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一年生
寮決め
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大広間には四つの動物が描かれている紋章が浮かんでいる。
先生が枝をつくと、大きな魔法陣が浮かび上がった。
「全員この魔法陣の中に入れ。ーーよし、今から寮を振り分けるから、お前たち目をつぶっていろ。ひとりでも開けたら組み分けが上手くできないからな」
それでは。と先生が枝をもう一度ついた。
魔法陣が光る。
「目をつぶれ」
先生の一言にみんなが目をつむる気配がする。
私はなんだか怖くて、リリーちゃんと手を握った。
「それぞれを、あるべきところへ導きたまえ。あまねく神のご意志には、誰もが受け入れるだろう」
先生の低い声が聞こえる。身体が風をきる感覚がした。重力に逆らっているような、なんとも言いがたい気持ち悪い感じだ。
「もう目を開けてもいいぞ」
私はゆっくり目を開けた。
すると、私の腕に緑のハトがとまっていた。体毛が緑というわけじゃなくて、粒子みたいな小さな光がハトの形になっているのだ。
「え、すご・・・・・・」
こんなことになっているのは私だけじゃなく、他の子も、
「見て、チョウが飛んでる!」
「俺のところに鹿が来たぞ!」
と、驚きを隠せない声で騒いでいた。
「みんな落ち着け、これがお前たちの入る寮だ」
これが寮? どういうこと?
「それをシンボルとした寮がある。そこでお前たちは生活するんだ。どの動物がどの寮なのか、今から言うぞ。よく聞いとけ。
紫のチョウはシェーン。
青い鹿はレゾン。
緑のハトはフリーデン。
黄色のリスはオネストオネストだ。
みんな自分の寮がどれか分かったな?」
リリーちゃんの方を見ると、彼女も緑のハトだった。つまり同じ寮。
「えっウソ同じ寮!?」
「ホントだ~! すごい嬉しい!」
二人で手を取ってはしゃぐ。
仲良くなれたこと一緒に過ごせるって、なにその奇跡。神様ありがとう。
「では本日はこれで終了。それぞれ寮の部屋に荷物運べよ」
「先生! 寮にはどうやって行ったらいいんですか?」
「動物たちが教えてくれるさ」
それじゃ、また明日教室で、と先生は去っていった。
なんて身勝手な先生だろう。嫌いじゃない。
いつ動くか待っていたら、ハトが私の腕から飛び立ちパタパタと移動した。
動きがゆっくりだから歩いてもついていける。
リリーちゃんと並びながら私たちはハトの後ろを歩いた。
○○○○○○○○○○
「ここ、かなぁ?」
ハトが止まって消えていってしまったので、ここが目的地なのだろうか。
校舎から出てすぐ右手にある、深緑色の建物。
緑が豊かで、花が美しく咲き誇っている。噴水なんかもあって、ここが寮とは思えない。
入っていいのか分からない。どうしよう。
「ねぇリリーちゃん。これって入っていいのかな」
「ハト消えちゃったもんね。だけど消えたってことはここってことでしょ、入っていいんじゃない?」
「えっ」
勇ましい。
「よし、まず私が入ってみるよ」
「あ、ちょっとリリーちゃ~ん!」
おいてかないでー!
随分行動力がある子と仲良くなったものだ。
私は苦笑いを浮かべつつ、リリーちゃんの背中を追った。
「うわあ、すごい・・・・・」
「外も綺麗だけど、中も綺麗・・・・・・」
暖かい光が部屋を照らしている。
木材でできたモダンな壁が、どこか落ち着きをあたえた。
「あれ、新入生?」
「うわ!!」
「ぎゃあっ!」
後ろから肩を叩かれて、リリーちゃんと悲鳴をあげる。
ビックリしたー。音しなかったんだけど。
「そうですけど・・・・・・」
度胸あるリリーちゃん。なんて頼もしいんだ。
「そうなんだー。私もフリーデンの寮生なの、これからよろしくね」
なんと、同じ寮の先輩だったのか。
「はい、よろしくお願いします」
ペコリと二人で頭を下げる。
「あ、もしかして寮の部屋分かんない?案内しよっか?」
なんていい先輩なんだ。一生ついていこう。
先程の不信感はどこへやら。私はお姉さんをキラキラした目で見つめた。
「私も入学したばっかのときそんなんだったわー。ハトがさ、寮ついた途端に消えるんだよ!? 寮の“部屋”まで案内しろやー! ってカンジ」
よくしゃべる先輩だな。
「二人の名前ってなに?」
「リリーとリナです」
心の中ではいろいろ思うけど口には出せず、先輩との会話はリリーちゃんが全部やってくれた。ありがとう。
「そうなんだ~いい名前~」
「先輩の名前はなんて言うんですか?」
「私? 私はエレナ・ロクサーネ」
「先輩も綺麗な名前ですね」
「ほんと? ありがと~」
キレイな茶髪を耳にかけるエレナ先輩。名前も綺麗だし外見も綺麗。
「あ、ここだ。ドアの横に名前書いてるでしょ? 四人でひとつの部屋を使うのよ」
先輩より小さい背で上を見ると、表札みたいに銀色の文字で書いてある。
『リリー・メアリー・ラズベリー
フランメ・アリア・リュミヌー
リナ・ベル・セレネーレ
リンダ・プロメッサ・クオーレ』
リリーちゃんと一緒の部屋だ。よかったぁ~。
「お、リナちゃんとリリーちゃん一緒だね」
エレナ先輩がニッコリ微笑む。
「はい! ありがとうございましーー」
「エレナ! やっと見つけた!」
ん?なんか聞こえたような。
「エレノア? やっほー・・・・・・」
「じゃない! もう、寮長の会議始まってるんだけど!? 遅刻じゃない!」
なんか二人の会話が始まっている。
「あはは、ごめーん。ちょっと新入生を案内して・・・・・・」
「そうなの? あほんとだいる。フリーデンにようこそ~。でも今時間ないからまた会ったときに自己紹介するねー!」
ドタドタとエレナ先輩の背中を押しながら消えるもうひとりの先輩。
「・・・・・・なんか、嵐だね」
「・・・・・・ほんと、嵐だね」
なかなか面白い先輩が揃っている。
とりあえず部屋の中に入り、荷物を運ぶためもう一度外に出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
寮決めですね~。魔法陣は生徒の魔力を支障が出ないぐらい少量を吸収しているんですよ。エレベーターに乗ってるような感覚です。
あと先輩たちもでましたね!二人だけだけど。
彼女たちは親友です。エレナが平民でエレノアが貴族。
他にも同じ部屋の子も名前だけでました。次回から登場します。
先生が枝をつくと、大きな魔法陣が浮かび上がった。
「全員この魔法陣の中に入れ。ーーよし、今から寮を振り分けるから、お前たち目をつぶっていろ。ひとりでも開けたら組み分けが上手くできないからな」
それでは。と先生が枝をもう一度ついた。
魔法陣が光る。
「目をつぶれ」
先生の一言にみんなが目をつむる気配がする。
私はなんだか怖くて、リリーちゃんと手を握った。
「それぞれを、あるべきところへ導きたまえ。あまねく神のご意志には、誰もが受け入れるだろう」
先生の低い声が聞こえる。身体が風をきる感覚がした。重力に逆らっているような、なんとも言いがたい気持ち悪い感じだ。
「もう目を開けてもいいぞ」
私はゆっくり目を開けた。
すると、私の腕に緑のハトがとまっていた。体毛が緑というわけじゃなくて、粒子みたいな小さな光がハトの形になっているのだ。
「え、すご・・・・・・」
こんなことになっているのは私だけじゃなく、他の子も、
「見て、チョウが飛んでる!」
「俺のところに鹿が来たぞ!」
と、驚きを隠せない声で騒いでいた。
「みんな落ち着け、これがお前たちの入る寮だ」
これが寮? どういうこと?
