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二人の出会い
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2021年、日本は東京オリンピックの興行収入で外国からの借金を返し終わり、国家予算に空きができ、好景気となっている。そして、その余った予算である政策が打ち出された。それは《児童虐待及び育児放棄による児童の心身負傷の救済のための法律》というものだった。そして、それがニュースで発表され、世間で話題になった。この時代の社会では、幼児期に虐待等を受け、心の傷を負った子供達が大人となった時に自分自身にされた事を自分の子にしてしまうという事件が多発。そのことを改善するための法案。そのテストプレイの希望者が募集され始めていた。
俺、結城優羽20歳、独身、彼女無しの社会人2年目だ。ちなみに職業は作家。18歳で某文庫の大賞を受賞し、デビュー。今ではそこそこ売れてる作家の1人。そんな職業以外はどこにでもいそうな20歳。ちなみにアパートで一人暮らし。仕事場兼自宅だ。4月2日午後2時。いつもならひたすらパソコンに向かって次回の原稿を書いているはずの時間帯に何故か俺は長い黒髪をスラリと伸ばして首の後ろで結んだ少女と黒スーツにサングラスをかけた如何にも仕事ができそうな女性とテーブルを挟んで向かい合っていた。
「あの~それで、これはどういう状況何でしょう…?」
イマイチ状況の掴めない俺は恐る恐る聞いてみる。それもそのはずで原稿を書いている時にチャイムが鳴ったから出てみると「入らせてもらいます」の一言で押しかけてきたこの2人。俺にはさっぱり心当たりも面識も無いのだが。そして、最初の場面に戻るわけなのだが・・・・・・、
「そうですね。では、説明させていただきます。ですが、その前に2日ほど前にハガキが届きませんでしたか?そちらがあると説明が簡単で済むのですが・・・・・・」
と言われて、俺は、
「手紙ですか、ちょっと待ってください」
そう言って、ファンレターやら広告やらが適当に入れている木編みのボックスを取り出す。その中をゴソゴソ漁っていると、
「これですか?」
そう言って俺は少し怪しげな赤い封の手紙を女性に見せる。
「はい、それです。しかし、封が切られてないところを見ると中身は知らないんですね?」
そう少し見下すような呆れた様な目で俺を見る。あ、いや、そんな目で見ないでください・・・・・・。
「はい・・・・・・すいません・・・・・・」
「いえ、見ていらっしゃらないなら今から説明しますので、しっかり、聞いてくださいね」
そう言いながら、隣に置いていたカバンからファイルに入れられた書類を取り出す。
「まず、最初に今国会で新しい法案が出されたのはご存知ですか?」
「はい。あの児童虐待がどうとかっていう奴ですよね?」
知らない訳がない、最近のニュースはその法案のことで一色なんだから・・・・・・。説明は続き、
「その法案の内容はご存知ですか?」
「はい。ある程度は・・・・・・」
「知っていらっしゃるのであれば、もう分かりましたね?」
そう言われても・・・・・・さっぱり分からない・・・・・・。そして、俺はとうとう手元に置いていた手紙の封を切る事にした。中に入っていた紙に書いてあった内容は――結城優羽殿 貴方を一条咲様の1年間の親として育てる義務を負うことをここに示します――とだけ・・・・・・、な、なんじゃこりゃ~~~!!と叫ぶ訳にもいかず、
「は、はぁ・・・・・・でも、どうして僕が・・・・・・?」
ハッキリ言って身に覚えが無い。どうして俺なんかに、というのが正直な感想。
「えっ、貴方様は応募なさいましたよね・・・・・・?このテストプレイの応募に」
