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成願寺の家に着くと宮園は前もって連絡を入れていたのだろう成願寺の母親に手みやげを渡し、二時間ほど家から離れてもらった。
「宮園、手回しいいなー」
「そりゃ、何か月も家に閉じこもってたんだ。親がいると言いたいことも言えないかもしれないだろ」
四人は順番に宮園の頭を乱暴にぐしゃぐしゃとかき混ぜ、家に入って行く。
「ミヤゾノサン、マジカッケー。ホレルワー」
「ちょっダメっ!哲は俺のだから!宮園取るなよ!?」
「へいへい」
なんだっつーの。この寸劇。
宮園は乱れてしまった髪を手櫛で整えながら口角を上げた。
トントントンと階段を上った先の部屋のドアをノックする。
「けーい君。あっそびっましょー」
中から返事はない。シーンと静まり返る。
このくらいは想定の範囲内だ。
「せーの「「「「けーい君。あっそびましょー!」」」」」
今度は五人そろって呼びかけてみる。
流石にうるさい。
そういった意味でも母親に家を離れてもらって正解だっただろう。
何事か、いじめか、と妨害されかねない。
数か月にも及ぶこの引きこもりの原因を成願寺圭以外誰も知らなかったのだから。
「「「「「け――い―くん!!あっそび…」」」」」
ガチャリとドアが開いた。
迷惑そうに顔を出す成願寺。
「おー」
「やっほー。メリクリ―。オレ野田剛―」
「ちわ、最上哲史だ」
「初めまして―。って、ごめんちがくて…。メリークリスマス!小暮渚ですっ」
「坂野下雫。遊びに、来た」
「で、俺は宮園幸太郎。久しぶり」
それぞれが各々挨拶をして成願寺の部屋に入った。
呆然と固まる成願寺をよそに勝手にパーティの準備を始める五人。
「な、なにしにきたんだよっ」
「遊びに来たっつったろー。これから俺たちはクリスマスパーティをやる」
「なんで……」
「だって今日はクリスマスじゃん」
当然とばかりの渚の言葉に成願寺は口をパクパクさせている。
「クリスマスなんて…!俺なんかほっといてよそでやればいいじゃないかっ」
「だって友だちだろう?」
「は?さっき初めましてとか言ってたじゃないか。そんなんで友だちとか笑わせる!」
「あーごめんて。俺たちはこれから友だちになるんだ。てか、もうお前ん家遊びに来た時点で友だちだな」
にかっと歯を見せて笑う渚。
他の四人も一様に笑っている。
「なん…で…。俺なんて……男が好きな……クズやろうだって…言わ…言われ……。お前ら、も…俺なんかと一緒に、いると、変な噂…されっ」
じわりと涙が浮かぶ。
「「「「「は?」」」」」
五人は一斉に怖い顔をして成願寺を見た。
「おい。それ誰が言った?」
「マジでそいつおかしんじゃね?」
「名前言え。俺がしめる」
「そんなん言ったら俺たち全員クズってことになるぞ?」
「今時そんな事いうやついるんだな。そいつの方がクズだろう?」
口々にそう言いつつ、あぁこれがこいつが引きこもってしまった原因か、と分かる。
「だって…男が男を好き、とか、おかしいって…俺は……ただ好きになっただけなのに…ねぇ、それってそんなにいけない事…?」
涙を流し訴える成願寺。
胸が痛い。
「俺は渚と付き合ってる。渚が好きだ。一生渚以外好きにならない」
「俺も哲が好き。哲が男でも女でもきっと好きになってた」
「オレも雫が好き。他のやつに文句なんか言わせない」
「俺も…剛が好き。小さい頃からずっとずっと剛だけが好き」
「え、何それ。もっと詳しく!」
と、じゃれつき始める野田と坂野下。
雰囲気ぶち壊しだ。
「俺も他校に彼氏がいるぜ。まぁ言える事は男だとか女だとか関係なくて、その人がその人だから好きになった。それだけの話さ」
「…そんな簡単に………。う…うぅ…」
ぽろぽろと涙を流す成願寺。
宮園は他の四人を見て、しゃーねーな、と両腕を広げた。
「とりあえず友人の胸で泣いとけ。こんな胸でよければいくらでも貸してやるからさ」
「わ――――っ」
成願寺は宮園の胸の中で子どものように声を上げて泣いた。