「それをシンボルとした寮がある。そこでお前たちは生活するんだ。どの動物がどの寮なのか、今から言うぞ。よく聞いとけ。
紫のチョウはシェーン。
青い鹿はレゾン。
緑のハトはフリーデン。
黄色のリスはオネストオネストだ。
みんな自分の寮がどれか分かったな?」
リリーちゃんの方を見ると、彼女も緑のハトだった。つまり同じ寮。
「えっウソ同じ寮!?」
「ホントだ~! すごい嬉しい!」
二人で手を取ってはしゃぐ。
仲良くなれたこと一緒に過ごせるって、なにその奇跡。神様ありがとう。
「では本日はこれで終了。それぞれ寮の部屋に荷物運べよ」
「先生! 寮にはどうやって行ったらいいんですか?」
「動物たちが教えてくれるさ」
それじゃ、また明日教室で、と先生は去っていった。
なんて身勝手な先生だろう。嫌いじゃない。
いつ動くか待っていたら、ハトが私の腕から飛び立ちパタパタと移動した。
動きがゆっくりだから歩いてもついていける。
リリーちゃんと並びながら私たちはハトの後ろを歩いた。
○○○○○○○○○○
「ここ、かなぁ?」
ハトが止まって消えていってしまったので、ここが目的地なのだろうか。
校舎から出てすぐ右手にある、深緑色の建物。
緑が豊かで、花が美しく咲き誇っている。噴水なんかもあって、ここが寮とは思えない。
入っていいのか分からない。どうしよう。
「ねぇリリーちゃん。これって入っていいのかな」
「ハト消えちゃったもんね。だけど消えたってことはここってことでしょ、入っていいんじゃない?」
「えっ」
勇ましい。
「よし、まず私が入ってみるよ」
「あ、ちょっとリリーちゃ~ん!」
おいてかないでー!
随分行動力がある子と仲良くなったものだ。
私は苦笑いを浮かべつつ、リリーちゃんの背中を追った。
「うわあ、すごい・・・・・」
「外も綺麗だけど、中も綺麗・・・・・・」
暖かい光が部屋を照らしている。
木材でできたモダンな壁が、どこか落ち着きをあたえた。
「あれ、新入生?」
「うわ!!」
「ぎゃあっ!」
後ろから肩を叩かれて、リリーちゃんと悲鳴をあげる。
ビックリしたー。音しなかったんだけど。
「そうですけど・・・・・・」
度胸あるリリーちゃん。なんて頼もしいんだ。
「そうなんだー。私もフリーデンの寮生なの、これからよろしくね」
なんと、同じ寮の先輩だったのか。
「はい、よろしくお願いします」
ペコリと二人で頭を下げる。
「あ、もしかして寮の部屋分かんない?案内しよっか?」
なんていい先輩なんだ。一生ついていこう。
先程の不信感はどこへやら。私はお姉さんをキラキラした目で見つめた。
「私も入学したばっかのときそんなんだったわー。ハトがさ、寮ついた途端に消えるんだよ!? 寮の“部屋”まで案内しろやー! ってカンジ」
よくしゃべる先輩だな。
「二人の名前ってなに?」
「リリーとリナです」
心の中ではいろいろ思うけど口には出せず、先輩との会話はリリーちゃんが全部やってくれた。ありがとう。
「そうなんだ~いい名前~」
「先輩の名前はなんて言うんですか?」
「私? 私はエレナ・ロクサーネ」
「先輩も綺麗な名前ですね」
「ほんと? ありがと~」
キレイな茶髪を耳にかけるエレナ先輩。名前も綺麗だし外見も綺麗。
「あ、ここだ。ドアの横に名前書いてるでしょ? 四人でひとつの部屋を使うのよ」
先輩より小さい背で上を見ると、表札みたいに銀色の文字で書いてある。
『リリー・メアリー・ラズベリー
フランメ・アリア・リュミヌー
リナ・ベル・セレネーレ
リンダ・プロメッサ・クオーレ』
リリーちゃんと一緒の部屋だ。よかったぁ~。
「お、リナちゃんとリリーちゃん一緒だね」
エレナ先輩がニッコリ微笑む。
「はい! ありがとうございましーー」
「エレナ! やっと見つけた!」
ん?なんか聞こえたような。
「エレノア? やっほー・・・・・・」
「じゃない! もう、寮長の会議始まってるんだけど!? 遅刻じゃない!」
なんか二人の会話が始まっている。
「あはは、ごめーん。ちょっと新入生を案内して・・・・・・」
「そうなの? あほんとだいる。フリーデンにようこそ~。でも今時間ないからまた会ったときに自己紹介するねー!」
ドタドタとエレナ先輩の背中を押しながら消えるもうひとりの先輩。
「・・・・・・なんか、嵐だね」
「・・・・・・ほんと、嵐だね」
なかなか面白い先輩が揃っている。
とりあえず部屋の中に入り、荷物を運ぶためもう一度外に出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
寮決めですね~。魔法陣は生徒の魔力を支障が出ないぐらい少量を吸収しているんですよ。エレベーターに乗ってるような感覚です。
あと先輩たちもでましたね!二人だけだけど。
彼女たちは親友です。エレナが平民でエレノアが貴族。
他にも同じ部屋の子も名前だけでました。次回から登場します。
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