「はっ?何の話です、それ」
え。と驚きながらもポーカーフェイスを崩さずにカバンの中を探し、書類を取り出す。
「ここ、見てください」
そう言って見せられたところには俺が書いて送ったらしいハガキの写真があった。――なんで写真で撮ってあるんだよ――とは思いつつも口に出さずに思い出そうと頑張る。
「あっ!思い出した。その日、手元にあった懸賞を片っ端から応募したからその中に紛れてたんだ。なるほど、これで納得」
うんうん、と頷く俺を見て安心したのかまた説明が始まる。
「それでは話を戻しますね。さっきも言いましたが、私の隣にいる子、一条咲ちゃんと1年間一緒に暮らしてもらいます。生活費等は国が負いますので気にしなくていいです。では、私はこれで」
と言い終わるや否や帰ろうとするのを引き止め、
「いやいやいや、まだ聞きたいことが沢山あるんですから待ってください!」
と、必死に腕を掴んで頼むと、しょうがないですね、と言って元いた場所に座り直す。
「それで、他に聞きたいこととは?」
やばい、改めて言われるとなんて質問したらいいか考えてなかった・・・・・・・・・。と、そんなおれの心の中を読んだかのように、
「はぁ、わかりました。もう少し詳しく説明しますね」
そう言って今までずっと俺と女性の会話中本(主にラノベ)を読んでいた一条咲(さっきの紙に書いてあったから)に視線を向ける。
「これから1年間、この子の父親として一緒に生活してもらいます。それがその手元にある文書に書いてある意味です。生活費等は政府から月15万円出ますのでご安心を。ほら、咲ちゃん挨拶しよう?」
そう言うと少女は、神楽さんが言うなら、と言って一旦俺の方を見て、「よろしく・・・・・・お願いします」と言って、また本の方に視線を戻してしまった。
「この子は小学校1年生の時に母親から虐待を受け、児童相談所に保護されそのまま施設で暮らしていました。そして、今回様々な下調べから優羽様が適任だとこちらで判断しまして、今に至ると言うわけです。少しは分かって頂けましたでしょうか?」
「なるほど、理由はある程度理解できました。そして、俺はどうすればいいんですか?」
そう、一番気になっていたとこ――俺は一緒に暮らして何をどうすればいいのか――やっと聞けた・・・・・・。
「特別な事はしなくていいです。ただ普通に親子として1年間暮らしてください」
えっ、まじ?そんな事なの・・・・・・。あ、でも、普通に暮らすってどういうふうに・・・・・・と、また心の中を読まれたのか、
「今、普通って、どうやってと思いましたよね?」
えっ、な、なんでまた・・・・・・まさか顔に出ててた・・・・・・?(汗)
「ええ、出てますよ。顔に」
ひいぃ、この人やばい人だ・・・・・・。
「話が進まないので言いますけど、読心術とかじゃないので安心を。それで、優羽様が思うままにでいいです。ただ、この子、咲ちゃんは母親から虐待を受けてる時に父親は何も言わずに不倫して離婚届を残して家を出ていくという過去を持っています。そのことが原因で人間不信。特に大人が信じれなくなっています。だから、優羽様と過ごすことで少しでもこの子の癒しとなる事ができたら、というのが今回のテストプレイの目的です。少しは理解して頂けましたでしょうか?」
ふむ、大体話は分かってきた。
「わかりました、そういう事でしたら引き受けます」
なんで俺が選ばれたのかは分からないが選ばれたからにはやるしかない。それに応募したのは俺だし・・・・・・知らなかったけど(笑)
「それでは、こちらの書類にサインを」
そう言ってまたカバンから書類を取り出す。いったいどれだけ入るんだ・・・・・・あのカバン。そう思いながらもサインをする。俺が書き終わると同時に、
「サインもいただきましたし、何か質問等がありましたらこちらに」
そう言って、俺の前に名刺を置く。そこには[文部省 神楽結月(かぐらゆづき)]と裏には番号とアドレスが走り書きで書いてあった。
「では、私はこれで」
と神楽さんは立ち上がり、出ていってしまった。取り残された俺と咲。会話も無くただ沈黙が流れ始める。何か会話をしないと・・・・・・、
「ねえねえ、咲ちゃん。何の本読んでるの?」
と聞いてみる。と、咲は表紙を俺の方に見せてくる。その表紙に書いてあったタイトルは[俺に青春なんてやってくるはずがない!!]。俺のデビュー作だった・・・・・・。ついテンションが上がってしまって自分から・・・・・・、
「その本、書いたの俺なんだ~」
と口にしてしまう。と、それを聞いた途端、
「え!?そうなんですか!?このemeralって結城さんの事だったんですか!?」
と、さっきまでは考えられない様子でグイグイと聞いてくる咲に気押されつつも、
「う、うん。emeralって俺のペンネームだから。驚いた?」
「はい!とっても驚きました。だから、ここの部屋は作家さんの部屋みたいだったんですね、納得です」
「作家の部屋みたいって・・・・・・俺作家なのに・・・・・・あ、自己紹介がまだだったよね。結城優羽20歳です。ラノベ作家してます、これから宜しくね」
そう言うと咲は、
「あっ、では、私も。えっと、#一条咲_いちじょうさき__#8歳です。学校は今はお休み中です。趣味は読書です」
「じゃあ、咲って、呼んでいいかな?俺のことは名字以外なら好きに呼んでいいから。あ、あとね、敬語は使わなくていいよ。これからは家族なんだから」
「えっと、じゃあ、優羽さん?お父さん?パパ?パパ!パパにします、いいですか?」
パパときたか・・・・・・えぇい、言った手前だ腹くくってやる!
「うん、いいよ。それでなんだけど、これからちょっと原稿進めないといけないんだけど、大丈夫かな?」
「はい、パパ。咲はパパの本を読んでいるので気にしないでください」
「うん、ごめんね。初日なのに構って挙げれなくて・・・・・・」
「いえいえ、気にしないでください。1人は慣れていますので・・・・・・」
そして、俺はパソコンに向かいながら原稿を進める。が、しかし、どうしてもさっきの咲の顔が頭から離れない。あのどこか少し寂しげな表情を。やっぱり1人に慣れてるって過去のことが関係してるんだろうな・・・・・・。こんなのダメだよな、よし、と考えていると、後ろから「きゅるぅぅぅ~~」となんとも可愛らしい音が聞こえ、後ろを向くと本で顔を隠している。
「咲、外に行こっか。もうそろそろ、夕ご飯の時間だし、今日は咲がうちに来た記念日なんだから」
「えっ、いや、そんな・・・・・・」
と、顔を赤くして戸惑う咲を少し強引に引っ張りながら、
「いいから、いいから」
と、家を出る。
そして、俺が向かったのは、近くにあるファミレス。いや、だって、お腹空いてる子を遠くまでとか連れていけないじゃん?まあ、そんな考えで、結局、近場になった訳で、そこは何もいうな。飯時にも関わらず、客が少ないってことはあまり繁盛していないのかもしれない。などと、店の人から「余計なお世話だ」と言われそうなことを考えつつ、咲を連れて奥のテーブルに座る。そして、メニュー表を取り、一つを咲に渡す。
「何でも好きなもの頼んでいいよ?遠慮なんてしなくていいからね」
俺はパラパラと捲り、何となくカルボナーラにし、咲の方を見ると、パラパラと捲っているがなかなかと決められない様子でいる。
「どう、決まった?」
と、何気無しに軽く聞くと咲は少し申し訳なさそうな顔で、
「どれが美味しいのか分かんないです・・・・・・。こういう所来るの初めてだから・・・・・・」
