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第76話 暴かれた秘密です
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マユミ達が練習をしている頃・・・
自室のベッドの上で、ミズキはゆっくりと目を覚ました。
右手の指はまだひりひりと痛みを訴えている、まだペンを握るのは厳しそうだ。
しばらく部屋を見回し状況を確認した彼女は、一人呟いた。
「・・・おなかすいた」
・・・思えば昨夜から何も口にしていない。
残念ながら部屋の中には食べ物は用意されていないようだ。
なんとなくミズキはお腹に手を当てた・・・我慢出来ない程の空腹感ではない。
このまま夕食の時間まで待っていても空腹で倒れるという事はなさそうだ。
(まぁサバイバル生活と比べれば、たいしたことないわね)
とはいえ、餌が与えられるのをじっと待っている雛鳥になった覚えもない。
探索がてら食べ物を求めて城の中を彷徨い歩く事にしたミズキだった。
(そういえばあの英雄様はどこへいったのかしら・・・)
城内はとても静かなものだった。
何部屋か覗いて回ったが、マユミもミーアも見当たらない。
政務が行われている類の部屋もあったが、ミズキの頭では何を話しているのか理解出来そうになかった。
(もっとわかる言葉で話しなさいよ、物語の足しにもならないわ)
とりあえず魔族達に関する話題はないようなので安心はしたが、予算やら経済の話をされても困るのだ。
仕方がないのでミズキは厨房へ向かう事にする。
まずはこの空腹を満たすのだ。
「どうしたんだいお嬢ちゃん」
「お腹がすいたらここで食べ物を貰いなさいってマユミ様が」
「なんだって、しかたないな・・・」
さらりと嘘をつくミズキだが、マユミの名前は効果抜群だ。
厨房で夕食の仕込みの最中だった料理人は彼女の為にパンを用意してくれた。
「ほら、熱いから気を付けるんだぞ」
「ん、ありがとう・・・あちあち」
焼きたてのようでまだ熱いパンを、あちあち言いながら受け取る。
ふーふーしながらパンにかじりつく・・・外はサクサク、中はふんわり。
(やっぱりおいしいわ・・・)
パンをかじりながら城内の探索を続ける。
秘密の隠し通路の一つもあるに違いない、そう思ってあちこちをぺたぺたと触りながら・・・
しかし・・・
(この私が見つけられないなんて、よっぽど巧妙に隠したわね、さすが隠し通路)
見回りの兵士にやさしく注意されながら、城内を探し回ったが・・・
それらしきものは見つからなかった。
「むー、つかれた・・・そうだわ、この城には隠し通路なんてないに違いない」
無理やりそう結論付けると、ミズキは手頃な大きさの銅像を見つけて、椅子代わりに腰を下ろす。
すると・・・
ガコンッ
「へ・・・まさか・・・」
座った銅像が抵抗なく沈み込む妙な感触・・・嫌な予感がした時にはもう・・・
「わ、ひょぁあああああああああああ」
悲鳴と共にミズキの身体は、滑り台のような隠し通路の奥へと吸い込まれていった。
「あああぁぁぁ・・・ぎゃふん」
いったいどれだけ滑っていたのか・・・やがて滑り台は終わりを迎え、ミズキは部屋に放り出された。
地下室なのだろうか、その部屋には窓のようなものはなく光も差し込まない・・・真っ暗だ。
「いたたた・・・いったいどこに出たのよ・・・」
暗闇に目が慣れるのを待つが一向に何も見えないままだ、やはり地下室なのだろう。
かび臭い匂いに顔をしかめながら、ミズキは手探りで辺りを探った。
(うぅ・・・変な生き物とかいませんように・・・)
幸いなことにその手が生き物に触れるような事はなかった・・・他の何かに触れる事もなかったが。
その手で触れられたのは床石の感触のみ。
前後左右、どの方向に何があるのかもさっぱりわからない。
「ど、どうしよう・・・誰か、誰かいないの?!」
とりあえず助けを求めて声を出してみる・・・反応はなかった。
「そ、そだ・・・今こそ『力』を使う時、イビルレイ!」
