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6. 自分勝手な行動で①
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あの後は何事もなく、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
今回の一件で友人も増えたから、今日は参加して良かったと思う。
「次は私がお茶会を開きますから、是非参加して頂きたいですわ」
「ありがとうございます。楽しみにしておりますわ」
馬車寄せに向かう途中でそんなお誘いも頂けて、今朝までの不安が嘘のようだ。
でも、この楽しい時間ももう終わり。
迎えの馬車に乗ると周囲の談笑が小さくなり、門を出る頃には車輪の音だけが響く。
「お嬢様、パーティーお疲れ様でした。
……その腕、大丈夫ですか?」
「ありがとう。大したことないから大丈夫よ」
リズは私の腕が腫れていることに気付いていたようで、言いにくそうに問いかけてきた。
私は大丈夫だと思ってもらえるように、腕を軽く振って見せる。
「お怪我は心配ですが、元気そうで良かったです。
良い事でもありましたか?」
「ええ。その人を投げ飛ばしたお陰で、良い意味で注目されたみたいなの。新しい友人も出来たわ」
「そうだったのですね。そのお話、もっと詳しく聞きたいです」
身を乗り出すようにして訊いてくるリズ。
あまり面白い内容ではないと思うけれど、私は家に着くまでパーティーでの出来事をお話した。
「――流石はクラリスお嬢様ですね!
大変な状況でも良い事を引き寄せるなんて、感動で涙が出そうです」
「私も嬉し涙を堪えるのに必死だったわ」
私が目を覆う仕草をすると、それが面白かったのかリズは口を押えて笑いを堪える。
肩が震えているから全く隠せていないが、私もつられて頬が緩んだ。
そうしていると馬車は家の庭園に入り、玄関前に止まる。
リズの手を借りて馬車から降りで玄関に入ると、何か物足りない気がした。
「「お帰りなさいませ、お嬢様」」
「ただいま。荷物、お願いしてもいいかしら?」
「畏まりました」
使用人達の出迎えは普段と変わらないけれど、ここにあったはずの花瓶が無くなっている。
物足りないと思ったのは、これが原因らしい。
「ここにあった花瓶はどこに行ったのかしら?」
「……申し上げにくいのですが、エリノアお嬢様が癇癪を起し、割られてしまいました」
不思議に思って問いかけると、執事からそんな言葉が返された。
今日のパーティーに参加できなかったことが悔しかったのかもしれない。それでも物に当たるのは良くないし、このことが父様かお母様の耳に入れば、厳しいお説教が待っていると思う。
それに、割れた花瓶の後始末は怪我をしやすいから、使用人達のことが心配になる。
「それは大変だったわね。怪我はしていないかしら?」
「我々もエリノアお嬢様も無事でございます」
「良かったわ。引き留めてしまってごめんなさい」
誰も怪我をしていないと聞いて安心し、私は使用人達に仕事に戻るように促す。
それからは普段通り私室に戻ったのだけど、隣のエリノアの部屋から言い争いが聞こえてきた。
「大丈夫かしら?」
「クラリスお嬢様にお怒りのようですね」
「そうみたいね。自業自得なのに……」
エリノアはパーティーに参加できなかった不満を侍女にぶつけている様子。
彼女は不満がある度にこうしているから、侍女の負担は計り知れない。
とはいえ、私が首を突っ込んでも癇癪が酷くなるだけ。今よりも面倒になることは間違いないから、静観することに決めた。
「――そんなに不満なら、クラリスお嬢様に直接おっしゃられてください!
