英雄じゃなくて声優です!

榛名

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第82話 アニメの中の答えです

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「嘘・・・だよね?ミズキちゃん・・・」

口ではそう尋ねつつも、マユミはもう理解していた。
嘘ではない、あんなに苦しそうに、絞り出すように発した言葉が嘘なわけがない。
それを裏付けるように、ミズキが『力』を使って見せる。

「我が手に在りしは闇夜の刃・・・イビルソード!」

闇のビームであるイビルレイを固定して剣にする。
ロボットアニメでよくあるやつをミズキが再現した技だ。
ちなみに台詞は各技ごとに用意してあるのだが、実際に言えたのは初めてである。

「これでわかってもらえたかしら?私が本物の魔王だって」
「ミズキちゃん・・・それで私を殺すつもり・・・なの?」

戦闘能力皆無のマユミだ、ミズキがその気になれば簡単に殺されてしまうだろう。
マユミにはもうどうしようもない、出来るのは死の恐怖と戦いながら会話を続けることくらいだ。

「マユミ様、ここでの生活は楽しかったわ・・・自分が魔王であることを忘れる程に・・・」
「私もだよミズキちゃん、それともダイアナ先生?どっちにしても友達だって私は思ってる!」

ここで正体を明かした以上、マユミを生かすつもりはないのだろう。
それでもマユミは諦める事など出来ない。
ここで一緒に過ごした時間は無意味ではないはずだ・・・マユミはそう信じている。

「ありがとう・・・あなた達二人があの台本を演じる所も見たかったわ・・・」
「見れるよ!だからもうこんなことはやめよう!きっとみんなだって・・・」

「・・・ごめんなさい」

なおも説得を続けようとするマユミに、無情の言葉が突き刺さる。
話はもう終わりだとばかりに・・・自分はなんと無力な事か。
おそらくはこの後、闇の剣が自分を貫くのだろう。

(あんまり痛くないと良いな・・・)

どうせ一度は死んだ命、だからだろうか・・・不思議と恐怖心はなくなっていた。
注射を刺される前のような気分で、マユミは目を閉じてその時を待った。

・・・

・・・・・・


(あれ・・・)

なかなかこない。

死の瞬間に時間がゆっくり流れるように感じるというやつだろうか?
今目を開けるとスローモーションで動く世界がそこにあるのだろうか?

おそるおそる・・・マユミは目を開けた。


「・・・」


その光景にマユミは我が目を疑った。

月明かりに照らされた劇場のステージ・・・その中央・・・マユミの目の前で・・・

第七の魔王、ミズキは・・・土下座をしていた。

「へ・・・」
「ごめんなさあああああい!全て私が悪いんですうううう!」

地面に頭をこすりつけながらミズキが叫ぶ。

「全部私が指示したんです!あいつらは何も悪くないんです!どうか、どうか討伐を止めてください!」
「や、ちょ、ちょっとミズキちゃん?!」
「魔王討伐ならどうかこの首で、この首でええええ!」
「おちついてってば、ミズキちゃん、はやまらないで!」

闇の剣を自分に向けて、自害を計りだしたミズキを慌てて止める。

「だって、だってこのままじゃ私のせいであいつらが・・・えぐ・・・」
「だからってこんな事してもどうにもならないよ、落ち着こう、とりあえずその剣しまって」

さすがにビームで出来ている剣には触れる事が出来ないので、本人にしまってもらうしかない。
なんとか彼女をなだめて闇の剣をしまってもらう。

「えぐ・・・えぐ・・・ごめんなさい・・・」
「はいはい、大丈夫だから・・・」

泣きじゃくっているミズキ・・・こうしていると見た目通りの子供のようだ。
そういえば前に迷子になった時もこんな感じだったような・・・
ひょっとして、身体に精神が影響されているのだろうか?

「大丈夫、みんなに話せばきっとわかってもらえるから・・・」
「そう・・・かな・・・」

どうやらやっと落ち着いてきたらしい。
とりあえず事情を話して討伐を中止してもらう・・・そう考えたマユミだが・・・

「それはやめた方が良いわ」
「ナーデ?!ミーアちゃんも・・・どうしてここに・・・」
「マユミがなかなか戻ってこないから・・・」

いったいいつからそこにいたのか・・・エレスナーデとミーアが物陰から姿を現した。
マユミが絡むと行動力が増す二人・・・おとなしく部屋で待っているわけがないのだ。

「魔王討伐は辺境伯の悲願みたいなものだから、謝ったくらいでは許されないと思うわ」
「そんな・・・」
「他の魔族に関しても、出来ればこの機会に滅ぼしたいと思っているでしょうね」

特にこの大陸がマユミ帝国に統一されている今は、魔族を滅ぼすまたとない機会だろう。
もはや魔王一人倒せば終わる問題ではないのだ。

「あいつらは本当に何も・・・馬鹿だけどいいやつらなのよ・・・」
「それだけ魔族と人間の確執は深いということよ・・・そう簡単には・・・」

エレスナーデ本人も、今の今まで魔族というものを邪悪な存在だと思っていたのだ。
事情を知った今でも簡単には受け入れがたい事実だ。
まして多くの人々に共通した認識を変える事など・・・

「改心しましたって言って皆の為に働くとかは・・・」
「突然そんな都合のいい話しても、誰も信じないわよ・・・裏で何か企んでるって思われるわ」

現実はアニメのように都合よくはない・・・わかっていてもそれを願ってしまうマユミだった。

「やっぱりアニメみたいにはいかないか・・・」
「アニメ?」
「アニメっていうのはこう・・・絵が動いて・・・それに私達が声を・・・」
「絵が動く?」
「まぁ要は異世界の物語の一種よ、それこそ悪者が都合よく改心する話とかあってね・・・」

見知らぬ単語に反応したミーアにマユミが説明しようとするが・・・いかんせん伝えにくい。
見かねたミズキがどうせこっちにはないのだからと、絵だのの説明を省いて簡単に説明をした。

「うぅ・・・ここはミズキちゃんに任せた方が良さそう・・・」
「さすがは作家ね、あの台本も面白かったし・・・」

そういえば『ロリ婚』も比較的若い年齢層に受けが良かった。
彼女はわかりやすく伝える能力に長けているのかもしれない。

見ると、好奇心を刺激されたミーアがミズキに質問攻めをしていた。

「その話だと悪者はどうやって改心するの?疑われないの?」

ミズキは自身も好きだった『女の子と大きなお友達に人気のアニメ』を思い浮かべながら答えた。

「そりゃ、聖なる力とか、愛の力とか不思議な力で悪いのが浄化されるからよ
 主人公はそういう特別な力を与えられた選ばれし戦士みたいな・・・あ・・・」

そう言いながらミズキが目を見開く。
そういえば、似たようなのを最近見たような・・・それもすぐ近くで・・・

「ミズキ・・・私、それ知ってる」
「奇遇ね、私も知ってるわそれ」

「え・・・二人ともどうしたの?」

そして・・・二人は同時にマユミの方を向いたのだった。
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