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第37話 作戦開始です
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『海猫亭』にてマユミが手酷い敗北を味わったその翌朝・・・
マユミは朝早くに目を覚ました・・・ふかふかベッドの誘惑を打ち破ったのだ。
隣でまだ眠っているエレスナーデを起こさぬように、そっと起き上がる。
(そういえば、ナーデより先に起きたのは初めてだっけ・・・)
せっかくだからとエレスナーデの寝顔を観察してみる。
普段は大人びた所のあるエレスナーデだが、その寝顔は年相応の・・・可愛らしい少女だ。
その手でふとんをぎゅっと握りしめているあたりは寂しがりな面が出ているのだろうか。
(私はナーデを支えてあげれているのかな・・・)
見た目はともかく、中身はずいぶんと年上のマユミなのだが、大人として彼女に何かしてあげれているのだろうか・・・逆にいつも助けられてばかりな気がして情けなかった。
(はやく一人前にならないとな・・・)
その為に今は目の前の事に集中しなければ・・・
伯爵が用意してくれた練習用の地下室の鍵を手に、マユミは部屋を後にした。
一人で地下室を目指すマユミだがやはりまだ日が昇り切らない時間、そして古い城なだけあって独特の雰囲気を醸し出していた・・・要は怖いのである。
「うわ・・・幽霊とか出てきそう・・・」
元々は霊感などなく心霊現象の類とは無縁だったマユミだが、ここは魔法が存在するファンタジー世界だ・・・幽霊だっていてもおかしくはない。
ホラー映画もかくやという雰囲気の階段を降りて地下へたどり着く・・・幸いなことに見張りと思われる兵士が立っていた。
「お、おはようございます・・・」
振り返った相手が血まみれで・・・みたいなホラー映画のシーンを思い出して不安になるマユミだったが、そんな事はなく年若い兵士が笑顔で応えてくれた。
「おはようございます、あなたがマユミ様ですね・・・話は伺っています、部屋はこちらをお使いください」
「ありがとうございます・・・ひょっとして、わざわざ私のためにここに?」
「はい、城の地下はこの通りなので、誰かがいた方が良いだろうという事で・・・私はここにおりますので、何かありましたら遠慮なく申し付けください」
「なんか余計な仕事を増やしてしまったみたいで申し訳ないと言うか・・・よろしくお願いします」
部屋の鍵を開けて中に入る・・・部屋は真っ暗だ。
「うわ・・・」
「すぐに灯りをつけますね・・・『小さき火よ・・・灯れ』」
彼の手の上に小さな炎が浮かぶ・・・その炎を使って彼は部屋の中に設置された燭台に火を灯していった。
「魔法を使えるんですね・・・いいな・・・」
「いえ、私の魔力で出来るのはせいぜいこれくらいですよ」
それでも魔法が使えるのは羨ましい・・・実際この世界でも魔法が使える者は決して多くはなく、彼もこの魔法があったからこそ、この地下室に配属されたらしい。
「たしかに便利ではありますが、その分疲労もあります」
「あ、疲れるんだ・・・」
「魔力がもっとあれば違うのでしょうが・・・私の場合は・・・なかなか・・・」
これが普通の人なのだろう・・・比べるとエレスナーデの魔力のすごさがよくわかる。
明るくなった部屋の中はとても簡素で、家具や調度品の類はなく・・・休憩用にか椅子とテーブルが置いてあるだけ、といったものだった。
「では私は外にいますので・・・」
「あ、ちょっと待ってください・・・この部屋にいてもらう事って出来ますか?」
「ええ、まぁ・・・マユミ様の警護が出来るのでしたら問題はないかと思いますが・・・お邪魔では?」
「私は気にしないので、そこの椅子で休んでてください」
マユミは部屋の外に出ようとする兵士を呼び止め椅子を勧める・・・魔法で疲労させてしまったのが申し訳なくなってきたのだ。
「いや、しかしそれでは・・・」
「休める時に身体を休めるのも仕事ですよ、いざって時に何も出来なくなったら困りますよ?」
休みなく働いていた過去の自分に言い聞かせるかのように、マユミは兵士を説得した。
(私ももっと休んでいれば・・・今ここにいなかったのかな・・・)
妙に実感の籠ったマユミの説得にとうとう兵士は折れ、椅子に座るのだった。
「じゃあ練習を始めます、まずは基本の発声練習・・・怪しい儀式じゃないですからね」
昨日受けた誤解を弁明しつつ、マユミは練習を始める・・・今日の本番の為の練習を・・・ちょうど良い位置に客役がいたので、良いリハーサルを行う事が出来たのだった。
そして、お昼の時間がやって来るのに合わせてマユミ達は『海猫亭』に向かった。
「ゲオルグさん、昨日の今日でまた運ばせちゃってごめんなさい」
「いえ、これはマユミ殿の『作戦』には欠かせませんから・・・どうか気になさらず、お任せください」
ゲオルグは昨日露店で購入したあの絨毯を抱えていた。
厚手の絨毯は結構な重さだったが、昨日と違って洋服などがない分、運びやすかった。
「でもマユミ、本当に最初からその服で良いの?前みたいに私が魔法で着替えさせた方が・・・」
「うん大丈夫、今回は前とちょっと違うことをするつもりなんだ・・・」
「それも『作戦』ってことかしら?」
今回マユミがやる予定の演目はシンデレラ・・・以前やった時の衣装替えの演出は高い服がダメになるのでマユミは絶対にやるつもりはなかった。
なので、今日は最初からエレスナーデのお下がりを着ている。
『海猫亭』に到着したマユミはまず店主のバクストンに挨拶しに店内に入る。
昨日の汚名を濯ぎ、今日こそはやり遂げるという・・・マユミの宣戦布告だ。
まだピークタイムには時間があるようで店内はガラガラ・・・バクストンは入ってきたマユミにすぐ気付いた。
「また来たよ、親父さん」
「来たからには何か思い付いたんだろうな?」
「当然、ちょっと外が騒がしくなるけど、いいよね?」
「外、か・・・ああ、構わないぜ」
(どうやらそこには気付いたようだな・・・)
バクストンは心なしか満足げな表情を浮かべた・・・
「だが、お前に師匠と同じ事が出来るかな?・・・楽しみにしてるぜ」
「まぁ見ててよ・・・じゃないか、聞いててよ!」
そう言い直して、マユミは店の外へと出て行った。
それからしばらくすると、港の方に到着した船から船乗り達が続々とやって来る・・・どうやら全員同じ船の乗組員のようだ・・・かなりの人数が乗っている船のようだ。
「あれは・・・レマーナ伯爵の船ですね・・・」
「え・・・」
「船に伯爵家の紋章が描かれています・・・ずいぶん大型のガレー船のようですね」
「ゲオルグさん、この距離でそこまで見えるの?!」
「ええ、まぁ・・・」
ゲオルグが嘘をつくような状況でもない・・・普通に見えているのだろう。
マユミの視力では船がいるのがわかる程度だ・・・とても紋章など見えなかった。
(この人はアフリカ人か・・・)
文明の発達していない地域では視力6.0とかそういう人がいるとは聞いたことがあるが・・・さすが中世と言うべきなのか・・・
「ひょっとしてナーデも見えてるの?」
「いいえ、私は屋敷で本ばかり読んでいたから、目はあまり良くないのよ」
それを聞いて少し安心するマユミ。
しかし、それでも物が見えずに困っていたような素振りはなかったので、エレスナーデも元々は目が良いのかも知れない。
そんなやり取りをしている間に船乗り達は我先にと店内へ入っていき・・・入り切れずに店の前に行列を作り出すのだった。
(こうやって行列が作られたんだね・・・)
店の中にいた時は訳も分からず、ただ焦るだけだったその光景も・・・こうして外で見ればごく自然な人の流れだとわかる・・・何も恐れる事などなかったのだ。
「じゃあそろそろ始めるよ、ゲオルグさんお願いします」
絨毯を抱えたゲオルグがその行列の方へと向かう。
何事かと警戒する客達に、マユミがその『作戦』の始まりを告げた。
「えー、皆さんが立って待つのも疲れると思って、ふかふかの絨毯を用意しました、座って楽な態勢で待ちませんか?」
「なんだ、そういう事か」
「悪いなあんちゃん、こっちの端は俺が持つよ」
マユミのその声を聞いて状況を理解したらしく、客達は絨毯を敷くのを手伝ってくれた。
さすがに全員が座るには足りなかったが、客達が互いに詰め合わせて座ってくれたおかげで多くの人数が座る事が出来たようだ。
「さて、皆さんに楽な態勢になってもらえたところで、吟遊詩人の私が一つ歌わせて頂こうと思います」
「お、可愛い嬢ちゃんがなんかやってくれるのか?」
「待ってる間の暇つぶしにちょうどいいや」
昨日とは打って変わって、客達の注目がマユミに集まっている。
やはり順番待ちの客をターゲットにするという作戦は正解だったようだ。
「では、しばしの間お付き合いください・・・」
・・・そして、マユミは語り始めるのである。
マユミは朝早くに目を覚ました・・・ふかふかベッドの誘惑を打ち破ったのだ。
隣でまだ眠っているエレスナーデを起こさぬように、そっと起き上がる。
(そういえば、ナーデより先に起きたのは初めてだっけ・・・)
せっかくだからとエレスナーデの寝顔を観察してみる。
普段は大人びた所のあるエレスナーデだが、その寝顔は年相応の・・・可愛らしい少女だ。
その手でふとんをぎゅっと握りしめているあたりは寂しがりな面が出ているのだろうか。
(私はナーデを支えてあげれているのかな・・・)
見た目はともかく、中身はずいぶんと年上のマユミなのだが、大人として彼女に何かしてあげれているのだろうか・・・逆にいつも助けられてばかりな気がして情けなかった。
(はやく一人前にならないとな・・・)
その為に今は目の前の事に集中しなければ・・・
伯爵が用意してくれた練習用の地下室の鍵を手に、マユミは部屋を後にした。
一人で地下室を目指すマユミだがやはりまだ日が昇り切らない時間、そして古い城なだけあって独特の雰囲気を醸し出していた・・・要は怖いのである。
「うわ・・・幽霊とか出てきそう・・・」
元々は霊感などなく心霊現象の類とは無縁だったマユミだが、ここは魔法が存在するファンタジー世界だ・・・幽霊だっていてもおかしくはない。
ホラー映画もかくやという雰囲気の階段を降りて地下へたどり着く・・・幸いなことに見張りと思われる兵士が立っていた。
「お、おはようございます・・・」
振り返った相手が血まみれで・・・みたいなホラー映画のシーンを思い出して不安になるマユミだったが、そんな事はなく年若い兵士が笑顔で応えてくれた。
「おはようございます、あなたがマユミ様ですね・・・話は伺っています、部屋はこちらをお使いください」
「ありがとうございます・・・ひょっとして、わざわざ私のためにここに?」
「はい、城の地下はこの通りなので、誰かがいた方が良いだろうという事で・・・私はここにおりますので、何かありましたら遠慮なく申し付けください」
「なんか余計な仕事を増やしてしまったみたいで申し訳ないと言うか・・・よろしくお願いします」
部屋の鍵を開けて中に入る・・・部屋は真っ暗だ。
「うわ・・・」
「すぐに灯りをつけますね・・・『小さき火よ・・・灯れ』」
彼の手の上に小さな炎が浮かぶ・・・その炎を使って彼は部屋の中に設置された燭台に火を灯していった。
「魔法を使えるんですね・・・いいな・・・」
「いえ、私の魔力で出来るのはせいぜいこれくらいですよ」
それでも魔法が使えるのは羨ましい・・・実際この世界でも魔法が使える者は決して多くはなく、彼もこの魔法があったからこそ、この地下室に配属されたらしい。
「たしかに便利ではありますが、その分疲労もあります」
「あ、疲れるんだ・・・」
「魔力がもっとあれば違うのでしょうが・・・私の場合は・・・なかなか・・・」
これが普通の人なのだろう・・・比べるとエレスナーデの魔力のすごさがよくわかる。
明るくなった部屋の中はとても簡素で、家具や調度品の類はなく・・・休憩用にか椅子とテーブルが置いてあるだけ、といったものだった。
「では私は外にいますので・・・」
「あ、ちょっと待ってください・・・この部屋にいてもらう事って出来ますか?」
「ええ、まぁ・・・マユミ様の警護が出来るのでしたら問題はないかと思いますが・・・お邪魔では?」
「私は気にしないので、そこの椅子で休んでてください」
マユミは部屋の外に出ようとする兵士を呼び止め椅子を勧める・・・魔法で疲労させてしまったのが申し訳なくなってきたのだ。
「いや、しかしそれでは・・・」
「休める時に身体を休めるのも仕事ですよ、いざって時に何も出来なくなったら困りますよ?」
休みなく働いていた過去の自分に言い聞かせるかのように、マユミは兵士を説得した。
(私ももっと休んでいれば・・・今ここにいなかったのかな・・・)
妙に実感の籠ったマユミの説得にとうとう兵士は折れ、椅子に座るのだった。
「じゃあ練習を始めます、まずは基本の発声練習・・・怪しい儀式じゃないですからね」
昨日受けた誤解を弁明しつつ、マユミは練習を始める・・・今日の本番の為の練習を・・・ちょうど良い位置に客役がいたので、良いリハーサルを行う事が出来たのだった。
そして、お昼の時間がやって来るのに合わせてマユミ達は『海猫亭』に向かった。
「ゲオルグさん、昨日の今日でまた運ばせちゃってごめんなさい」
「いえ、これはマユミ殿の『作戦』には欠かせませんから・・・どうか気になさらず、お任せください」
ゲオルグは昨日露店で購入したあの絨毯を抱えていた。
厚手の絨毯は結構な重さだったが、昨日と違って洋服などがない分、運びやすかった。
「でもマユミ、本当に最初からその服で良いの?前みたいに私が魔法で着替えさせた方が・・・」
「うん大丈夫、今回は前とちょっと違うことをするつもりなんだ・・・」
「それも『作戦』ってことかしら?」
今回マユミがやる予定の演目はシンデレラ・・・以前やった時の衣装替えの演出は高い服がダメになるのでマユミは絶対にやるつもりはなかった。
なので、今日は最初からエレスナーデのお下がりを着ている。
『海猫亭』に到着したマユミはまず店主のバクストンに挨拶しに店内に入る。
昨日の汚名を濯ぎ、今日こそはやり遂げるという・・・マユミの宣戦布告だ。
まだピークタイムには時間があるようで店内はガラガラ・・・バクストンは入ってきたマユミにすぐ気付いた。
「また来たよ、親父さん」
「来たからには何か思い付いたんだろうな?」
「当然、ちょっと外が騒がしくなるけど、いいよね?」
「外、か・・・ああ、構わないぜ」
(どうやらそこには気付いたようだな・・・)
バクストンは心なしか満足げな表情を浮かべた・・・
「だが、お前に師匠と同じ事が出来るかな?・・・楽しみにしてるぜ」
「まぁ見ててよ・・・じゃないか、聞いててよ!」
そう言い直して、マユミは店の外へと出て行った。
それからしばらくすると、港の方に到着した船から船乗り達が続々とやって来る・・・どうやら全員同じ船の乗組員のようだ・・・かなりの人数が乗っている船のようだ。
「あれは・・・レマーナ伯爵の船ですね・・・」
「え・・・」
「船に伯爵家の紋章が描かれています・・・ずいぶん大型のガレー船のようですね」
「ゲオルグさん、この距離でそこまで見えるの?!」
「ええ、まぁ・・・」
ゲオルグが嘘をつくような状況でもない・・・普通に見えているのだろう。
マユミの視力では船がいるのがわかる程度だ・・・とても紋章など見えなかった。
(この人はアフリカ人か・・・)
文明の発達していない地域では視力6.0とかそういう人がいるとは聞いたことがあるが・・・さすが中世と言うべきなのか・・・
「ひょっとしてナーデも見えてるの?」
「いいえ、私は屋敷で本ばかり読んでいたから、目はあまり良くないのよ」
それを聞いて少し安心するマユミ。
しかし、それでも物が見えずに困っていたような素振りはなかったので、エレスナーデも元々は目が良いのかも知れない。
そんなやり取りをしている間に船乗り達は我先にと店内へ入っていき・・・入り切れずに店の前に行列を作り出すのだった。
(こうやって行列が作られたんだね・・・)
店の中にいた時は訳も分からず、ただ焦るだけだったその光景も・・・こうして外で見ればごく自然な人の流れだとわかる・・・何も恐れる事などなかったのだ。
「じゃあそろそろ始めるよ、ゲオルグさんお願いします」
絨毯を抱えたゲオルグがその行列の方へと向かう。
何事かと警戒する客達に、マユミがその『作戦』の始まりを告げた。
「えー、皆さんが立って待つのも疲れると思って、ふかふかの絨毯を用意しました、座って楽な態勢で待ちませんか?」
「なんだ、そういう事か」
「悪いなあんちゃん、こっちの端は俺が持つよ」
マユミのその声を聞いて状況を理解したらしく、客達は絨毯を敷くのを手伝ってくれた。
さすがに全員が座るには足りなかったが、客達が互いに詰め合わせて座ってくれたおかげで多くの人数が座る事が出来たようだ。
「さて、皆さんに楽な態勢になってもらえたところで、吟遊詩人の私が一つ歌わせて頂こうと思います」
「お、可愛い嬢ちゃんがなんかやってくれるのか?」
「待ってる間の暇つぶしにちょうどいいや」
昨日とは打って変わって、客達の注目がマユミに集まっている。
やはり順番待ちの客をターゲットにするという作戦は正解だったようだ。
「では、しばしの間お付き合いください・・・」
・・・そして、マユミは語り始めるのである。
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