四人もそれぞれ寄り添いあいその様子を黙ってみていた。
「宮園、手回しいいなー」
「そりゃ、何か月も家に閉じこもってたんだ。親がいると言いたいことも言えないかもしれないだろ」
四人は順番に宮園の頭を乱暴にぐしゃぐしゃとかき混ぜ、家に入って行く。
「ミヤゾノサン、マジカッケー。ホレルワー」
「ちょっダメっ!哲は俺のだから!宮園取るなよ!?」
「へいへい」
なんだっつーの。この寸劇。
宮園は乱れてしまった髪を手櫛で整えながら口角を上げた。
トントントンと階段を上った先の部屋のドアをノックする。
「けーい君。あっそびっましょー」
中から返事はない。シーンと静まり返る。
このくらいは想定の範囲内だ。
「せーの「「「「けーい君。あっそびましょー!」」」」」
今度は五人そろって呼びかけてみる。
流石にうるさい。
そういった意味でも母親に家を離れてもらって正解だっただろう。
何事か、いじめか、と妨害されかねない。
数か月にも及ぶこの引きこもりの原因を成願寺圭以外誰も知らなかったのだから。
「「「「「け――い―くん!!あっそび…」」」」」
ガチャリとドアが開いた。
迷惑そうに顔を出す成願寺。
「おー」
「やっほー。メリクリ―。オレ野田剛―」
「ちわ、最上哲史だ」
「初めまして―。って、ごめんちがくて…。メリークリスマス!小暮渚ですっ」
「坂野下雫。遊びに、来た」
「で、俺は宮園幸太郎。久しぶり」
それぞれが各々挨拶をして成願寺の部屋に入った。
呆然と固まる成願寺をよそに勝手にパーティの準備を始める五人。
「な、なにしにきたんだよっ」
「遊びに来たっつったろー。これから俺たちはクリスマスパーティをやる」
「なんで……」
「だって今日はクリスマスじゃん」
当然とばかりの渚の言葉に成願寺は口をパクパクさせている。
「クリスマスなんて…!俺なんかほっといてよそでやればいいじゃないかっ」
「だって友だちだろう?」
「は?さっき初めましてとか言ってたじゃないか。そんなんで友だちとか笑わせる!」
「あーごめんて。俺たちはこれから友だちになるんだ。てか、もうお前ん家遊びに来た時点で友だちだな」
にかっと歯を見せて笑う渚。
他の四人も一様に笑っている。
「なん…で…。俺なんて……男が好きな……クズやろうだって…言わ…言われ……。お前ら、も…俺なんかと一緒に、いると、変な噂…されっ」
じわりと涙が浮かぶ。
「「「「「は?」」」」」
五人は一斉に怖い顔をして成願寺を見た。
「おい。それ誰が言った?」
「マジでそいつおかしんじゃね?」
「名前言え。俺がしめる」
「そんなん言ったら俺たち全員クズってことになるぞ?」
「今時そんな事いうやついるんだな。そいつの方がクズだろう?」
口々にそう言いつつ、あぁこれがこいつが引きこもってしまった原因か、と分かる。
「だって…男が男を好き、とか、おかしいって…俺は……ただ好きになっただけなのに…ねぇ、それってそんなにいけない事…?」
涙を流し訴える成願寺。
胸が痛い。
「俺は渚と付き合ってる。渚が好きだ。一生渚以外好きにならない」
「俺も哲が好き。哲が男でも女でもきっと好きになってた」
「オレも雫が好き。他のやつに文句なんか言わせない」
「俺も…剛が好き。小さい頃からずっとずっと剛だけが好き」
「え、何それ。もっと詳しく!」
と、じゃれつき始める野田と坂野下。
雰囲気ぶち壊しだ。
「俺も他校に彼氏がいるぜ。まぁ言える事は男だとか女だとか関係なくて、その人がその人だから好きになった。それだけの話さ」
「…そんな簡単に………。う…うぅ…」
ぽろぽろと涙を流す成願寺。
宮園は他の四人を見て、しゃーねーな、と両腕を広げた。
「とりあえず友人の胸で泣いとけ。こんな胸でよければいくらでも貸してやるからさ」
「わ――――っ」
成願寺は宮園の胸の中で子どものように声を上げて泣いた。
四人もそれぞれ寄り添いあいその様子を黙ってみていた。
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