と言われて、俺はハッとする。そうか、親に見放されていたみたいだから、そうだよな。と勝手に悟りつつ、
「そうなんだ。じゃあ、今日は無難にお子様ランチとかにしたらいいんじゃないかな?」
と、俺が言うと咲は「じゃあ、それにします」といって、俺は呼び鈴を慣らし、店員が来て、注文を取り、その後、厨房に戻っていく。と、店員が見えなくなると、咲が、
「パパ、ちょっと・・・・・・」
と、恐る恐る聞いてくる。俺はなんだろうと思いつつ、
「どうしたの?」
と返す。すると、咲は、
「原稿とかって、大丈夫なんですか・・・・・・?なんか、途中で放り出した感じで出てきたから・・・・・・気になってて」
と、言われて、俺はあぁそういえば、という感じで思い出す。
「そんなこと気にしてたんだ、大丈夫大丈夫気にしなくていいよ。どうせまだ締切は先だから」
と、笑って返すと咲はホッとした様子で表情に余裕が出てくる。俺のこと気にしててくれたんだ・・・・・・優しいんだな、この子は。その後も作家について色々聞いてくる咲を見てほんとに本が好きなんだな~と思っていると、料理が運ばれてきた。
「カルボナーラとお子様ランチです、ごゆっくりどうぞ~」
そして、俺と咲は食べ始める。と、ふと咲からの視線に気づく。
「どうした、咲。なんか俺の顔に付いてるか?」
「あっ、いえ・・・・・・ただ、ちょっとパパが食べてるの美味しそうに見えたのから・・・・・・」
あ、なるほど、一口欲しいってやつか、これは。よし、
「じゃあ、食べてみる?」
と、ついつい聞いてしまった。それを聞いて咲は驚いたように、
「いいんですか!?でも、パパが食べる分減っちゃいますよ・・・・・・?」
「いやいや、そんなことないよ、ん、そんな事はあるか(笑)大丈夫、気にしなくていいよ」
と、俺はフォークで綺麗に巻き、咲の前に持ってくる。
「はい、あーんして」
そう言うと咲は口を開けてパクッとカルボナーラの巻かれたフォークにかぶりつき美味しそうに食べる。
「とっても美味しいです!!初めて食べました・・・・・・」
「そう、それは良かった。まぁ、作ったの俺じゃないけどね」
そう言って2人は笑い出す。
「・・・・・・ご馳走様でした・・・・・・」
ファミレスを出た後すぐに咲がそう言って、頭を下げてきた。
「うん、美味しかった?」
「はい、とっても美味しかったです・・・・・・その、また来たいです・・・・・・」
「そうだね、来ようね」
まあ、しょっちゅうは無理だと思うけど(笑)
その帰り道、月が雲に隠れて薄暗い道を歩いていると後ろから袖を引っ張られた。俺は何だろうと思いつつ、横に並んで歩いていた咲の方を見ると、
「パパ、今日はありがとう」
とちょうど雲が晴れ月明かりに照らされた咲の満面の笑みを俺はいつまでも忘れることはなかった。なぜなら、この時に俺はこの笑顔を守りっていくと決意した時でもあるのだから。
俺、結城優羽20歳、独身、彼女無しの社会人2年目だ。ちなみに職業は作家。18歳で某文庫の大賞を受賞し、デビュー。今ではそこそこ売れてる作家の1人。そんな職業以外はどこにでもいそうな20歳。ちなみにアパートで一人暮らし。仕事場兼自宅だ。4月2日午後2時。いつもならひたすらパソコンに向かって次回の原稿を書いているはずの時間帯に何故か俺は長い黒髪をスラリと伸ばして首の後ろで結んだ少女と黒スーツにサングラスをかけた如何にも仕事ができそうな女性とテーブルを挟んで向かい合っていた。
「あの~それで、これはどういう状況何でしょう…?」
イマイチ状況の掴めない俺は恐る恐る聞いてみる。それもそのはずで原稿を書いている時にチャイムが鳴ったから出てみると「入らせてもらいます」の一言で押しかけてきたこの2人。俺にはさっぱり心当たりも面識も無いのだが。そして、最初の場面に戻るわけなのだが・・・・・・、
「そうですね。では、説明させていただきます。ですが、その前に2日ほど前にハガキが届きませんでしたか?そちらがあると説明が簡単で済むのですが・・・・・・」
と言われて、俺は、
「手紙ですか、ちょっと待ってください」
そう言って、ファンレターやら広告やらが適当に入れている木編みのボックスを取り出す。その中をゴソゴソ漁っていると、
「これですか?」
そう言って俺は少し怪しげな赤い封の手紙を女性に見せる。
「はい、それです。しかし、封が切られてないところを見ると中身は知らないんですね?」
そう少し見下すような呆れた様な目で俺を見る。あ、いや、そんな目で見ないでください・・・・・・。
「はい・・・・・・すいません・・・・・・」
「いえ、見ていらっしゃらないなら今から説明しますので、しっかり、聞いてくださいね」
そう言いながら、隣に置いていたカバンからファイルに入れられた書類を取り出す。
「まず、最初に今国会で新しい法案が出されたのはご存知ですか?」
「はい。あの児童虐待がどうとかっていう奴ですよね?」
知らない訳がない、最近のニュースはその法案のことで一色なんだから・・・・・・。説明は続き、
「その法案の内容はご存知ですか?」
「はい。ある程度は・・・・・・」
「知っていらっしゃるのであれば、もう分かりましたね?」
そう言われても・・・・・・さっぱり分からない・・・・・・。そして、俺はとうとう手元に置いていた手紙の封を切る事にした。中に入っていた紙に書いてあった内容は――結城優羽殿 貴方を一条咲様の1年間の親として育てる義務を負うことをここに示します――とだけ・・・・・・、な、なんじゃこりゃ~~~!!と叫ぶ訳にもいかず、
「は、はぁ・・・・・・でも、どうして僕が・・・・・・?」
ハッキリ言って身に覚えが無い。どうして俺なんかに、というのが正直な感想。
「えっ、貴方様は応募なさいましたよね・・・・・・?このテストプレイの応募に」
「はっ?何の話です、それ」
え。と驚きながらもポーカーフェイスを崩さずにカバンの中を探し、書類を取り出す。
「ここ、見てください」
そう言って見せられたところには俺が書いて送ったらしいハガキの写真があった。――なんで写真で撮ってあるんだよ――とは思いつつも口に出さずに思い出そうと頑張る。
「あっ!思い出した。その日、手元にあった懸賞を片っ端から応募したからその中に紛れてたんだ。なるほど、これで納得」
うんうん、と頷く俺を見て安心したのかまた説明が始まる。
「それでは話を戻しますね。さっきも言いましたが、私の隣にいる子、一条咲ちゃんと1年間一緒に暮らしてもらいます。生活費等は国が負いますので気にしなくていいです。では、私はこれで」
と言い終わるや否や帰ろうとするのを引き止め、
「いやいやいや、まだ聞きたいことが沢山あるんですから待ってください!」
と、必死に腕を掴んで頼むと、しょうがないですね、と言って元いた場所に座り直す。
「それで、他に聞きたいこととは?」
やばい、改めて言われるとなんて質問したらいいか考えてなかった・・・・・・・・・。と、そんなおれの心の中を読んだかのように、
「はぁ、わかりました。もう少し詳しく説明しますね」
そう言って今までずっと俺と女性の会話中本(主にラノベ)を読んでいた一条咲(さっきの紙に書いてあったから)に視線を向ける。
「これから1年間、この子の父親として一緒に生活してもらいます。それがその手元にある文書に書いてある意味です。生活費等は政府から月15万円出ますのでご安心を。ほら、咲ちゃん挨拶しよう?」
そう言うと少女は、神楽さんが言うなら、と言って一旦俺の方を見て、「よろしく・・・・・・お願いします」と言って、また本の方に視線を戻してしまった。
「この子は小学校1年生の時に母親から虐待を受け、児童相談所に保護されそのまま施設で暮らしていました。そして、今回様々な下調べから優羽様が適任だとこちらで判断しまして、今に至ると言うわけです。少しは分かって頂けましたでしょうか?」
「なるほど、理由はある程度理解できました。そして、俺はどうすればいいんですか?」
そう、一番気になっていたとこ――俺は一緒に暮らして何をどうすればいいのか――やっと聞けた・・・・・・。
「特別な事はしなくていいです。ただ普通に親子として1年間暮らしてください」
えっ、まじ?そんな事なの・・・・・・。あ、でも、普通に暮らすってどういうふうに・・・・・・と、また心の中を読まれたのか、
「今、普通って、どうやってと思いましたよね?」
えっ、な、なんでまた・・・・・・まさか顔に出ててた・・・・・・?(汗)
「ええ、出てますよ。顔に」
ひいぃ、この人やばい人だ・・・・・・。
「話が進まないので言いますけど、読心術とかじゃないので安心を。それで、優羽様が思うままにでいいです。ただ、この子、咲ちゃんは母親から虐待を受けてる時に父親は何も言わずに不倫して離婚届を残して家を出ていくという過去を持っています。そのことが原因で人間不信。特に大人が信じれなくなっています。だから、優羽様と過ごすことで少しでもこの子の癒しとなる事ができたら、というのが今回のテストプレイの目的です。少しは理解して頂けましたでしょうか?」
ふむ、大体話は分かってきた。
「わかりました、そういう事でしたら引き受けます」
なんで俺が選ばれたのかは分からないが選ばれたからにはやるしかない。それに応募したのは俺だし・・・・・・知らなかったけど(笑)
「それでは、こちらの書類にサインを」
そう言ってまたカバンから書類を取り出す。いったいどれだけ入るんだ・・・・・・あのカバン。そう思いながらもサインをする。俺が書き終わると同時に、
「サインもいただきましたし、何か質問等がありましたらこちらに」
そう言って、俺の前に名刺を置く。そこには[文部省 神楽結月(かぐらゆづき)]と裏には番号とアドレスが走り書きで書いてあった。
「では、私はこれで」
と神楽さんは立ち上がり、出ていってしまった。取り残された俺と咲。会話も無くただ沈黙が流れ始める。何か会話をしないと・・・・・・、
「ねえねえ、咲ちゃん。何の本読んでるの?」
と聞いてみる。と、咲は表紙を俺の方に見せてくる。その表紙に書いてあったタイトルは[俺に青春なんてやってくるはずがない!!]。俺のデビュー作だった・・・・・・。ついテンションが上がってしまって自分から・・・・・・、
「その本、書いたの俺なんだ~」
と口にしてしまう。と、それを聞いた途端、
「え!?そうなんですか!?このemeralって結城さんの事だったんですか!?」
と、さっきまでは考えられない様子でグイグイと聞いてくる咲に気押されつつも、
「う、うん。emeralって俺のペンネームだから。驚いた?」
「はい!とっても驚きました。だから、ここの部屋は作家さんの部屋みたいだったんですね、納得です」
「作家の部屋みたいって・・・・・・俺作家なのに・・・・・・あ、自己紹介がまだだったよね。結城優羽20歳です。ラノベ作家してます、これから宜しくね」
そう言うと咲は、
「あっ、では、私も。えっと、#一条咲_いちじょうさき__#8歳です。学校は今はお休み中です。趣味は読書です」
「じゃあ、咲って、呼んでいいかな?俺のことは名字以外なら好きに呼んでいいから。あ、あとね、敬語は使わなくていいよ。これからは家族なんだから」
「えっと、じゃあ、優羽さん?お父さん?パパ?パパ!パパにします、いいですか?」
パパときたか・・・・・・えぇい、言った手前だ腹くくってやる!
「うん、いいよ。それでなんだけど、これからちょっと原稿進めないといけないんだけど、大丈夫かな?」
「はい、パパ。咲はパパの本を読んでいるので気にしないでください」
「うん、ごめんね。初日なのに構って挙げれなくて・・・・・・」
「いえいえ、気にしないでください。1人は慣れていますので・・・・・・」
そして、俺はパソコンに向かいながら原稿を進める。が、しかし、どうしてもさっきの咲の顔が頭から離れない。あのどこか少し寂しげな表情を。やっぱり1人に慣れてるって過去のことが関係してるんだろうな・・・・・・。こんなのダメだよな、よし、と考えていると、後ろから「きゅるぅぅぅ~~」となんとも可愛らしい音が聞こえ、後ろを向くと本で顔を隠している。
「咲、外に行こっか。もうそろそろ、夕ご飯の時間だし、今日は咲がうちに来た記念日なんだから」
「えっ、いや、そんな・・・・・・」
と、顔を赤くして戸惑う咲を少し強引に引っ張りながら、
「いいから、いいから」
と、家を出る。
そして、俺が向かったのは、近くにあるファミレス。いや、だって、お腹空いてる子を遠くまでとか連れていけないじゃん?まあ、そんな考えで、結局、近場になった訳で、そこは何もいうな。飯時にも関わらず、客が少ないってことはあまり繁盛していないのかもしれない。などと、店の人から「余計なお世話だ」と言われそうなことを考えつつ、咲を連れて奥のテーブルに座る。そして、メニュー表を取り、一つを咲に渡す。
「何でも好きなもの頼んでいいよ?遠慮なんてしなくていいからね」
俺はパラパラと捲り、何となくカルボナーラにし、咲の方を見ると、パラパラと捲っているがなかなかと決められない様子でいる。
「どう、決まった?」
と、何気無しに軽く聞くと咲は少し申し訳なさそうな顔で、
「どれが美味しいのか分かんないです・・・・・・。こういう所来るの初めてだから・・・・・・」
と言われて、俺はハッとする。そうか、親に見放されていたみたいだから、そうだよな。と勝手に悟りつつ、
「そうなんだ。じゃあ、今日は無難にお子様ランチとかにしたらいいんじゃないかな?」
と、俺が言うと咲は「じゃあ、それにします」といって、俺は呼び鈴を慣らし、店員が来て、注文を取り、その後、厨房に戻っていく。と、店員が見えなくなると、咲が、
「パパ、ちょっと・・・・・・」
と、恐る恐る聞いてくる。俺はなんだろうと思いつつ、
「どうしたの?」
と返す。すると、咲は、
「原稿とかって、大丈夫なんですか・・・・・・?なんか、途中で放り出した感じで出てきたから・・・・・・気になってて」
と、言われて、俺はあぁそういえば、という感じで思い出す。
「そんなこと気にしてたんだ、大丈夫大丈夫気にしなくていいよ。どうせまだ締切は先だから」
と、笑って返すと咲はホッとした様子で表情に余裕が出てくる。俺のこと気にしててくれたんだ・・・・・・優しいんだな、この子は。その後も作家について色々聞いてくる咲を見てほんとに本が好きなんだな~と思っていると、料理が運ばれてきた。
「カルボナーラとお子様ランチです、ごゆっくりどうぞ~」
そして、俺と咲は食べ始める。と、ふと咲からの視線に気づく。
「どうした、咲。なんか俺の顔に付いてるか?」
「あっ、いえ・・・・・・ただ、ちょっとパパが食べてるの美味しそうに見えたのから・・・・・・」
あ、なるほど、一口欲しいってやつか、これは。よし、
「じゃあ、食べてみる?」
と、ついつい聞いてしまった。それを聞いて咲は驚いたように、
「いいんですか!?でも、パパが食べる分減っちゃいますよ・・・・・・?」
「いやいや、そんなことないよ、ん、そんな事はあるか(笑)大丈夫、気にしなくていいよ」
と、俺はフォークで綺麗に巻き、咲の前に持ってくる。
「はい、あーんして」
そう言うと咲は口を開けてパクッとカルボナーラの巻かれたフォークにかぶりつき美味しそうに食べる。
「とっても美味しいです!!初めて食べました・・・・・・」
「そう、それは良かった。まぁ、作ったの俺じゃないけどね」
そう言って2人は笑い出す。
「・・・・・・ご馳走様でした・・・・・・」
ファミレスを出た後すぐに咲がそう言って、頭を下げてきた。
「うん、美味しかった?」
「はい、とっても美味しかったです・・・・・・その、また来たいです・・・・・・」
「そうだね、来ようね」
まあ、しょっちゅうは無理だと思うけど(笑)
その帰り道、月が雲に隠れて薄暗い道を歩いていると後ろから袖を引っ張られた。俺は何だろうと思いつつ、横に並んで歩いていた咲の方を見ると、
「パパ、今日はありがとう」
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誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
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