22 / 23
② @広瀬 涼
しおりを挟む
太郎さんを攫った男たちは元々そんなに悪い人間ではなかったようで、太郎さんを攫いはしたけどひどい事をするつもりはなかったらしい。ただあの場所に来た池上さんを少し痛めつける予定だったんだとか。
あの夜、太郎さんからやられる前に実は池上さんの恋人じゃない事は太郎さん本人から訊いたらしいんだけど、謝って解放する前に問答無用でやられちゃったらしい。本当の恋人である俺にゼンさんに謝って欲しいと言ってきた。直接ゼンさんに会って謝るのが筋だけど、ちょっとトラウマになるくらいゼンさんが怖かったんだそうだ。想像がつかないけど、まさに『鬼神』だったそうだ。
あちこち傷だらけで謝る男たちを見てさすがに少し気の毒になって、俺はそれ以上文句を言う事はせず二度とゼンさんに近寄らないと約束させただけで済ませた。それよりも本当に反省すべきは池上さんだ。
適当な事ばかりやっているからこういう事になったんだ。池上さんにはしっかりと反省してもわらなくては。俺は意識的に池上さんの事を睨み続けて一週間も経った頃、池上さんが誠心誠意謝ってきて心を入れ替えると誓ってくれた。
まだ少し不満は残るものの、それ以上は過ぎるってもんだ。
あと驚いたのは太郎さんは今は辞めてしまったらしいけど実は小さい頃から色々な武術を習っていて、けんかをしても負け知らずなのだそうだ。
そしてバイトの件だけど、太郎さんと話し合って結局辞めずに入る回数を減らす事にした。太郎さんも太郎さんの姿のままで来てくれるというので俺に否はない。
それに、沢山の人と関わりを持つ事で少しずつでも俺を理解してくれる人が増えて欲しいと太郎さんが言うのだ。確かに今では池上さんや宮崎さんには怖がられていない。ふたりと普通に話をする姿を見た人も少し態度が変わってきたように思う。こうやって少しずつ俺は『ただの目つきが鋭いだけで怖くない人』になっていくのだろうか。そんなの諦めていたのに……。
最初に宮崎さんが俺に声をかけるきっかけをくれたのは太郎さんだった。あのビターチョコの一件だ。俺は知らない間に太郎さんに守られていたんだ。
俺も太郎さんを守る為に何か武術でも習おうと太郎さんに相談したら、太郎さんが直々に教えてくれる事になった。勿論真面目に習うつもりだけど、太郎さんと会える時間が増える事が単純に嬉しかった。それに手取り足取り――だなんて俺トクでしかない。
って思っていたんだけど、太郎先生は意外と厳しかった……。
投げられても叱られても太郎さんは素敵で、恰好いい。
なるほど『鬼神』。なるほど――。
俺は何度もなんでも太郎さんに恋をする。好きという気持ちが新しく生まれて、積み重なって俺の『初恋』は続いていく――。ずっと、ずっと……。
あの夜、太郎さんからやられる前に実は池上さんの恋人じゃない事は太郎さん本人から訊いたらしいんだけど、謝って解放する前に問答無用でやられちゃったらしい。本当の恋人である俺にゼンさんに謝って欲しいと言ってきた。直接ゼンさんに会って謝るのが筋だけど、ちょっとトラウマになるくらいゼンさんが怖かったんだそうだ。想像がつかないけど、まさに『鬼神』だったそうだ。
あちこち傷だらけで謝る男たちを見てさすがに少し気の毒になって、俺はそれ以上文句を言う事はせず二度とゼンさんに近寄らないと約束させただけで済ませた。それよりも本当に反省すべきは池上さんだ。
適当な事ばかりやっているからこういう事になったんだ。池上さんにはしっかりと反省してもわらなくては。俺は意識的に池上さんの事を睨み続けて一週間も経った頃、池上さんが誠心誠意謝ってきて心を入れ替えると誓ってくれた。
まだ少し不満は残るものの、それ以上は過ぎるってもんだ。
あと驚いたのは太郎さんは今は辞めてしまったらしいけど実は小さい頃から色々な武術を習っていて、けんかをしても負け知らずなのだそうだ。
そしてバイトの件だけど、太郎さんと話し合って結局辞めずに入る回数を減らす事にした。太郎さんも太郎さんの姿のままで来てくれるというので俺に否はない。
それに、沢山の人と関わりを持つ事で少しずつでも俺を理解してくれる人が増えて欲しいと太郎さんが言うのだ。確かに今では池上さんや宮崎さんには怖がられていない。ふたりと普通に話をする姿を見た人も少し態度が変わってきたように思う。こうやって少しずつ俺は『ただの目つきが鋭いだけで怖くない人』になっていくのだろうか。そんなの諦めていたのに……。
最初に宮崎さんが俺に声をかけるきっかけをくれたのは太郎さんだった。あのビターチョコの一件だ。俺は知らない間に太郎さんに守られていたんだ。
俺も太郎さんを守る為に何か武術でも習おうと太郎さんに相談したら、太郎さんが直々に教えてくれる事になった。勿論真面目に習うつもりだけど、太郎さんと会える時間が増える事が単純に嬉しかった。それに手取り足取り――だなんて俺トクでしかない。
って思っていたんだけど、太郎先生は意外と厳しかった……。
投げられても叱られても太郎さんは素敵で、恰好いい。
なるほど『鬼神』。なるほど――。
俺は何度もなんでも太郎さんに恋をする。好きという気持ちが新しく生まれて、積み重なって俺の『初恋』は続いていく――。ずっと、ずっと……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる