8 / 10
すれ違う想い S(1)
しおりを挟む
目を覚ました僕は意識のない未来にしっかりと抱き込まれていた。
さっきは得体の知れない不安と身の奥からせり上がってくる何かに怯えていたのに、未来の腕の中はすごく安心できる場所で、幸せすら感じていた。
僕が幸せに浸る中、途中あのΩがいる隣りの教室が騒がしかったがすぐに静かになり、僕の意識の中からも消えた。
しばらくして連絡を受けた両親が迎えに来て僕たちを引き離そうとしたけれど、僕は未来の傍から離れたくなくて必死に未来にしがみついていた。
未来の両親は共働きで、意識のない未来を一人にしたくなくて未来の両親が迎えに来るまでの間だけ、と無理を言って未来を僕の家に一緒に連れて帰った。これで離れなくて済むと思ったのに部屋は別けられてしまった。
未来の傍にはβの年配のメイドが付き添っており一人ではない事にホッとするが、できれば僕が付き添いたかったと思う。
僕の部屋にも年配のΩのメイドが控えていたが、僕が目覚めると両親へ報告するために部屋を出て行った。
未来は近くにいないとは言え、同じ建物の中にはいるのだから我慢しなくては。
これ以上の我儘はダメだ。
未来の姿を見れない事に不安を覚えるが、嗅ぎ慣れた自分の匂いと今も僅かに服に残る未来の匂い。スンスンと鼻を鳴らし、自分のベッドに横になり少しだけ落ち着く。
あの時僕はいつも僅かにしか香ってこなかった未来のライムのような爽やかな香りを沢山嗅いだ。そしたら身体が熱くなって未来の事しか考えられなくなった。
コロンか何かだと思っていたけど、あれはフェロモンだった?
未来からフェロモンが異常に出たのはあのΩのせい?
だとしたら未来はβじゃなくて―――α…?
そして僕は……未来につられて―――?
――――え?じゃあ……。
今まで頑なに見る事をしなかった自分の項を震える手で手鏡を持ち姿見と合わせ見てみる。
そこにはしっかりと噛み跡が…番の印が刻まれていた。
――――僕は―――Ω…?
その途端雷に打たれたかのように流れ込んでくるあの日の記憶。
僕が未来を誘惑して項を噛ませた記憶。
勿論わざとなんかじゃなかった。
自分のことはαだと思っていたし、あの時何が起こったのか分かっていなかった。
だけどどんなに言い訳をしてみても事実は変わらない。
僕はΩのフェロモンを使って未来を僕に縛り付けてしまったんだ…。
あんなに嫌悪していたΩの武器を使って未来を――――。
何がヒートを武器のように使うΩを軽蔑する、だ。
沢山のΩじゃなくて、僕自身に向けられるべき言葉だったのに。
僕が一番卑劣なΩじゃないか……。
番になってしまったらΩはαに捨てられたら生きてはいけない。
優しい未来は不本意な番であっても友人として傍にいてくれたんだ。僕が狂ってしまわないように…。
じゃなければ僕たちは番だって教えてくれただろうから……。
長年疑問だった答えが分かったのに、現実は思っていた以上に残酷で、それ以上何も考えられなくなりただ涙がとめどなく流れ続けた。
さっきは得体の知れない不安と身の奥からせり上がってくる何かに怯えていたのに、未来の腕の中はすごく安心できる場所で、幸せすら感じていた。
僕が幸せに浸る中、途中あのΩがいる隣りの教室が騒がしかったがすぐに静かになり、僕の意識の中からも消えた。
しばらくして連絡を受けた両親が迎えに来て僕たちを引き離そうとしたけれど、僕は未来の傍から離れたくなくて必死に未来にしがみついていた。
未来の両親は共働きで、意識のない未来を一人にしたくなくて未来の両親が迎えに来るまでの間だけ、と無理を言って未来を僕の家に一緒に連れて帰った。これで離れなくて済むと思ったのに部屋は別けられてしまった。
未来の傍にはβの年配のメイドが付き添っており一人ではない事にホッとするが、できれば僕が付き添いたかったと思う。
僕の部屋にも年配のΩのメイドが控えていたが、僕が目覚めると両親へ報告するために部屋を出て行った。
未来は近くにいないとは言え、同じ建物の中にはいるのだから我慢しなくては。
これ以上の我儘はダメだ。
未来の姿を見れない事に不安を覚えるが、嗅ぎ慣れた自分の匂いと今も僅かに服に残る未来の匂い。スンスンと鼻を鳴らし、自分のベッドに横になり少しだけ落ち着く。
あの時僕はいつも僅かにしか香ってこなかった未来のライムのような爽やかな香りを沢山嗅いだ。そしたら身体が熱くなって未来の事しか考えられなくなった。
コロンか何かだと思っていたけど、あれはフェロモンだった?
未来からフェロモンが異常に出たのはあのΩのせい?
だとしたら未来はβじゃなくて―――α…?
そして僕は……未来につられて―――?
――――え?じゃあ……。
今まで頑なに見る事をしなかった自分の項を震える手で手鏡を持ち姿見と合わせ見てみる。
そこにはしっかりと噛み跡が…番の印が刻まれていた。
――――僕は―――Ω…?
その途端雷に打たれたかのように流れ込んでくるあの日の記憶。
僕が未来を誘惑して項を噛ませた記憶。
勿論わざとなんかじゃなかった。
自分のことはαだと思っていたし、あの時何が起こったのか分かっていなかった。
だけどどんなに言い訳をしてみても事実は変わらない。
僕はΩのフェロモンを使って未来を僕に縛り付けてしまったんだ…。
あんなに嫌悪していたΩの武器を使って未来を――――。
何がヒートを武器のように使うΩを軽蔑する、だ。
沢山のΩじゃなくて、僕自身に向けられるべき言葉だったのに。
僕が一番卑劣なΩじゃないか……。
番になってしまったらΩはαに捨てられたら生きてはいけない。
優しい未来は不本意な番であっても友人として傍にいてくれたんだ。僕が狂ってしまわないように…。
じゃなければ僕たちは番だって教えてくれただろうから……。
長年疑問だった答えが分かったのに、現実は思っていた以上に残酷で、それ以上何も考えられなくなりただ涙がとめどなく流れ続けた。
5
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる