21 / 39
本編
21. 一番の近道
しおりを挟む
「父上、お話があります。アリス、アルト、ソフィアと共に入ってもよろしいでしょうか?」
ここは国王陛下の執務室の前。
急な来訪だったために今回も侍従による案内はなく、護衛の騎士がついているだけになっている。
「ああ、もちろんだ。今鍵を開ける」
そんな声に続けて、ドアの向こう側に足音が近付いてくる。
それから扉が開けられると、陛下自ら執務室に招き入れてくださった。
「何も出せないが、とりあえずそこに掛けてくれ」
「「ありがとうございます」」
軽く頭を下げて、案内されたソファに腰掛ける私達。
この時点で、陛下は私の顔の傷に気がついた様子だった。
「早速だが、本題からお願いしたい。ソフィア嬢の怪我と関係があるのだろう?
無理強いはしないが、出来ればソフィア嬢……貴女から語って欲しい」
そう口にする陛下。
ちなみに、傷をそのままにしているのは、イレーネ様に切り付けられた証拠として用いるためだから、陛下に見られた今はもう治してしまっても問題はない。
でも、流石にこの状況で治癒魔法を使うなんて真似は無礼にも程がある。
「お話しできるのは私が感じたことだけですが、説明させていただきますわ。
まず、今回の襲撃は私を傷物にするためだと襲撃者のイレーネ・ライブラン様は語っていました。彼女の説明通りなら、セレスティア様に何かしらの洗脳……もしくは脅しを受けていると考えられます」
それから、襲われた時の状況や私がトラウマを植え付けられてアルト様を直視出来ない状況になってしまっていることなども説明した。
私が話している間、陛下は表情こそ変えていなかったけれど、視線は険しいものになっていくように感じられた。
「こちらの対応が遅いばかりに迷惑をかけてしまったな。すまなかった」
「いえ、今回の件は私の油断が招いてしまったものでもあります。陛下が謝罪される理由にはなりません」
頭を下げようとする陛下をなんとか止めようとする私。
けれど、陛下のお気持ちは変わらないみたいで、軽く頭を下げられてしまった。
私が陛下に頭を下げさせてしまったと知られたらどうなってしまうのか……想像したくないわ。
「この謝罪は国王としてではなく私個人の気持ちだ。だから無礼などと思うこともない」
「分かりましたわ……」
そこで私と陛下のやり取りは一旦途切れた。
けれども、この場の話し合いはここからが本題だった。
セレスティア様が禁術を用いている時点で、本来は身柄を拘束するべきではある。
けれども、バルケーヌ公爵家は経済を牛耳っているから下手に刺激できないというのが現状になっている。
今は陛下が中心となってバルケーヌ公爵様の仕事を減らして、反逆されても耐える準備をしているらしい。
だから今はセレスティア様にこれ以上手を出されないように対策するのが精一杯なのよね……。
「しかし、セレスティア嬢の目的が分からないな」
「ソフィア、恨まれるようなことをした覚えはある?」
「いいえ、そのようなことはありませんわ。セレスティア様との関わりは全くと言っていいほどありませんでしたので」
「となると、一方的に妬んでの行動と考えられるな」
そう口にする宰相様。
この場の全員がその結論に至ったみたいで、私を含めて頷いていた。
「そうなると、ソフィア嬢はしばらくの間学院に顔を出さない方が良さそうだな」
「ですが、それではソフィアの成績が大変なことになってしまいますわ」
陛下の言葉はごもっともだと思った。
けれども、長期間学院に行かない場合は留学などの理由を除いて成績に関わってしまう。
もしも成績が悪すぎると、学院を卒業出来ないという最悪の状況になてしまう。
アリスもそれを心配してくれたみたいで、陛下に意見を言ってくれた。
「となると、留学しかないが……ソフィア嬢の力を国外に出したくはないというのは分かってもらえるか?」
「そうですわね……。
では、陛下の政策として、魔法の研究のためにソフィアを引き抜くというのはどうでしょうか?」
「不可能ではない。だが、それには時間がかかってしまう。
そう考えると、セレスティア嬢を捕らえることが一番の近道ではあるが……騎士が洗脳されるリスクもある」
少しだけ希望の光が見えたけれど、その希望にも問題点がある。
これが八方塞がりというものなのね……。
私達がそろって頭を抱えて黙る中、アルト様が口を開いた。
「少し疑問なのですが、そもそもソフィア嬢はなぜトラウマに最初から耐えられたのでしょうか?」
確かに、私は直視さえしなければ耐えることが出来ていたし、今となっては直視しても悪寒が走るだけになっている。
アリスの時は顔を逸らしていても耐え難い様子だったのよね……。
「確かに、私でも耐えられなかったのに、不思議だわ」
「精霊の愛し子であることと何か関係があるのでは?」
「ソフィア嬢はセレスティア嬢の魔法に耐性があるということになるな。それなら学院に行っても問題ないだろう」
そう口にする陛下。
確かに問題は無いかもしれないけれど、学院に行くことへの抵抗感はまだ残っている。
だから……。
「まだ学院には行きたくないのです。アルト様に対するトラウマは耐えられましたが、学院内でいつ襲われるか分からない恐怖に耐える自信はありませんの……」
「そうか。では、その恐怖心を克服するまでは自由に過ごしてもらって構わない。
成績に響かないように此方で何か手を打とう」
私の言葉に、陛下はそう答えてくれた。
今まで積み重ねた努力が今回の件では崩れないと約束されて、少しだけ安心した。
ここは国王陛下の執務室の前。
急な来訪だったために今回も侍従による案内はなく、護衛の騎士がついているだけになっている。
「ああ、もちろんだ。今鍵を開ける」
そんな声に続けて、ドアの向こう側に足音が近付いてくる。
それから扉が開けられると、陛下自ら執務室に招き入れてくださった。
「何も出せないが、とりあえずそこに掛けてくれ」
「「ありがとうございます」」
軽く頭を下げて、案内されたソファに腰掛ける私達。
この時点で、陛下は私の顔の傷に気がついた様子だった。
「早速だが、本題からお願いしたい。ソフィア嬢の怪我と関係があるのだろう?
無理強いはしないが、出来ればソフィア嬢……貴女から語って欲しい」
そう口にする陛下。
ちなみに、傷をそのままにしているのは、イレーネ様に切り付けられた証拠として用いるためだから、陛下に見られた今はもう治してしまっても問題はない。
でも、流石にこの状況で治癒魔法を使うなんて真似は無礼にも程がある。
「お話しできるのは私が感じたことだけですが、説明させていただきますわ。
まず、今回の襲撃は私を傷物にするためだと襲撃者のイレーネ・ライブラン様は語っていました。彼女の説明通りなら、セレスティア様に何かしらの洗脳……もしくは脅しを受けていると考えられます」
それから、襲われた時の状況や私がトラウマを植え付けられてアルト様を直視出来ない状況になってしまっていることなども説明した。
私が話している間、陛下は表情こそ変えていなかったけれど、視線は険しいものになっていくように感じられた。
「こちらの対応が遅いばかりに迷惑をかけてしまったな。すまなかった」
「いえ、今回の件は私の油断が招いてしまったものでもあります。陛下が謝罪される理由にはなりません」
頭を下げようとする陛下をなんとか止めようとする私。
けれど、陛下のお気持ちは変わらないみたいで、軽く頭を下げられてしまった。
私が陛下に頭を下げさせてしまったと知られたらどうなってしまうのか……想像したくないわ。
「この謝罪は国王としてではなく私個人の気持ちだ。だから無礼などと思うこともない」
「分かりましたわ……」
そこで私と陛下のやり取りは一旦途切れた。
けれども、この場の話し合いはここからが本題だった。
セレスティア様が禁術を用いている時点で、本来は身柄を拘束するべきではある。
けれども、バルケーヌ公爵家は経済を牛耳っているから下手に刺激できないというのが現状になっている。
今は陛下が中心となってバルケーヌ公爵様の仕事を減らして、反逆されても耐える準備をしているらしい。
だから今はセレスティア様にこれ以上手を出されないように対策するのが精一杯なのよね……。
「しかし、セレスティア嬢の目的が分からないな」
「ソフィア、恨まれるようなことをした覚えはある?」
「いいえ、そのようなことはありませんわ。セレスティア様との関わりは全くと言っていいほどありませんでしたので」
「となると、一方的に妬んでの行動と考えられるな」
そう口にする宰相様。
この場の全員がその結論に至ったみたいで、私を含めて頷いていた。
「そうなると、ソフィア嬢はしばらくの間学院に顔を出さない方が良さそうだな」
「ですが、それではソフィアの成績が大変なことになってしまいますわ」
陛下の言葉はごもっともだと思った。
けれども、長期間学院に行かない場合は留学などの理由を除いて成績に関わってしまう。
もしも成績が悪すぎると、学院を卒業出来ないという最悪の状況になてしまう。
アリスもそれを心配してくれたみたいで、陛下に意見を言ってくれた。
「となると、留学しかないが……ソフィア嬢の力を国外に出したくはないというのは分かってもらえるか?」
「そうですわね……。
では、陛下の政策として、魔法の研究のためにソフィアを引き抜くというのはどうでしょうか?」
「不可能ではない。だが、それには時間がかかってしまう。
そう考えると、セレスティア嬢を捕らえることが一番の近道ではあるが……騎士が洗脳されるリスクもある」
少しだけ希望の光が見えたけれど、その希望にも問題点がある。
これが八方塞がりというものなのね……。
私達がそろって頭を抱えて黙る中、アルト様が口を開いた。
「少し疑問なのですが、そもそもソフィア嬢はなぜトラウマに最初から耐えられたのでしょうか?」
確かに、私は直視さえしなければ耐えることが出来ていたし、今となっては直視しても悪寒が走るだけになっている。
