ある日、彼女が知らない男と一緒に死んでいた

はし

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 目が覚めると病院に居た。
 あの後、僕は過呼吸になり気を失ったのだと診察に来た先生に言われた。

 診察が終わると、警察の人が来て話を聞かれたりした。

 警察の人の話では僕が気を失った後、彼女の隣に住む同じ大学に通う鳴神なるかみくんと言う人が悲鳴に気付き、様子を見に来たら倒れている僕を発見して、警察や救急車を呼んでくれたらしい。

「悲鳴なんて上げてたのか、僕。気付かなかったな」

 彼女と知らない男は、死後二日ほど経っていたそうだ。
 僕が三日前に彼女の部屋を訪れた後に、二人は死んだと言うことになるのだろう。
 部屋の中がエアコンでキンキンに冷やされていたようで、夏なのに腐敗も進んでおらず、遺体はキレイだったらしい。

 僕は彼女の両親に申し訳なくて、よく見られなかった。

 彼女の部屋から遺書が見付かったんだ。
 彼女と、知らない男の。

 彼女のお母さんに泣きながら渡された、彼女の遺書を読んだ。
 両親への謝罪、友人への謝罪、僕への謝罪と――首を吊った理由が書かれていた。
 彼女は一緒に死んでいた男と、浮気していた。
 そして、僕への罪悪感から死を選んだと書いてあった。男の方も同じような内容らしい。
 知らなかった。知りたくなかった。
 彼女が浮気していたことや、死の理由。いつも会うたびに穏やかに笑いかけてくれていた彼女のお母さんからの、恨みのこもった眼差し。


「――警察の人、捜査とかしてくれないんだって。遺書があったから自殺だって」

 彼女のお父さんに支えらて、うつむいたままのお母さんが僕に言う。
 お母さんが言うように彼女とあの男は、自殺として特に捜査はされないらしい。室内に荒らされた形跡や不審なところがないことや、なによりも遺書があったからだろう。

「……自殺なんかじゃない。……こ……た……のよ」
「えっ?」

 うつむきながら小声で何かを言うお母さんに、よく聞くために顔を近付けた。

「アンタが殺したのと一緒よ!!」

 バッ! と勢い良く顔を上げたお母さんが、憎くて仕方がないと言うように僕を睨みつけてきた。けれどすぐに、つり上がっていた眉毛がハの字になり、お母さんの両目から涙が流れ出した。

「……あの子を返してよ。なんで別れてあげなかったの? なんで、許してあげなかったの? アンタのせいよ……うっうっ」
「お母さん、僕も何も知らな……」その先は続かなかった。泣き崩れたお母さんの背中を擦るお父さんが、僕を見上げて首を横に振ったからだ。

 僕は二人に頭を下げ、その場から走り去った。

(僕は何も知らないのに……どうして皆、僕を責めるんだ……)

 こっちだって泣きたいよ。
 それから、ご両親に会うことはなかった。

 
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