ある日、彼女が知らない男と一緒に死んでいた

はし

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 ノンストップで言いきったあきらちゃんは、「言いたかったこと全部言えた~」と、ニコニコしている。

 目の前に居る人物は、本当に僕が知るあきらちゃんなのか? そう疑いたくなる。
(それに、さっきのあきらちゃんの口ぶり……関わっているどころか……)
 僕は一つ、気になっていることを口にした。

「彼女たちと一緒に亡くなっていた男の人たちは、本当に彼女たちの浮気相手だったの?」

 あきらちゃんの話には出て来なかった。彼女たちと一緒に亡くなった男性たち。

「……そんなのどうだっていいじゃない」

 ニコニコしていた顔から一瞬で無表情になったあきらちゃんが、至極どうでもいいように言う。

 やっぱり彼女たちは浮気なんてしていなかった。
 死因も自殺じゃなかった。
 警察のことや大学の友人たち、村の人たちのことも。

 全てあきらちゃんがやったんだ。

 大学が同じことを言わなかったり、同じ時期に同じ場所に引っ越して来て、同じとこで働いたり、海岸で偶然のように出会ったのも(この家も本当に実家なのか怪しくなってきた)。

 全部、全部、あきらちゃんが……。
 それなのに僕は、何も気付かずにあきらちゃんと付き合って……。

「どうして殺したの?」
「君のことが好きだから。それ以外に理由なんている? 大学に入ったばかりの時に、落としたボールペンを君が拾ってくれたの。すぐに君に恋をした」

 祈るように両手を胸の前で握り締めながら、当時のことを思い出すように嬉しそうに話している。

「……ごめん。覚えてない」
「いいよ。私が覚えてるもん」
「でも、それでなんでみんなを殺すことになるの?」
「さっきも言ったけど、彼女たちじゃ君には合わないよ。最初は、私じゃ君の隣には立てないから譲ってあげてたけど。彼女たちのこと調べていくうちにイライラしちゃって……それで、殺そうと思ったんだ。結構大変だったんだよ? 自殺に見せかけるの」

 祈るようにしていた両手を解き、身振り手振りを交えながらあきらちゃんは話していく。

「それっぽく遺書用意したり、男用意したり。あ! 男はウラのバイトで用意したやつだから気にしなくていいよ! どうせオモテで生きられないような人間だし、誰も困らないでしょ」

 そんな理由で、人を殺したのか。まったく関係ない人たちのことも。

「で、もうしょうがないから私が君の隣に立つことにしたの。いろいろ準備している間に別の人と付き合っちゃうから、殺す人増えちゃったよ」
「じゅんび」
「履歴書(それ)見たんなら知ってるでしょ? それくらい君が好きってことだよ?」

 段ボールの底にあった写真付き履歴書には、鳴神あきら(性別・男)と書いてあった。
 そう。あきらちゃんは、本当は男だったんだ。準備と言うことは、あきらちゃんは僕のために性別も変えたと言うことだろうか。
(僕と付き合うために、人を殺したり性別を変えたり、普通そこまでするのか?)
 目の前に居る人物のことが、どんどん分からなくなる。

「春からじゃなくて、今日から同棲スタートしちゃおっか! あ、安心して? ここは本当に実家だから。まあ、両親にはちょっと遠くに行ってもらったけど」

 分からないことばかりだけど、僕はもうこの家から出られない。それだけは分かった。
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