上 下
9 / 10

9-1

しおりを挟む
「あーあ、だから見ちゃだめって言ったのに」

 近くから声が聞こえ、ビックリして振り返ると真後ろにあきらちゃんが立っていた。

(いつの間に部屋に入って来たんだ? 全然気付かなかった)

 恐怖心や驚きでバクバクする心臓を手で抑える。

「あきらちゃん、この写真って……」
「そのまんまだけど?」

「そのまんまって、」聞きたいことが有り過ぎて何から聞いたら良いか分からず、言い淀んでしまう。
 
「……警察って遺書があったり、普段から死にたいって言ってたって証言があると捜査しないから、やりやすかった~♡」

 独り言を言うかのようなトーンで、あきらちゃんが信じられないことを口にした。

「もっと捜査してくれたら自殺じゃないって分かって、君が気に病む必要もなかったのにね。あっ! でもそしたら私たち、付き合ってなかったか」

 そう言ってあきらちゃんは、アハハと笑った。

 何を言っているんだ? というか『もっと捜査してくれたら自殺じゃないって分かった』って、言ったのか?
 なんであきらちゃんが、そんなことを言うんだ?
 まさか――。

 頭に浮かんだ可能性を確かめるため、僕は意を決して口を開く。

「も、もしかして彼女やキホさんが亡くなったことに、あきらちゃんが関わってたりして~。まさか、ね」

 あきらちゃんは何も答えなかった。
 ただニコリとほほ笑みながら僕を見ている。まるで、これが答えだと言うように。
 おかしいな。さっきまでは、このほほ笑みが『何があっても僕の全てを受け止めてくれる』ようで好きだったはずなのに、今はとても恐ろしく感じる。

「そうそう! 私、君に言いたいことがあったんだよね!」
「え?」
「一人目の彼女さん。君にまったく合ってなかったよ? 彼女ね、君に隠れてパパ活してたの。君、そういう子苦手でしょ? 大学のお友達もネットニュースのほうばかり信じて、君のこと全然信じてくれないし。ま、ちょいちょいタレコミしたの私だけど。もっと付き合う人は考えないと、傷付くのは自分だよ? あと、二人目のキホさんだっけ? アレは全然ダメ! いっくら前の人のことを慰めてくれたからって、すぐに付き合っちゃダメだよ! あの人、君が居ないときに、よく男友達連れ込んでたんだから! それなのに君は、彼女のために警察署まで行っちゃうし。結局、全く相手にされないどころか、ひどいことまで言われちゃったけど。村の人たちだって、私がちょっと前の彼女さんの噂を流したら、手の平を返したように厄介者扱いされて……あのときの君、可哀想だったな」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

総攻めなんて私には無理!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:1,126

ラブホオーナーは愛しの彼女を溺愛したくて仕方がない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:54

ある工作員の些細な失敗

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:908pt お気に入り:0

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,292pt お気に入り:1

笑ってはいけない悪役令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:5

【短編】わかたれた道

恋愛 / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:22

処理中です...