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第52話 模擬戦2日目以降
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近接戦闘部門の模擬戦1回戦は合計で64試合組まれている。そのため1回戦だけで3日を要する大掛かりなスケジュールとなっている。
組み合わせの関係で初日の出番がなかったブルーホライズンの五人は2日目になってようやく初戦を迎える。
「いよいよ試合が始まるんだなぁ! なんだか気合が入ってきた!」
「師匠とのデートが懸っているから、絶対に負けられないよね!」
「何が何でも勝つぞー!」
「「「「おおぉぉ!」」」」
こうして一回戦に臨んだブルーホライズンの面々だが、対戦相手が中々厳しくて苦戦する。
「両者、引き分け!」
トップバッターで出場した渚は互いに決め手を欠いて惜しくも引き分けに終わる。悔しそうな表情の渚だが、相手がAクラスの男子だっただけに大健闘と呼べる評価を受けている。
「勝者、青!」
二番手の絵美は終了間際に相手の一撃を許して惜しくも敗退する。やはりロンギヌスを手にしないと調子が出なかったらしい。
「両者引き分け!」
真美は引き分けで終わる。まだ二刀流の練習を開始したばかりなので、右手一本で剣を操るだけでは十分な力を発揮できなかった。
「勝者、青!」
ほのかも健闘空しく敗れる。左手の盾をうまく生かして善戦したものの、戦法を変えたばかりではAクラス相手に苦戦するのは当然。
そして、最後に残った唯一の希望は…
「なんだよ! みんな、そんなお通夜みたいない顔をしているじゃないぜ! この美晴様がビシッと勝利を挙げて見せるからな! ガハハハハ!」
試合が始まる前から、どうにも不安を抱かせてくれる美晴の態度。女子なのに「ガハハハハ!」という笑い方はどうにかならないものだろうか…
だが希望は残っている。メンバーの中では最も体力の数値が高いのは美晴に他ならない。その上気合強化のスキルがレベル2に上昇している点も心強く感じる… で、いいのか? 気合強化って模擬戦で本当に役立つのか? この辺はいまだに未知数なところ。
そしていよいよ美晴の出番がやってくる。
右手には大型の盾を、左手には斧の用意がなかったため代わりの短剣を手にしている。対戦するのはBクラスの男子で、美晴よりも頭ひとつ以上大きいかなり大柄な生徒。まともにぶつかったら、もしかしたら力負けする可能性が高い。
「生意気に盾なんか持ちやがって、そんな盾など俺の剣の前では役立たずだぜ!」
「役立たずはどっちか今からはっきりさせてやる!」
美晴も全然負けてはいない。元々気が強いところに持ってきて、聡史とのデートに対して並々ならぬ意欲を持っている。
「試合開始!」
ついにブルーホライズンの運命を決定する最後の1戦が始まる。
「一撃で吹っ飛びやがれぇぇ!」
ガシン!
高い位置から振り下ろされる大型の剣を美晴はやや上に向けた盾で受け止める。最初から気合強化を発動して、この試合最後まで押し切るつもりで臨んでいる。
「おりゃぁぁぁ!」
気合を全開にした美晴が盾を思いっきり押し込むと、相手の大柄な体は一歩後退。圧力が弱まったと見た美晴は盾をかざしながら右に回りこみつつ、そのまま体ごとぶつかっていく。
「なにっ!」
まさか盾を前面に押し出して体当たりをしてくるとは思っていなかった相手は完全に意表を突かれてバランスを崩す。このチャンスを見逃さずに、すかさず美晴が今一度盾を手にして思いっきりぶつかっていく。それはもう気合を前面に押し出した美晴ならではの戦い方というべきであろう。
「うわぁぁぁ!」
バランスを崩したところにさらに盾の一撃を食らった相手は、堪らずにその場に転倒。
「ここだぁぁぁ!」
倒れた相手に美晴が飛び掛かる。そのまま馬乗りになると、ヘルメットに向かって短剣を突き下ろしていく。
ガキン!
短剣が相手のフェイスガードに当たる大きな音が響く。気合が入りすぎている美晴は寸止めなどというお手柔らかな手段を取らない。そのまま相手を殺す勢いで短剣を振り下ろしている。
「そこまでぇぇ!」
慌てて審判が止めに入る。両者を引き剥がすようにして分けると、双方に開始戦まで戻るように命じる。
「勝者、赤!」
改めて勝ち名乗りを受けた美晴は両手を突き上げて喜びを表す。
「これで師匠とデートだぁぁぁぁ!」
勝ち名乗りの代わりに美晴が大声で発したデート宣言に場内は唖然とするのであった。
◇◇◇◇◇
控え室で防具を解いた美晴はパーティーが見守っているスタンドへ戻ってくる。その表情はこれ以上ないほど晴れやか。
「やったぜ! 師匠とのデートをゲットしたせぇぇぇ!」
「はぁ~… よかったわね」
「ひとりで楽しんで来い!」
「友達止めようかな」
「本当にガッカリです!」
喜んでもらえると思っていた美晴は仲間のあまりの冷たい反応に「なぜだ?」という表情を浮かべている。いくら脳筋であっても、この雰囲気に何か感じるものがあるのは当然。
「な、なんだよ~! なんでみんなそんな顔をしているんだよ! 私たちはパーティーだろう! 師匠とのデートは五人で出掛けるに決まっているじゃないか!」
「美晴ちゃん! マジ天使ぃぃ!」
「そ、そうだよな! みんなで楽しもう!」
「美晴ちゃんは私の一番の親友ぅぅl!」
「美晴ちゃんはやっぱり器が違うわ!」
四人はクルっと手の平返しで美晴を褒め称える。あんまりクルクル手の平を返していると腱鞘炎になりかねない。
「どうせだから五人まとめて師匠におごってもらおうぜ!」
「確か師匠はダンジョンで相当稼いでいるはずだから、思いっきりご馳走になろう!」
「師匠は太っ腹だからね!」
「日頃我慢している分、思いっきりたかるわ!」
「全部美晴ちゃんが勝ってくれたおかげです!」
美晴以外の四人が涙を流して喜ぶのんでいる。
それよりもなぜ美晴が五人で出掛けようと提案したかというと、美晴はこの年まで男子と付き合った経験がなかったというれっきとした理由が存在している。もちろん二人っきりでどこかへ出掛けるなど想定外のさらに外の話。最初から全員でデートをするつもりだったよう。こんな美晴の意気地のなさのおかげでパーティーメンバー全員がおこぼれにあずかることとなる。
結果的に、聡史の負担だけが5倍になるだけだった。
◇◇◇◇◇
4日目の第3訓練場では、明日香ちゃんが2回戦を迎えている。装備を付けてフィールドに立つ明日香ちゃんは、相変わらずの平常運転。
(さあ! 今日こそ負けてやりますよ~! 相手の人はどうか頑張ってください! 私は一切頑張りません!)
相変わらず清々しいまでのヤル気のなさで槍を手にして開始戦に立つ明日香ちゃん。だが彼女は全然気付いていない。
1回戦で対戦した勇者以上に強い相手はこのトーナメントに参加していない。その証拠に本日の相手はCクラスの生徒となっている。
こんな簡単な話は誰でもちょっと考えれば思いつくはずだが、日々をホンワカと生きている明日香ちゃんには全く無縁の話。というよりも最初から負けるつもりなので、相手が誰でも関係がないというべきかもしれない。
「試合開始!」
剣を手にする相手が前に出てくる。明日香ちゃんは特に動きを見せないままで相手の出方を窺っている。負けたいけど痛いのは嫌なので、どうにか痛くないように負けたいのは先日と同様。
カキン!
剣と槍がぶつかり合う音が響く。だが最初の槍から伝わる手応えに明日香ちゃんは違和感を感じている。
(なんだかおかしいですねぇ。手応えがずいぶん軽いような気がします。そうだ! 槍に当たる手応えが弱いということは、痛くないってことですね! よーし、負けるぞぉぉ!)
変に気合が入る明日香ちゃんがここにいる。
カキン!
再び相手が踏み込んで剣を槍の穂先にぶつけてくる。何とか明日香ちゃんの槍を横に弾いて、懐に飛び込もうという意図で牽制してくる。だが明日香ちゃんが握っている槍はほとんどブレない。飛び込むタイミングがなかなか見つからない相手は、慎重になって明日香ちゃんの出方を窺う姿勢。
(ガンガン来てくれないんですか? しょうがないから、こっちからちょっと打ち掛かってみましょうか)
明日香ちゃんは、槍を握る手にちょっとだけ力を加えると、やや斜めに剣の腹を叩く。そう、それはほんの軽いつもりで。
ガキーン!
相手の剣が大きく弾かれる。両手で持っていた剣がすっぽ抜けて、彼方に飛んでいく。明日香ちゃんが軽く放った一撃で相手は得物を失っている。
「参りました!」
「それまでぇぇ! 勝者、赤!」
「ええぇぇぇぇぇぇぇ!」
明日香ちゃんとしては相手を動かすために剣をちょっと突っついただけのつもり。まさかその手から剣が吹っ飛んでいくなんて完全に想定外。
しかし、これで勝敗が決している。また勝ってしまった明日香ちゃんのほうが逆に呆然自失の有様。
「勝ちたくなかったのに、なんで勝ってしまうんでしょうか?」
独り言を呟く明日香ちゃん、その肩が今日もガックリと下がっている。
そのまま憮然として控え室へと戻っていく明日香ちゃんであった。
【お知らせ】
いつも当作品をご愛読いただきましてありがとうございます。この度こちらの小説に加えまして新たに異世界ファンタジー作品を当サイトに掲載させていただきます。この作品同様に多くの方々に目を通していただけると幸いです。すでにたくさんのお気に入り登録もお寄せいただいておりまして、現在ファンタジーランキングの40位前後に位置しています。作品の詳細は下記に記載いたしております。またこの作品の目次のページ左下に新作小説にジャンプできるアイコンがありますので、どうぞこちらをクリックしていただけるようお願い申し上げます。
新小説タイトル 〔クラスごと異世界に召喚されたんだけどなぜか一人多い 浮いている俺はクラスの連中とは別れて気の合う仲間と気ままな冒険者生活を楽しむことにする〕
異世界召喚モノにちょっとだけSF要素を取り入れた作品となっておりますが、肩の力を抜いて楽しめる内容です。皆様この小説同様に第1話だけでも覗きに来てくださいませ。
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「面白かった」
「続きが気になる」
「早く投稿して!」
と感じていただいた方は是非とも【お気に入り登録】や【いいねボタン】などをポチッとしていただくと作者のモチベーションに繋がります! 皆様の応援を心よりお待ちしております。
組み合わせの関係で初日の出番がなかったブルーホライズンの五人は2日目になってようやく初戦を迎える。
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「師匠とのデートが懸っているから、絶対に負けられないよね!」
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こうして一回戦に臨んだブルーホライズンの面々だが、対戦相手が中々厳しくて苦戦する。
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トップバッターで出場した渚は互いに決め手を欠いて惜しくも引き分けに終わる。悔しそうな表情の渚だが、相手がAクラスの男子だっただけに大健闘と呼べる評価を受けている。
「勝者、青!」
二番手の絵美は終了間際に相手の一撃を許して惜しくも敗退する。やはりロンギヌスを手にしないと調子が出なかったらしい。
「両者引き分け!」
真美は引き分けで終わる。まだ二刀流の練習を開始したばかりなので、右手一本で剣を操るだけでは十分な力を発揮できなかった。
「勝者、青!」
ほのかも健闘空しく敗れる。左手の盾をうまく生かして善戦したものの、戦法を変えたばかりではAクラス相手に苦戦するのは当然。
そして、最後に残った唯一の希望は…
「なんだよ! みんな、そんなお通夜みたいない顔をしているじゃないぜ! この美晴様がビシッと勝利を挙げて見せるからな! ガハハハハ!」
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ガシン!
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「おりゃぁぁぁ!」
気合を全開にした美晴が盾を思いっきり押し込むと、相手の大柄な体は一歩後退。圧力が弱まったと見た美晴は盾をかざしながら右に回りこみつつ、そのまま体ごとぶつかっていく。
「なにっ!」
まさか盾を前面に押し出して体当たりをしてくるとは思っていなかった相手は完全に意表を突かれてバランスを崩す。このチャンスを見逃さずに、すかさず美晴が今一度盾を手にして思いっきりぶつかっていく。それはもう気合を前面に押し出した美晴ならではの戦い方というべきであろう。
「うわぁぁぁ!」
バランスを崩したところにさらに盾の一撃を食らった相手は、堪らずにその場に転倒。
「ここだぁぁぁ!」
倒れた相手に美晴が飛び掛かる。そのまま馬乗りになると、ヘルメットに向かって短剣を突き下ろしていく。
ガキン!
短剣が相手のフェイスガードに当たる大きな音が響く。気合が入りすぎている美晴は寸止めなどというお手柔らかな手段を取らない。そのまま相手を殺す勢いで短剣を振り下ろしている。
「そこまでぇぇ!」
慌てて審判が止めに入る。両者を引き剥がすようにして分けると、双方に開始戦まで戻るように命じる。
「勝者、赤!」
改めて勝ち名乗りを受けた美晴は両手を突き上げて喜びを表す。
「これで師匠とデートだぁぁぁぁ!」
勝ち名乗りの代わりに美晴が大声で発したデート宣言に場内は唖然とするのであった。
◇◇◇◇◇
控え室で防具を解いた美晴はパーティーが見守っているスタンドへ戻ってくる。その表情はこれ以上ないほど晴れやか。
「やったぜ! 師匠とのデートをゲットしたせぇぇぇ!」
「はぁ~… よかったわね」
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「全部美晴ちゃんが勝ってくれたおかげです!」
美晴以外の四人が涙を流して喜ぶのんでいる。
それよりもなぜ美晴が五人で出掛けようと提案したかというと、美晴はこの年まで男子と付き合った経験がなかったというれっきとした理由が存在している。もちろん二人っきりでどこかへ出掛けるなど想定外のさらに外の話。最初から全員でデートをするつもりだったよう。こんな美晴の意気地のなさのおかげでパーティーメンバー全員がおこぼれにあずかることとなる。
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こんな簡単な話は誰でもちょっと考えれば思いつくはずだが、日々をホンワカと生きている明日香ちゃんには全く無縁の話。というよりも最初から負けるつもりなので、相手が誰でも関係がないというべきかもしれない。
「試合開始!」
剣を手にする相手が前に出てくる。明日香ちゃんは特に動きを見せないままで相手の出方を窺っている。負けたいけど痛いのは嫌なので、どうにか痛くないように負けたいのは先日と同様。
カキン!
剣と槍がぶつかり合う音が響く。だが最初の槍から伝わる手応えに明日香ちゃんは違和感を感じている。
(なんだかおかしいですねぇ。手応えがずいぶん軽いような気がします。そうだ! 槍に当たる手応えが弱いということは、痛くないってことですね! よーし、負けるぞぉぉ!)
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カキン!
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明日香ちゃんは、槍を握る手にちょっとだけ力を加えると、やや斜めに剣の腹を叩く。そう、それはほんの軽いつもりで。
ガキーン!
相手の剣が大きく弾かれる。両手で持っていた剣がすっぽ抜けて、彼方に飛んでいく。明日香ちゃんが軽く放った一撃で相手は得物を失っている。
「参りました!」
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「ええぇぇぇぇぇぇぇ!」
明日香ちゃんとしては相手を動かすために剣をちょっと突っついただけのつもり。まさかその手から剣が吹っ飛んでいくなんて完全に想定外。
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