もうお戻りになられているはずです」
誰かが部屋を飛び出す気配がした後、もう一人も部屋を出た様子。
少しすると、私の部屋の扉がノックされた。
関わりたくなかったのに……。
「お姉さま、開けてください」
部屋を飛び出したのはエリノアだったようで、扉の向こうからそんな声が聞こえた。
彼女が侍女の言葉を素直に聞き入れることは珍しいから、困惑しながら扉を開ける。
すると、目を赤くしたエリノアの姿が目に入った。
「何の用かしら?」
「お姉さまのせいで、また侍女に逃げられましたわ……!」
「……どういうこと?」
……部屋を飛び出したのは侍女だったようで、エリノアは全て私のせいだと思っているらしい。
そう理解したから、怒りを通り越して呆れてしまった。
今回の一件で友人も増えたから、今日は参加して良かったと思う。
「次は私がお茶会を開きますから、是非参加して頂きたいですわ」
「ありがとうございます。楽しみにしておりますわ」
馬車寄せに向かう途中でそんなお誘いも頂けて、今朝までの不安が嘘のようだ。
でも、この楽しい時間ももう終わり。
迎えの馬車に乗ると周囲の談笑が小さくなり、門を出る頃には車輪の音だけが響く。
「お嬢様、パーティーお疲れ様でした。
……その腕、大丈夫ですか?」
「ありがとう。大したことないから大丈夫よ」
リズは私の腕が腫れていることに気付いていたようで、言いにくそうに問いかけてきた。
私は大丈夫だと思ってもらえるように、腕を軽く振って見せる。
「お怪我は心配ですが、元気そうで良かったです。
良い事でもありましたか?」
「ええ。その人を投げ飛ばしたお陰で、良い意味で注目されたみたいなの。新しい友人も出来たわ」
「そうだったのですね。そのお話、もっと詳しく聞きたいです」
身を乗り出すようにして訊いてくるリズ。
あまり面白い内容ではないと思うけれど、私は家に着くまでパーティーでの出来事をお話した。
「――流石はクラリスお嬢様ですね!
大変な状況でも良い事を引き寄せるなんて、感動で涙が出そうです」
「私も嬉し涙を堪えるのに必死だったわ」
私が目を覆う仕草をすると、それが面白かったのかリズは口を押えて笑いを堪える。
肩が震えているから全く隠せていないが、私もつられて頬が緩んだ。
そうしていると馬車は家の庭園に入り、玄関前に止まる。
リズの手を借りて馬車から降りで玄関に入ると、何か物足りない気がした。
「「お帰りなさいませ、お嬢様」」
「ただいま。荷物、お願いしてもいいかしら?」
「畏まりました」
使用人達の出迎えは普段と変わらないけれど、ここにあったはずの花瓶が無くなっている。
物足りないと思ったのは、これが原因らしい。
「ここにあった花瓶はどこに行ったのかしら?」
「……申し上げにくいのですが、エリノアお嬢様が癇癪を起し、割られてしまいました」
不思議に思って問いかけると、執事からそんな言葉が返された。
今日のパーティーに参加できなかったことが悔しかったのかもしれない。それでも物に当たるのは良くないし、このことが父様かお母様の耳に入れば、厳しいお説教が待っていると思う。
それに、割れた花瓶の後始末は怪我をしやすいから、使用人達のことが心配になる。
「それは大変だったわね。怪我はしていないかしら?」
「我々もエリノアお嬢様も無事でございます」
「良かったわ。引き留めてしまってごめんなさい」
誰も怪我をしていないと聞いて安心し、私は使用人達に仕事に戻るように促す。
それからは普段通り私室に戻ったのだけど、隣のエリノアの部屋から言い争いが聞こえてきた。
「大丈夫かしら?」
「クラリスお嬢様にお怒りのようですね」
「そうみたいね。自業自得なのに……」
エリノアはパーティーに参加できなかった不満を侍女にぶつけている様子。
彼女は不満がある度にこうしているから、侍女の負担は計り知れない。
とはいえ、私が首を突っ込んでも癇癪が酷くなるだけ。今よりも面倒になることは間違いないから、静観することに決めた。
「――そんなに不満なら、クラリスお嬢様に直接おっしゃられてください!
もうお戻りになられているはずです」
誰かが部屋を飛び出す気配がした後、もう一人も部屋を出た様子。
少しすると、私の部屋の扉がノックされた。
関わりたくなかったのに……。
「お姉さま、開けてください」
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すると、目を赤くしたエリノアの姿が目に入った。
「何の用かしら?」
「お姉さまのせいで、また侍女に逃げられましたわ……!」
「……どういうこと?」
……部屋を飛び出したのは侍女だったようで、エリノアは全て私のせいだと思っているらしい。
そう理解したから、怒りを通り越して呆れてしまった。
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