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第48話 お船の仕事です
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椋鳥一座・・・彼らを乗せた馬車が街道を進む。
その御者台の団員を座長がせっついていた。
「おい、もっと速く走れんのか!」
「そんなに走らせたら馬が持ちませんよ・・・だいたいなんでそんなに慌てるんすか」
「良いから言う通りにしろ!馬なんて次の街で買い換えればいい」
不満げに漏らした団員の声はしっかり聞かれてしまっていたようだ。
だがそれなりの人数と荷物を積んだ馬車だ、そうそうスピードが出るものではなかった。
一考に速度の上がらない馬車に不満げな座長だが、団員もまた彼に不満を抱きつつあった。
「・・・座長、何もあいつらまで置いてくことなかったんじゃないですか?」
座長はミーアだけでなく、ミーアを医者に運んでいった団員達も置いていったのだ。
「フン、肝心な時にどこかほっつき歩いてるあいつらが悪い・・・それにあいつらには才能がないしな」
芝居は実力主義の世界、才能のない奴など代わりはいくらでも調達できる、そう考えるのも仕方ない事だが・・・
いずれ自分達も同じように切り捨てられるのではないか・・・そんな不安が団員達に広がっていた。
「でも~こんなに急がなくても良かったんじゃないですか~?美容に悪いわ」
「ったく、お前らは何も・・・」
「座長、後ろから何か来ます!」
その声にはっとなる座長・・・見ると馬車の後方から、騎馬の集団が迫ってきている。
騎士団というには装備に統一感がなく・・・
「まさか馬賊?!」
団員達が騒然となる中、座長の指示が飛ぶ。
「馬がどうなってもいい、振り切れ!」
「無理ですって!」
馬車の速度をどんなに上げても軽装の騎馬に勝てるわけがない。
一座の馬車は、たちまち騎馬の集団に取り囲まれてしまうのだった。
「こうなったら一か八か・・・芝居用の武器で・・・」
団員達が各々の手に武器を持つ・・・芝居用の道具だが金属製で殺傷力がないわけではない。
賊に皆殺しにされてしまうくらいなら、戦った方がいくばくか可能性がある。
「いや、お前たちはここで待て・・・」
「座長?!」
座長はそう言い残すと一人馬車を降りる・・・まさか賊相手に交渉でもするつもりなのか。
・・・すると、騎馬の集団の後方から一人の男が前に出てくる。
賊の頭というには身なりが良い・・・その人物は妙に親しげに座長に語り掛けた。
「おや椋鳥一座の皆さんじゃないですか、こんな所で何をしているんですか?」
「く・・・」
だが座長は答えない・・・苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのみだ。
「まぁ皆さんが予定を変えて、どこで何をしようが私は構わないんですけどね・・・」
その男・・・大商人アビダスは続ける。
「しかしその前に、私どもの融資したお金はしっかり返していただきたいものですなぁ」
そう・・・座長は公演の為の資金をアビダスに借りていたのだ。
舞台は金が掛かる・・・大きな街での公演ともなると場所代はもちろん、周囲への根回しは必要不可欠。
特に今回の公演はそれなりに客が見込めると思った座長は、それなりの金額を借りていたのだ。
「いや~初日は盛況だったそうじゃないですか・・・評判も良くて、私は期待していたんですよ?」
(く・・・あの小娘さえ・・・あんな事にならなければ・・・)
公演は順調だった、あのままいけば返済額の倍は稼げたはずだったのだ・・・
「まぁ終わってしまった事は仕方ありません・・・ですが、取り立ては王国法に認められた権利ですので・・・おとなしく従っていただけますかな?」
「うぅ・・・」
「では皆さん、手筈通りにお願いします」
座長ががっくりとその場に崩れ落ちるのと同時にアビダスの指示で周囲の馬賊・・・もとい、彼に雇われた傭兵達が動き出す。
「返済額にはいささか足りないようですが・・・ご安心ください、皆さんには良~いお仕事を紹介しますよ・・・南の島で観光も出来る、それは素敵なお仕事です」
彼の資本によって、レマーナ式ガレーを元に発展させた大型の新造艦が、もうすぐ就航する予定だった。
・・・・・・
・・・
港街でマユミは今日も『海猫亭』で吟遊詩人の仕事をしていた。
マユミのレパートリーはまだ少ないが、客の船乗り達は出航すると数日は戻ってこないので、毎日違う顔ぶれの為問題なかった。
動けるようになったミーアは興味深そうにマユミの仕事を見ている・・・そのうちミーアにもこの仕事をやらせてみようとマユミは考えていた。
(掛け合い形式で一緒にやれたら・・・だいぶ作品に幅が出るよね)
特にマユミの苦手な低音をカバー出来るのは大きい・・・今後は色々な作品に挑戦できそうだ。
今日も大勢の客が『海猫亭』に列を作る・・・マユミ達はその中に見知った顔を発見するのだった。
「よおミーア、もう動けるようになったんだな」
「あれ・・・」
「あなた達・・・一座の人たちと一緒に行ったんじゃ・・・」
「いやー、俺らも置いてかれちまってさ・・・」
そう、あの時ミーアを運んでくれた団員達だった。
一座に置いて行かれた彼らはしばらく途方に暮れていたが・・・なんとかこの街で仕事を見つける事が出来たようだ。
「それでガレー船の漕ぎ手に?」
「ああ、一座では力仕事ばっかやらされてきたから体力はあるんだぜ」
「ああ見えて、志願者には待遇が良くてな・・・船倉の一部は漕ぎ手用のスペースになってて、個人で取引出来たりするんだ」
「へぇ~そうなんだ・・・」
奴隷みたいな印象を持っていたマユミだったが、そんなに悪くはないらしい。
彼らのおかげで少し気持ちが楽になった。
「じゃあせっかくだから聞いてってください」
「なんか芝居みたいな事するんだってな・・・噂は聞いてるぜ?」
「俺たちはちょっと演技にはうるさいからな?」
「ふふっ、お手柔らかにお願いします」
・・・そして今日も新しい客を得たマユミだった。
その御者台の団員を座長がせっついていた。
「おい、もっと速く走れんのか!」
「そんなに走らせたら馬が持ちませんよ・・・だいたいなんでそんなに慌てるんすか」
「良いから言う通りにしろ!馬なんて次の街で買い換えればいい」
不満げに漏らした団員の声はしっかり聞かれてしまっていたようだ。
だがそれなりの人数と荷物を積んだ馬車だ、そうそうスピードが出るものではなかった。
一考に速度の上がらない馬車に不満げな座長だが、団員もまた彼に不満を抱きつつあった。
「・・・座長、何もあいつらまで置いてくことなかったんじゃないですか?」
座長はミーアだけでなく、ミーアを医者に運んでいった団員達も置いていったのだ。
「フン、肝心な時にどこかほっつき歩いてるあいつらが悪い・・・それにあいつらには才能がないしな」
芝居は実力主義の世界、才能のない奴など代わりはいくらでも調達できる、そう考えるのも仕方ない事だが・・・
いずれ自分達も同じように切り捨てられるのではないか・・・そんな不安が団員達に広がっていた。
「でも~こんなに急がなくても良かったんじゃないですか~?美容に悪いわ」
「ったく、お前らは何も・・・」
「座長、後ろから何か来ます!」
その声にはっとなる座長・・・見ると馬車の後方から、騎馬の集団が迫ってきている。
騎士団というには装備に統一感がなく・・・
「まさか馬賊?!」
団員達が騒然となる中、座長の指示が飛ぶ。
「馬がどうなってもいい、振り切れ!」
「無理ですって!」
馬車の速度をどんなに上げても軽装の騎馬に勝てるわけがない。
一座の馬車は、たちまち騎馬の集団に取り囲まれてしまうのだった。
「こうなったら一か八か・・・芝居用の武器で・・・」
団員達が各々の手に武器を持つ・・・芝居用の道具だが金属製で殺傷力がないわけではない。
賊に皆殺しにされてしまうくらいなら、戦った方がいくばくか可能性がある。
「いや、お前たちはここで待て・・・」
「座長?!」
座長はそう言い残すと一人馬車を降りる・・・まさか賊相手に交渉でもするつもりなのか。
・・・すると、騎馬の集団の後方から一人の男が前に出てくる。
賊の頭というには身なりが良い・・・その人物は妙に親しげに座長に語り掛けた。
「おや椋鳥一座の皆さんじゃないですか、こんな所で何をしているんですか?」
「く・・・」
だが座長は答えない・・・苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのみだ。
「まぁ皆さんが予定を変えて、どこで何をしようが私は構わないんですけどね・・・」
その男・・・大商人アビダスは続ける。
「しかしその前に、私どもの融資したお金はしっかり返していただきたいものですなぁ」
そう・・・座長は公演の為の資金をアビダスに借りていたのだ。
舞台は金が掛かる・・・大きな街での公演ともなると場所代はもちろん、周囲への根回しは必要不可欠。
特に今回の公演はそれなりに客が見込めると思った座長は、それなりの金額を借りていたのだ。
「いや~初日は盛況だったそうじゃないですか・・・評判も良くて、私は期待していたんですよ?」
(く・・・あの小娘さえ・・・あんな事にならなければ・・・)
公演は順調だった、あのままいけば返済額の倍は稼げたはずだったのだ・・・
「まぁ終わってしまった事は仕方ありません・・・ですが、取り立ては王国法に認められた権利ですので・・・おとなしく従っていただけますかな?」
「うぅ・・・」
「では皆さん、手筈通りにお願いします」
座長ががっくりとその場に崩れ落ちるのと同時にアビダスの指示で周囲の馬賊・・・もとい、彼に雇われた傭兵達が動き出す。
「返済額にはいささか足りないようですが・・・ご安心ください、皆さんには良~いお仕事を紹介しますよ・・・南の島で観光も出来る、それは素敵なお仕事です」
彼の資本によって、レマーナ式ガレーを元に発展させた大型の新造艦が、もうすぐ就航する予定だった。
・・・・・・
・・・
港街でマユミは今日も『海猫亭』で吟遊詩人の仕事をしていた。
マユミのレパートリーはまだ少ないが、客の船乗り達は出航すると数日は戻ってこないので、毎日違う顔ぶれの為問題なかった。
動けるようになったミーアは興味深そうにマユミの仕事を見ている・・・そのうちミーアにもこの仕事をやらせてみようとマユミは考えていた。
(掛け合い形式で一緒にやれたら・・・だいぶ作品に幅が出るよね)
特にマユミの苦手な低音をカバー出来るのは大きい・・・今後は色々な作品に挑戦できそうだ。
今日も大勢の客が『海猫亭』に列を作る・・・マユミ達はその中に見知った顔を発見するのだった。
「よおミーア、もう動けるようになったんだな」
「あれ・・・」
「あなた達・・・一座の人たちと一緒に行ったんじゃ・・・」
「いやー、俺らも置いてかれちまってさ・・・」
そう、あの時ミーアを運んでくれた団員達だった。
一座に置いて行かれた彼らはしばらく途方に暮れていたが・・・なんとかこの街で仕事を見つける事が出来たようだ。
「それでガレー船の漕ぎ手に?」
「ああ、一座では力仕事ばっかやらされてきたから体力はあるんだぜ」
「ああ見えて、志願者には待遇が良くてな・・・船倉の一部は漕ぎ手用のスペースになってて、個人で取引出来たりするんだ」
「へぇ~そうなんだ・・・」
奴隷みたいな印象を持っていたマユミだったが、そんなに悪くはないらしい。
彼らのおかげで少し気持ちが楽になった。
「じゃあせっかくだから聞いてってください」
「なんか芝居みたいな事するんだってな・・・噂は聞いてるぜ?」
「俺たちはちょっと演技にはうるさいからな?」
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・・・そして今日も新しい客を得たマユミだった。
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