魔王の力を解き放ち、闇の光線を放つ・・・『闇の』光線なので、何も見えない事に変わりはなかった。
どのあたりで着弾したのかもわからない。
全力で撃って無理やり地上までの穴を開ける事も考えたが、それでは自分が魔王なのがバレてしまう。
最悪の場合、消耗した状態でマユミ達との戦いに突入してしまうかもしれない。
「う、打つ手なしだわ・・・」
ミズキは絶望してその場にへたり込む・・・どこまでも真っ暗な空間が彼女の不安を煽った。
・・・暗闇は彼女が転生する前、現実世界で死んだ時の事を思い出させるものがある。
その恐怖からか、ミズキは足がすくんで一歩も動けなくなっていた。
「ぐすっ、誰か・・・助けて・・・助けてよ・・・」
いったいどれだけの時間が経過しただろうか・・・
ミズキはもう泣く事も止めて・・・今はただ身体を丸めて闇の中で震えていた。
心なしか息苦しくなってきた気もする、いつかは限界が来てしまうのだろう。
(私・・・死んじゃうのかな・・・魔王のくせにこんな所で・・・)
震える手を頭上に向ける・・・どうせ死ぬのなら、こんな場所よりも地上で、戦って死のう。
ミズキは意を決して『力』を集中する・・・もし地上まで届かなかったらお話にならない。
(地上までよじ登っていく事を考えて、斜めに低い角度で撃たなきゃ・・・)
妙な所で冷静だった。
人間一人分の太さで、数百メートルの地面を貫通出来る威力で・・・
ミズキはしっかり『力』を調整して、イビルレイを放・・・その時。
ゴゴゴゴ・・・
何か重い物が動く音・・・そして、かすかな光がミズキの元にもたらされる。
(え・・・これは、ひょっとして・・・)
用意していた『力』を霧散させ、ミズキは様子を伺う事にした。
「よいしょ、よいしょ・・・ううぅ、お、重い・・・」
どこかで聞いたことがある声がする。
重い扉が少しずつ・・・少しずつ開いていき・・・次第に差し込む光は明るさを増していった。
ミズキはようやく自分のいる場所を認識する。石造りの倉庫のようだ。
大きな木製の箱のような物と、壁に穿たれた穴・・・イビルレイによるものだろう・・・
「見つけたよ、ミズキちゃん」
悪戦苦闘の末に、なんとか扉を一人分空ける事が出来たようだ。
その少女・・・マユミがミズキの元へと歩み寄・・・
「うわああああああ!」
「きゃっ、ミズキちゃん?!」
「怖かった、怖かったよぉ・・・」
ミズキの身体は、マユミに飛び着いていた。
魔王だとか、英雄だとか、そんなもの、今はどうでもよかった。
自分は助かったのだという安心感で胸がいっぱいで・・・ミズキは何も考えられなくなっていた。
「はいはい、大丈夫だからね・・・」
「ぐすっ・・・でもどうしてここが・・・」
「前にレマーナ伯爵の・・・こことは別のお城で地下室を使わせてもらったことがあってね」
練習を終えて帰ってきたマユミ達は、ミズキがいなくなっている事に気付き、手分けして探していた。
見回りの兵士からミズキが城の中をあちこち歩き回っていたと聞いたマユミは地下室の可能性に思い至ったのだ。
「ありがとう・・・私、もうここで死んじゃうのかなって・・・ぐすっ」
「うんうん、もう大丈夫だからね」
マユミはミズキが泣きじゃくるのに任せた。
幸いなことに今この場には自分しかいない、彼女が泣き止むまで抱きとめ続けた。
「・・・」
「落ち着いた・・・かな?」
「はい・・・ごめんなさい、私ったらとんだご迷惑を・・・」
「気にしないで、それよりダイアナ先生はどうしてこんな所にいたのかな?」
「あ、ええと・・・お城の中が気になって色々見て回ってたら、変な仕掛けを動かしてしまって・・・」
「そうなんだ・・・ダイアナ先生は少し不用心過ぎないかな?」
「いや、でもまさかあんな所に仕掛けがあるなんて思ってもみな・・・くて・・・」
(あれ・・・今・・・)
ミズキはつい聞き流してしまっていた。
今、マユミが彼女の事を何と呼んでいたか・・・
「それで、ダイアナ先生、はなんで黙ってたのかな?」
「あ・・・う・・・」
「その反応・・・やっぱりそうなんですね、水樹ダイアナ先生」
マユミは確信に満ちた顔でミズキ・・・ダイアナ先生を真っ直ぐ見つめた。
自室のベッドの上で、ミズキはゆっくりと目を覚ました。
右手の指はまだひりひりと痛みを訴えている、まだペンを握るのは厳しそうだ。
しばらく部屋を見回し状況を確認した彼女は、一人呟いた。
「・・・おなかすいた」
・・・思えば昨夜から何も口にしていない。
残念ながら部屋の中には食べ物は用意されていないようだ。
なんとなくミズキはお腹に手を当てた・・・我慢出来ない程の空腹感ではない。
このまま夕食の時間まで待っていても空腹で倒れるという事はなさそうだ。
(まぁサバイバル生活と比べれば、たいしたことないわね)
とはいえ、餌が与えられるのをじっと待っている雛鳥になった覚えもない。
探索がてら食べ物を求めて城の中を彷徨い歩く事にしたミズキだった。
(そういえばあの英雄様はどこへいったのかしら・・・)
城内はとても静かなものだった。
何部屋か覗いて回ったが、マユミもミーアも見当たらない。
政務が行われている類の部屋もあったが、ミズキの頭では何を話しているのか理解出来そうになかった。
(もっとわかる言葉で話しなさいよ、物語の足しにもならないわ)
とりあえず魔族達に関する話題はないようなので安心はしたが、予算やら経済の話をされても困るのだ。
仕方がないのでミズキは厨房へ向かう事にする。
まずはこの空腹を満たすのだ。
「どうしたんだいお嬢ちゃん」
「お腹がすいたらここで食べ物を貰いなさいってマユミ様が」
「なんだって、しかたないな・・・」
さらりと嘘をつくミズキだが、マユミの名前は効果抜群だ。
厨房で夕食の仕込みの最中だった料理人は彼女の為にパンを用意してくれた。
「ほら、熱いから気を付けるんだぞ」
「ん、ありがとう・・・あちあち」
焼きたてのようでまだ熱いパンを、あちあち言いながら受け取る。
ふーふーしながらパンにかじりつく・・・外はサクサク、中はふんわり。
(やっぱりおいしいわ・・・)
パンをかじりながら城内の探索を続ける。
秘密の隠し通路の一つもあるに違いない、そう思ってあちこちをぺたぺたと触りながら・・・
しかし・・・
(この私が見つけられないなんて、よっぽど巧妙に隠したわね、さすが隠し通路)
見回りの兵士にやさしく注意されながら、城内を探し回ったが・・・
それらしきものは見つからなかった。
「むー、つかれた・・・そうだわ、この城には隠し通路なんてないに違いない」
無理やりそう結論付けると、ミズキは手頃な大きさの銅像を見つけて、椅子代わりに腰を下ろす。
すると・・・
ガコンッ
「へ・・・まさか・・・」
座った銅像が抵抗なく沈み込む妙な感触・・・嫌な予感がした時にはもう・・・
「わ、ひょぁあああああああああああ」
悲鳴と共にミズキの身体は、滑り台のような隠し通路の奥へと吸い込まれていった。
「あああぁぁぁ・・・ぎゃふん」
いったいどれだけ滑っていたのか・・・やがて滑り台は終わりを迎え、ミズキは部屋に放り出された。
地下室なのだろうか、その部屋には窓のようなものはなく光も差し込まない・・・真っ暗だ。
「いたたた・・・いったいどこに出たのよ・・・」
暗闇に目が慣れるのを待つが一向に何も見えないままだ、やはり地下室なのだろう。
かび臭い匂いに顔をしかめながら、ミズキは手探りで辺りを探った。
(うぅ・・・変な生き物とかいませんように・・・)
幸いなことにその手が生き物に触れるような事はなかった・・・他の何かに触れる事もなかったが。
その手で触れられたのは床石の感触のみ。
前後左右、どの方向に何があるのかもさっぱりわからない。
「ど、どうしよう・・・誰か、誰かいないの?!」
とりあえず助けを求めて声を出してみる・・・反応はなかった。
「そ、そだ・・・今こそ『力』を使う時、イビルレイ!」
魔王の力を解き放ち、闇の光線を放つ・・・『闇の』光線なので、何も見えない事に変わりはなかった。
どのあたりで着弾したのかもわからない。
全力で撃って無理やり地上までの穴を開ける事も考えたが、それでは自分が魔王なのがバレてしまう。
最悪の場合、消耗した状態でマユミ達との戦いに突入してしまうかもしれない。
「う、打つ手なしだわ・・・」
ミズキは絶望してその場にへたり込む・・・どこまでも真っ暗な空間が彼女の不安を煽った。
・・・暗闇は彼女が転生する前、現実世界で死んだ時の事を思い出させるものがある。
その恐怖からか、ミズキは足がすくんで一歩も動けなくなっていた。
「ぐすっ、誰か・・・助けて・・・助けてよ・・・」
いったいどれだけの時間が経過しただろうか・・・
ミズキはもう泣く事も止めて・・・今はただ身体を丸めて闇の中で震えていた。
心なしか息苦しくなってきた気もする、いつかは限界が来てしまうのだろう。
(私・・・死んじゃうのかな・・・魔王のくせにこんな所で・・・)
震える手を頭上に向ける・・・どうせ死ぬのなら、こんな場所よりも地上で、戦って死のう。
ミズキは意を決して『力』を集中する・・・もし地上まで届かなかったらお話にならない。
(地上までよじ登っていく事を考えて、斜めに低い角度で撃たなきゃ・・・)
妙な所で冷静だった。
人間一人分の太さで、数百メートルの地面を貫通出来る威力で・・・
ミズキはしっかり『力』を調整して、イビルレイを放・・・その時。
ゴゴゴゴ・・・
何か重い物が動く音・・・そして、かすかな光がミズキの元にもたらされる。
(え・・・これは、ひょっとして・・・)
用意していた『力』を霧散させ、ミズキは様子を伺う事にした。
「よいしょ、よいしょ・・・ううぅ、お、重い・・・」
どこかで聞いたことがある声がする。
重い扉が少しずつ・・・少しずつ開いていき・・・次第に差し込む光は明るさを増していった。
ミズキはようやく自分のいる場所を認識する。石造りの倉庫のようだ。
大きな木製の箱のような物と、壁に穿たれた穴・・・イビルレイによるものだろう・・・
「見つけたよ、ミズキちゃん」
悪戦苦闘の末に、なんとか扉を一人分空ける事が出来たようだ。
その少女・・・マユミがミズキの元へと歩み寄・・・
「うわああああああ!」
「きゃっ、ミズキちゃん?!」
「怖かった、怖かったよぉ・・・」
ミズキの身体は、マユミに飛び着いていた。
魔王だとか、英雄だとか、そんなもの、今はどうでもよかった。
自分は助かったのだという安心感で胸がいっぱいで・・・ミズキは何も考えられなくなっていた。
「はいはい、大丈夫だからね・・・」
「ぐすっ・・・でもどうしてここが・・・」
「前にレマーナ伯爵の・・・こことは別のお城で地下室を使わせてもらったことがあってね」
練習を終えて帰ってきたマユミ達は、ミズキがいなくなっている事に気付き、手分けして探していた。
見回りの兵士からミズキが城の中をあちこち歩き回っていたと聞いたマユミは地下室の可能性に思い至ったのだ。
「ありがとう・・・私、もうここで死んじゃうのかなって・・・ぐすっ」
「うんうん、もう大丈夫だからね」
マユミはミズキが泣きじゃくるのに任せた。
幸いなことに今この場には自分しかいない、彼女が泣き止むまで抱きとめ続けた。
「・・・」
「落ち着いた・・・かな?」
「はい・・・ごめんなさい、私ったらとんだご迷惑を・・・」
「気にしないで、それよりダイアナ先生はどうしてこんな所にいたのかな?」
「あ、ええと・・・お城の中が気になって色々見て回ってたら、変な仕掛けを動かしてしまって・・・」
「そうなんだ・・・ダイアナ先生は少し不用心過ぎないかな?」
「いや、でもまさかあんな所に仕掛けがあるなんて思ってもみな・・・くて・・・」
(あれ・・・今・・・)
ミズキはつい聞き流してしまっていた。
今、マユミが彼女の事を何と呼んでいたか・・・
「それで、ダイアナ先生、はなんで黙ってたのかな?」
「あ・・・う・・・」
「その反応・・・やっぱりそうなんですね、水樹ダイアナ先生」
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