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本編
13. 善にも悪にも
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午後は普段通りに講義を受けたけれど、内容は全く頭に入ってこなかった。
ケヴィン様よりも心を許していたアリスに拒絶されたことがショックすぎて、何をしても手につかない。
違和感は感じているけれど、一度拒絶されてしまったという事実に変わりはない。
アリス以外の人に相談すればいいかもしれない。でも、それは出来ない。
家族は別だけれど、学院にいる人達は信用できないから。
何か弱みを見せれば、すぐに付け込もうとしてくる。
相談すれば代価を要求してくる。
一応は友人と言える人はいるのだけれど、こういう理由で信用なんて欠片もしていない。
「ソフィア様、今度はアリス様に嫌われたみたいね」
「見ましたわ。冷徹令嬢でもあんな表情を浮かべますのね」
「でも、今はあんなことがあったとは思えない無表情ですわね」
陰口も耳に入ってくるけれど、何も響かない。
セレスティア様が怪しいのは分かっていても私に何か出来る相手じゃない。
八方塞がりとはまさにこのことね。
ため息をぐっと堪えて、迎えの馬車との待ち合わせ場所に向かう。
でも、その途中で声をかけられてしまった。
「ソフィア嬢、話したいことがある。この後すぐに王宮に来て欲しい」
「分かりましたわ。また後ほど。
アリスに見つかると良くないことになりそうですので、これで……」
「ああ」
声の主は王太子殿下だった。
十中八九アリスの異変についてだと思うけれど、彼も突然変わってしまったら?
その時は私に未来は無いと思った方が良さそうね……。
覚悟を決めてから、私は御者にこう指示を出した。
「屋敷に戻る前に王宮に寄りたいのだけれど、いいかしら?」
「畏まりました。約束は取り付けてありますか?」
「ええ、もちろん」
頷くと、馬車が揺れ始めた。
それに遅れて、侍女からこんな問いかけをされた。
「それにしても、突然ですね? 何かありましたか?」
「今日のお昼なんだけど、アリスの様子が急におかしくなって、拒絶されてしまったの」
「拒絶、ですか?」
問い返してくる侍女。
不思議に思うのも仕方ないと思う。アリスと私の仲が悪くなることは今まで一度もなかったから。
喧嘩をすることはあったけれど、数日もすれば仲直りしていた。
拒絶することなんて一度も無かった。
「ええ、近寄らないでって言われてしまったわ。まるで私を怖がってるような……そんな感じかしら?」
「そんなことが……。何か恐怖心を煽るようなことでも刷り込まれたのでしょうか?」
「分からないわ。でも、誰かに操られてる気配も無かったのよね……」
法で禁じられてはいるけれど、残念なことに他人を操る魔法というものは存在している。
けれど、アリスにその魔法をかけられた気配は無かった。
「お嬢様はご存知ではないかもしれませんが、それ以外にも拒絶の原因になる魔法もあるのですよ」
「どんな魔法かしら?」
「口で説明するよりも試す方が早いと思うのですが……恐怖を感じさせる魔法をかけても良いでしょうか?」
侍女の提案に頷く私。
それから、普段から貼っている他人からの魔法に抵抗するための防御魔法を弱めた。
その瞬間だった。
手にしている鞄がおぞましい化け物に感じられたのは。
この鞄は私のことを丸呑みにしてきた化け物……。
このままだと私は……。
「いやっ……」
咄嗟に全力で防御魔法を使って、鞄を放り投げる私。
確かに拒絶したけれど、こんなものでアリスが私を拒絶するとは思えないわ……。
「私に出来るのはこれくらいですけど、もっと力のある方なら他にも出来ると思います。今お見せしたのは、偽の記憶を作り出して惑わす闇属性の魔法ですね」
「もしかして、貴女が子爵家を追い出されたのって……」
「ええ、この魔法が原因です。気味が悪いと思われても仕方ありませんから」
使い方によっては気味が悪い魔法かもしれない。
でも、使い方次第では他人の悩みを消せる奇跡みたいな魔法になるはずだわ。
「確かに怖かったけれど、楽しい記憶を作ることもできるのよね?」
「ええ、当然でございます」
「それって凄いことだと思うの。公言は出来ないけれど、その魔法は誇っていいと思うわ」
どの魔法にも言えることだけれど、使い方次第で善にも悪にもなる。
私が信用している侍女だから、道を踏み外すことはないはず……。
ケヴィン様よりも心を許していたアリスに拒絶されたことがショックすぎて、何をしても手につかない。
違和感は感じているけれど、一度拒絶されてしまったという事実に変わりはない。
アリス以外の人に相談すればいいかもしれない。でも、それは出来ない。
家族は別だけれど、学院にいる人達は信用できないから。
何か弱みを見せれば、すぐに付け込もうとしてくる。
相談すれば代価を要求してくる。
一応は友人と言える人はいるのだけれど、こういう理由で信用なんて欠片もしていない。
「ソフィア様、今度はアリス様に嫌われたみたいね」
「見ましたわ。冷徹令嬢でもあんな表情を浮かべますのね」
「でも、今はあんなことがあったとは思えない無表情ですわね」
陰口も耳に入ってくるけれど、何も響かない。
セレスティア様が怪しいのは分かっていても私に何か出来る相手じゃない。
八方塞がりとはまさにこのことね。
ため息をぐっと堪えて、迎えの馬車との待ち合わせ場所に向かう。
でも、その途中で声をかけられてしまった。
「ソフィア嬢、話したいことがある。この後すぐに王宮に来て欲しい」
「分かりましたわ。また後ほど。
アリスに見つかると良くないことになりそうですので、これで……」
「ああ」
声の主は王太子殿下だった。
十中八九アリスの異変についてだと思うけれど、彼も突然変わってしまったら?
その時は私に未来は無いと思った方が良さそうね……。
覚悟を決めてから、私は御者にこう指示を出した。
「屋敷に戻る前に王宮に寄りたいのだけれど、いいかしら?」
「畏まりました。約束は取り付けてありますか?」
「ええ、もちろん」
頷くと、馬車が揺れ始めた。
それに遅れて、侍女からこんな問いかけをされた。
「それにしても、突然ですね? 何かありましたか?」
「今日のお昼なんだけど、アリスの様子が急におかしくなって、拒絶されてしまったの」
「拒絶、ですか?」
問い返してくる侍女。
不思議に思うのも仕方ないと思う。アリスと私の仲が悪くなることは今まで一度もなかったから。
喧嘩をすることはあったけれど、数日もすれば仲直りしていた。
拒絶することなんて一度も無かった。
「ええ、近寄らないでって言われてしまったわ。まるで私を怖がってるような……そんな感じかしら?」
「そんなことが……。何か恐怖心を煽るようなことでも刷り込まれたのでしょうか?」
「分からないわ。でも、誰かに操られてる気配も無かったのよね……」
法で禁じられてはいるけれど、残念なことに他人を操る魔法というものは存在している。
けれど、アリスにその魔法をかけられた気配は無かった。
「お嬢様はご存知ではないかもしれませんが、それ以外にも拒絶の原因になる魔法もあるのですよ」
「どんな魔法かしら?」
「口で説明するよりも試す方が早いと思うのですが……恐怖を感じさせる魔法をかけても良いでしょうか?」
侍女の提案に頷く私。
それから、普段から貼っている他人からの魔法に抵抗するための防御魔法を弱めた。
その瞬間だった。
手にしている鞄がおぞましい化け物に感じられたのは。
この鞄は私のことを丸呑みにしてきた化け物……。
このままだと私は……。
「いやっ……」
咄嗟に全力で防御魔法を使って、鞄を放り投げる私。
確かに拒絶したけれど、こんなものでアリスが私を拒絶するとは思えないわ……。
「私に出来るのはこれくらいですけど、もっと力のある方なら他にも出来ると思います。今お見せしたのは、偽の記憶を作り出して惑わす闇属性の魔法ですね」
「もしかして、貴女が子爵家を追い出されたのって……」
「ええ、この魔法が原因です。気味が悪いと思われても仕方ありませんから」
使い方によっては気味が悪い魔法かもしれない。
でも、使い方次第では他人の悩みを消せる奇跡みたいな魔法になるはずだわ。
「確かに怖かったけれど、楽しい記憶を作ることもできるのよね?」
「ええ、当然でございます」
「それって凄いことだと思うの。公言は出来ないけれど、その魔法は誇っていいと思うわ」
どの魔法にも言えることだけれど、使い方次第で善にも悪にもなる。
私が信用している侍女だから、道を踏み外すことはないはず……。
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