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プロローグ
しおりを挟むそれは一本の間違い電話から始まった。
***
オレは絵本作家をしている。と言っても鳴かず飛ばずの売れない作家だ。
10代の頃に一度だけ大きな賞を取って華々しくデビューした。
担当もついて、描く物全てベストセラーになってアニメ化して、なんて。
この先順風満帆だと思っていた。
実際は、
「ちょっと暗いねー。梶本さんの描く絵は子ども向けじゃないんだよ。もう少し明るく描けない?ストーリーもぱっとしないというか、元気が足らないんだよね。ここをこうしてこうだとよくなると思うから描きなおして」
などと30歳の自分よりも大分年下のひよこのような担当に偉そうに言われ、もはや誰の作品かわからないものが出来上がる。
他の誰が描いたっていいものだ。
オレだから描けるものじゃない。
とは言え、オレも生活がかかっているので言われた通りに描く。
そうやって10年以上過ごしてしまった。
作品を描く度に自分の心がぽろぽろと崩れていっているようなそんな錯覚にとらわれる。
最初の頃は自分なりに足掻いてもみた。
だけど、足掻けば足掻くほどクモの巣に捕まった蝶のようにがんじがらめになって、何を描きたいのか分からなくなる。
暗い。ぱっとしない。全否定される事にオレの心は疲れ果てていた。
そんな感じであの時のオレは、全てにぼんやりとしていた。
深く物事も考えられず、ただ言われた通りの絵本を描く。
ただの壊れかけのお絵かきマシーンだ。
「はぁ……」
今日何度目かの溜め息をついた。
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