだ行けそう?」
「ええ、もちろん」
次の曲は王国の貴族だと半分くらいの人しか踊れないという難関曲。
けれど、私達の周りでダンスをしている人が減ることは無かった。
この曲でも私達はお話しをする余裕があって、お互いに笑顔でステップを踏めている。
ダンス中に険しい表情をすることはマナー違反だから、どんなに苦しくても笑顔以外を見せることは無いのだけど、クラウスが素の表情を見せていることは一目で分かる。
もう何ヶ月も一緒に過ごしているのだから、クラウスも私の笑顔が仮面では無いと分かっていると思う。
「シエル、もしかしなくてもダンス上手?」
「王国に居る頃に散々練習したお陰だわ。
クラウスもとても上手よ。女性が苦手と聞いていたから心配していたけれど……」
「兄が女性パートも踊れたから、練習相手には困らなかったんだ。
お陰で俺も女性パートも踊れるようになった。使うことはもう無いだろうけどね」
「その方が絶対に良いわ」
そんなお話しをしている間に二曲目が終わり、三曲目が流れ始める。
この曲はすごく有名なのだけど、私は少し頬を引きつらせてしまった。
「最難関曲……私に踊れるかしら?」
「俺も自信は無いが……大丈夫だろう」
曲の流れはじめでダンスを止める人も見えるけれど、まだ半分以上は残っている。
だから、私達も残ることに決めた。
流石に最難関曲になると言葉を交わす余裕なんて無くて、ミスしないように集中してステップを踏む。
そうして一度もミスをしないで踊り終えると、周囲から拍手を送られることになった。
どうやら周りの方々は途中で諦めたみたいで、最後まで残っていたのは私達と皇帝陛下夫妻、それからエイブラム侯爵夫妻だけだった。
「流石に疲れるな。少し休憩しよう」
「ええ。フィーリア様が呼んでいるから、行きましょう」
お礼にと周りに頭を下げてから、手招きしていたフィーリア様のところに向かう私達。
けれども、そんな時。
絶対に関わりたくない人物が近付いてきている様子が視界に映ってしまった。
その人物に声をかけられたくないから、急いでフィーリア様達の輪に加わる私。
「主役は真ん中に来てくださいませ」
「ありがとうございますわ」
フィーリア様は私の気持ちを読んでくれたみたいで、輪の中心に私を引き込んでくれた。
ここには十人ほどのご令嬢達が集まっていて、外側を囲うようにして令息達が談笑している。
クラウスは令嬢達に囲まれたくないみたいで、令息達の輪に加わることを選んだみたい。
まるで街と城壁。けれど、私の方に向かってきていた人物――カグレシアン公爵は巨体を駆使して壁を突き抜け、真っすぐ私の目の前に来てしまった。
「可愛らしいお嬢さん。一緒にダンスを踊っていただけませんか?」
「今は疲れていますの。お断りしますわ」
「そういうことなら、疲れが引くまで待ちましょう。
ああ、それにしても貴女は本当に可愛らしいですね。ワシの妻にしたいくらいだ」
……さっきまではすごく楽しかったのに、今は最悪な気分だわ。
でも、私が感じ取ったのはそれだけではない。
「クラス・レイノルド様とシエル・グレーティア様のご入場です!」
誰かが声高にそんな宣言したかと思えば、今度は私達がワイバーンから帝都を救ったというお話が語られ始めてしまった。
どこかの誇張された伝記を聞いているみたいで、すごく恥ずかしい。
「あれ、止めさせられないかしら?」
「無理だと思う。持ち上げられた方が動きやすくなるから、気にしないようにしよう」
「頑張ってみるわ……」
こんなに通る声で語られれば嫌でも耳に入ってしまうのだけど、心を鬼にして聞かないようにする私。
それから、先に会場入りしていたらしい皇帝陛下に挨拶をするために、赤い毛氈の上をゆっくりと歩いていく。
「まさか、陛下より後になるなんて思わなかったわ……」
「俺も同じことを思ったよ。主催であっても位が高ければ後から入るはずだからね」
私達が帝国で一番地位が高くなったりはしていないけれど、こういう形で敬意を表されると少し戸惑ってしまう。
けれど、この沢山の視線の前で失態を犯すことなんて絶対に許されないから、堂々としなくちゃいけない。
視線を変えずにクラウスの様子を見てみると、彼は王子様としか思えないような雰囲気を出していた。
……彼は正真正銘の王子様なのだけど。どう見ても冒険者には見えないのよね。
そんなことを思いながら足を進めると、広い会場の中央近くで帝国貴族達と談笑している皇帝陛下の目の前に辿り着いた。
「陛下。この度はご招待を頂き、本当にありがとうございます」
先にクラウスがそう口にして、彼の言葉に続けて私も「ありがとうございます」と口にしながらカーテシーをする。
「こちらこそ、招待に応じてくれたこと感謝している。
今日の主役はクラウス殿とシエル嬢だ。存分に楽しんで欲しい」
陛下の言葉が終わると、今度は大臣が一歩前に出てきてフレイムワイバーンを倒したことのお礼を言われた。
それが終わったかと思えば、今度は他の貴族達が私達の周りを囲っていく。
ほとんどの貴族は当たり障りの無い挨拶やフレイムワイバーンを倒したことのお礼を口にしたら去っていくのだけど、中には繋がりを狙って機嫌を取ろうとしてくる人もいた。
でも、私が笑顔を消せば察して引き下がっていくから、王国の貴族よりも印象は悪くないのよね。
一通り挨拶の波が過ぎ去ると、タイミングよく音楽が流れ始める。
「私達も踊りましょう?」
「ああ、もちろん。
真ん中に陣取ってみる?」
「それは遠慮……」
周りの方々がパートナーとダンスの準備をしているから、私もクラウスを誘って空いている場所を確保しに向かう。
出来れば目立たない場所の方が良いのだけど……。
「ぜひ主役は真ん中で!」
「シエル様達が端なら、私達は壁の中に行かないといけませんわ」
「……分かりましたわ」
……陛下やフィーリア様から会場の真ん中に行くように促されてしまったから、大人しく促された場所に向かう私。
クラウスは気にしていないみたいだけど、真ん中は注目されるからミス一つ許されないのよね。
王太子殿下の婚約者だった頃も失敗は許されなかったけれど、見ている人の目が肥えていなかったから、あの頃は誤魔化せていた。
けれど今日は違う。何もかもレベルが高い帝国だから、誤魔化しても見破られてしまう。
そう思うと、緊張せずにはいられないのよね。
「緊張しなくても大丈夫だ。
もしシエルがミスをしても、俺がしっかりリードする」
「ありがとう。
私も……クラウスがミスをしても助けられるように頑張るわ」
「ありがとう」
もう曲は流れ始めているから、クラウスと息が合うようにステップを踏んでいく。
彼と一緒に練習したのは片手で数えられるほどだけ。それでも、最初からお互いの動きがズレたりすることは無かった。
「やっぱりシエルは上手だね。かなり動きやすいよ」
「クラウスが上手なお陰だわ」
どれだけ技量のある人でも相手の技量が足りないと綺麗に見えないとはよく言うけれど、こんな風にお互いのペースが合っているのは私達の技量が同じくらいだからだと思う。
「……息が合えばダンスってこんなに楽しいのね」
「そうみたいだな。シエルとなら何時間でも踊っていられるよ」
「私も同じ気持ちよ」
今まではダンスなんて義務的にすることで、楽しくなんて無かった。
それどころか、王子には何度も足を踏まれて痛い思いをしていたのよね。
でも、クラウスとなら一曲踊り切っても痛いことも辛いことも無いから、王国に居た時のダンスが嘘のように楽しい時間に感じられている。
「次は少し難しい曲みたいだな。まだ行けそう?」
「ええ、もちろん」
次の曲は王国の貴族だと半分くらいの人しか踊れないという難関曲。
けれど、私達の周りでダンスをしている人が減ることは無かった。
この曲でも私達はお話しをする余裕があって、お互いに笑顔でステップを踏めている。
ダンス中に険しい表情をすることはマナー違反だから、どんなに苦しくても笑顔以外を見せることは無いのだけど、クラウスが素の表情を見せていることは一目で分かる。
もう何ヶ月も一緒に過ごしているのだから、クラウスも私の笑顔が仮面では無いと分かっていると思う。
「シエル、もしかしなくてもダンス上手?」
「王国に居る頃に散々練習したお陰だわ。
クラウスもとても上手よ。女性が苦手と聞いていたから心配していたけれど……」
「兄が女性パートも踊れたから、練習相手には困らなかったんだ。
お陰で俺も女性パートも踊れるようになった。使うことはもう無いだろうけどね」
「その方が絶対に良いわ」
そんなお話しをしている間に二曲目が終わり、三曲目が流れ始める。
この曲はすごく有名なのだけど、私は少し頬を引きつらせてしまった。
「最難関曲……私に踊れるかしら?」
「俺も自信は無いが……大丈夫だろう」
曲の流れはじめでダンスを止める人も見えるけれど、まだ半分以上は残っている。
だから、私達も残ることに決めた。
流石に最難関曲になると言葉を交わす余裕なんて無くて、ミスしないように集中してステップを踏む。
そうして一度もミスをしないで踊り終えると、周囲から拍手を送られることになった。
どうやら周りの方々は途中で諦めたみたいで、最後まで残っていたのは私達と皇帝陛下夫妻、それからエイブラム侯爵夫妻だけだった。
「流石に疲れるな。少し休憩しよう」
「ええ。フィーリア様が呼んでいるから、行きましょう」
お礼にと周りに頭を下げてから、手招きしていたフィーリア様のところに向かう私達。
けれども、そんな時。
絶対に関わりたくない人物が近付いてきている様子が視界に映ってしまった。
その人物に声をかけられたくないから、急いでフィーリア様達の輪に加わる私。
「主役は真ん中に来てくださいませ」
「ありがとうございますわ」
フィーリア様は私の気持ちを読んでくれたみたいで、輪の中心に私を引き込んでくれた。
ここには十人ほどのご令嬢達が集まっていて、外側を囲うようにして令息達が談笑している。
クラウスは令嬢達に囲まれたくないみたいで、令息達の輪に加わることを選んだみたい。
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