アリスの時は顔を逸らしていても耐え難い様子だったのよね……。
「確かに、私でも耐えられなかったのに、不思議だわ」
「精霊の愛し子であることと何か関係があるのでは?」
「ソフィア嬢はセレスティア嬢の魔法に耐性があるということになるな。それなら学院に行っても問題ないだろう」
そう口にする陛下。
確かに問題は無いかもしれないけれど、学院に行くことへの抵抗感はまだ残っている。
だから……。
「まだ学院には行きたくないのです。アルト様に対するトラウマは耐えられましたが、学院内でいつ襲われるか分からない恐怖に耐える自信はありませんの……」
「そうか。では、その恐怖心を克服するまでは自由に過ごしてもらって構わない。
成績に響かないように此方で何か手を打とう」
私の言葉に、陛下はそう答えてくれた。
今まで積み重ねた努力が今回の件では崩れないと約束されて、少しだけ安心した。
225
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』
鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」
王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。
感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、
彼女はただ――王宮を去った。
しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。
外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、
かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。
一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。
帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、
彼女は再び“判断する側”として歩み始める。
やがて明らかになるのは、
王国が失ったのは「婚約者」ではなく、
判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。
謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。
それでも――
選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。
これは、
捨てられた令嬢が声を荒げることなく、
世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
あなたの絶望のカウントダウン
nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。
王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。
しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。
ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。
「本当にいいのですね?」
クラウディアは暗い目で王太子に告げる。
「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
セラフィーヌの幸せ結婚 ~結婚したら池に入ることになりました~
れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。
しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。
ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。
ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。
セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。
それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。
*前半シリアス、後半コミカルっぽいです。
*感想欄で所々ネタバレしてしまいました。
感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m
*他サイトでも投稿予定です
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる