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キスを集めるキミと スキを編むボクと
③
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名取くんに手を引かれながら、どういう事なのか必死に考えていた。
別に僕は名取くんに付き合おうと言われた事に対して返事をしたわけではない。ただ日奈稀の僕を無視するような態度に、今まで我慢してきたものがついに爆発してしまっただけの話だ。
それで日奈稀の腕の中から出て、文句を言おうとして――何でだかこんな事になってしまっている。
「ふは」
突然吹き出して、くっくと笑いだす名取くん。
「な……?」
「ウソやから」
「何、が?」
「豊田くん、平野の事好きやんな。それ分かってて告白なんせぇへんよ」
「え? え??」
「隠さんでもええねん。新参者の僕でも分かるのに平野は豊田くんおるのに他の子ぉにキスさせて、それもひとりやふたりやない、ぎょーさんや。そんなんひどすぎやと思うわ」
「……」
僕は何も言えなかった。やっぱり傍から見ても僕の日奈稀に対する想いはバレバレで、その上であんな事をする日奈稀は僕の事を大事な存在だとは思っていない、という事なのだろう。
やっぱりなと思う、けど他人からはっきりと言われたくはなかったなと思う。
「それに、自分ゲーム好きやんな。僕も好きでようやっとるんや。もしよかったら一緒にせぇへん? まぁそんな感じで声かけたねんけど」
にぃと笑い、ぽんぽんと軽く頭を撫でられた。
「あ、あとな。こっちこっち」
と連れて行かれた先は、僕らの特別な場所だった。
一面に広がる花畑を見てゴクリと喉が鳴る。
随分と久しぶりなのにあの頃のまま、異世界はそこに在った。
そのまま異世界へと連れて行かれそうになるが、僕は境界線一歩手前で立ち止まった。
ここから先へは行けない、行きたくない。
僕が立ち止まってしまったのは感動したからだと勘違いしたのか名取くんは、花畑を見つめて興奮気味に話し始めた。
「ここな、こないだ見つけてん! なんや異世界みたいやない? 僕、ゲームも好きやけど冒険物のラノベも好きやねん! なぁなぁ、豊田くんもそういうの好きやない?」
真っすぐな、あの頃の僕らと同じ、キラキラと目を輝かせる名取くんの顔が見れなくて、俯いてしまう。
久しぶりにこの場所に来て心がざわざわと落ち着かない。
やるせなく思ってしまうのも抑えられなくて、何で名取くんがこの場所に? ここは僕らの特別なのにって見当違いな事を思ってしまう。
さすがに俯き続ける僕の様子がおかしいと気付いたのか、名取くんが苦笑したのが分かった。
「今日はまぁ、アレやな。時間も遅いし、帰ろうか。そんで明日からゲーム仲間として遊んだってや」
「――うん。ありがとう……」
きっと名取くんはこの場所に何かある事は気付いたと思う。それなのに気づかないフリでいてくれる。
僕が名取くんと直接言葉を交わしたのは今日が初めてで、下の名前も覚えてないくらいなのにどうしてこんなにも名取くんは僕に優しいんだろうか。僕を好きだと言ったのは嘘だって事だし、それほどまでに僕が惨めに見えた、という事なのだろうか。
別に僕は名取くんに付き合おうと言われた事に対して返事をしたわけではない。ただ日奈稀の僕を無視するような態度に、今まで我慢してきたものがついに爆発してしまっただけの話だ。
それで日奈稀の腕の中から出て、文句を言おうとして――何でだかこんな事になってしまっている。
「ふは」
突然吹き出して、くっくと笑いだす名取くん。
「な……?」
「ウソやから」
「何、が?」
「豊田くん、平野の事好きやんな。それ分かってて告白なんせぇへんよ」
「え? え??」
「隠さんでもええねん。新参者の僕でも分かるのに平野は豊田くんおるのに他の子ぉにキスさせて、それもひとりやふたりやない、ぎょーさんや。そんなんひどすぎやと思うわ」
「……」
僕は何も言えなかった。やっぱり傍から見ても僕の日奈稀に対する想いはバレバレで、その上であんな事をする日奈稀は僕の事を大事な存在だとは思っていない、という事なのだろう。
やっぱりなと思う、けど他人からはっきりと言われたくはなかったなと思う。
「それに、自分ゲーム好きやんな。僕も好きでようやっとるんや。もしよかったら一緒にせぇへん? まぁそんな感じで声かけたねんけど」
にぃと笑い、ぽんぽんと軽く頭を撫でられた。
「あ、あとな。こっちこっち」
と連れて行かれた先は、僕らの特別な場所だった。
一面に広がる花畑を見てゴクリと喉が鳴る。
随分と久しぶりなのにあの頃のまま、異世界はそこに在った。
そのまま異世界へと連れて行かれそうになるが、僕は境界線一歩手前で立ち止まった。
ここから先へは行けない、行きたくない。
僕が立ち止まってしまったのは感動したからだと勘違いしたのか名取くんは、花畑を見つめて興奮気味に話し始めた。
「ここな、こないだ見つけてん! なんや異世界みたいやない? 僕、ゲームも好きやけど冒険物のラノベも好きやねん! なぁなぁ、豊田くんもそういうの好きやない?」
真っすぐな、あの頃の僕らと同じ、キラキラと目を輝かせる名取くんの顔が見れなくて、俯いてしまう。
久しぶりにこの場所に来て心がざわざわと落ち着かない。
やるせなく思ってしまうのも抑えられなくて、何で名取くんがこの場所に? ここは僕らの特別なのにって見当違いな事を思ってしまう。
さすがに俯き続ける僕の様子がおかしいと気付いたのか、名取くんが苦笑したのが分かった。
「今日はまぁ、アレやな。時間も遅いし、帰ろうか。そんで明日からゲーム仲間として遊んだってや」
「――うん。ありがとう……」
きっと名取くんはこの場所に何かある事は気付いたと思う。それなのに気づかないフリでいてくれる。
僕が名取くんと直接言葉を交わしたのは今日が初めてで、下の名前も覚えてないくらいなのにどうしてこんなにも名取くんは僕に優しいんだろうか。僕を好きだと言ったのは嘘だって事だし、それほどまでに僕が惨めに見えた、という事なのだろうか。
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