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2:二人旅
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尚、3日以内に身分証を作れなかった場合は街を出ていく時に尋問されるし、こっそり住み着こうとした場合には仮証を辿って捕縛されるらしい。
だから変な気は起こすなよ、と言われた。
実際問題、身分証を作らないと言うことはなんらかの理由で作れないのでは?
と、邪推をされる・それを許すと言うこと。勿論その場合の作れない理由はなんらかの指名手配をされている、などが主だろう。
勿論身分証が無くたって都度金を出し水晶に触れて問題が無ければ入ることは出来る。
出来るが、どう考えたってお互いに手間である。よほど怠慢なタイプでなければ衛兵としては毎回作るように推奨せざるを得ない。金の無駄だぞ、と。嫌がる素振りを見せれば訝しまれるのは目に見えている。
訝しまれるのを厭い、しかし身分証を作ることは是とせず、かといってうまい回避文句を作っておけないなら、小さな村を転々と移る方法を取る他無いだろう。
しかし、小さな村は別の意味で厄介だ。どちらを取るかは……己自身の厄介事次第だろうけれど。
身分証の作成を冒険者でと選択した場合は、やはり定期的になんらかの依頼をこなさないと恩恵が弱くなる。
どのギルドのものでも、権利の剥奪まではされないが、依頼を受けずにただの身分証としてしか利用しない場合は売買のお得さだとか宿予約の優先度が下がる。
勿論依頼には危険を伴うものがあるので、出来なさそうだと思えば避けたって構わない。そもそも薬草採取だって、街の外の自生しているものなら魔物が跋扈している中向かわねばならないだろう。
街の中の手伝いも、それなりに気を張っていなければ実は危険と隣り合わせだったりもする。2階以上の建物の上から、何かが頭上に落ちてくる……なんてことも、ないとは言えない。
とは言え怯えすぎ気にしすぎでなにも出来ない、だけはやはり避けたいところ。
身分証を作るために金を使い果たし、装備や道具を揃えられないとなると本末転倒だ。それゆえにこの街をまとめる者はギルドと連携し、それぞれ得があるよう考えたのだろう。
とは言えこの政策はこの街くらいではないだろうか。聞きながらそんなことを思っていたが、やはり衛兵たちから見ても正直少ないだろうと思っているらしい。
確かにあまり聞かない方法だ。なんと言うか、丁寧に暮らそうとする者には手厚そうな対応だと思う。
初めてでこの街に来たのは良かったかもな、と笑って言っていた。かなり気さくな男だ。ベリーも感謝の言葉を言いながらにこやかに頷いていた。俺も礼を伝えておいた。
それはそれとして、やたらと長話をされたが良いのだろうかと周囲を見渡せば、俺たちの後ろでは興味深そうに耳を立てていたし、前の方ではどうやら審査が滞っていたようだ。
もしかするとあまり待たないように、ある程度間隔を決めてあるのかもしれない。
「……はい。ふふ。可愛い盛りの弟です。貴重なお話ありがとうございました」
ぽふん、と頭に手を置かれて意識を戻せば、今度は雑談をしていたらしい。どうでもいい様なことも幾つか話して、次は魔道具で審査があることを教わった。そして彼らは俺たちの後ろに並ぶ商人へと流れていく。
だから変な気は起こすなよ、と言われた。
実際問題、身分証を作らないと言うことはなんらかの理由で作れないのでは?
と、邪推をされる・それを許すと言うこと。勿論その場合の作れない理由はなんらかの指名手配をされている、などが主だろう。
勿論身分証が無くたって都度金を出し水晶に触れて問題が無ければ入ることは出来る。
出来るが、どう考えたってお互いに手間である。よほど怠慢なタイプでなければ衛兵としては毎回作るように推奨せざるを得ない。金の無駄だぞ、と。嫌がる素振りを見せれば訝しまれるのは目に見えている。
訝しまれるのを厭い、しかし身分証を作ることは是とせず、かといってうまい回避文句を作っておけないなら、小さな村を転々と移る方法を取る他無いだろう。
しかし、小さな村は別の意味で厄介だ。どちらを取るかは……己自身の厄介事次第だろうけれど。
身分証の作成を冒険者でと選択した場合は、やはり定期的になんらかの依頼をこなさないと恩恵が弱くなる。
どのギルドのものでも、権利の剥奪まではされないが、依頼を受けずにただの身分証としてしか利用しない場合は売買のお得さだとか宿予約の優先度が下がる。
勿論依頼には危険を伴うものがあるので、出来なさそうだと思えば避けたって構わない。そもそも薬草採取だって、街の外の自生しているものなら魔物が跋扈している中向かわねばならないだろう。
街の中の手伝いも、それなりに気を張っていなければ実は危険と隣り合わせだったりもする。2階以上の建物の上から、何かが頭上に落ちてくる……なんてことも、ないとは言えない。
とは言え怯えすぎ気にしすぎでなにも出来ない、だけはやはり避けたいところ。
身分証を作るために金を使い果たし、装備や道具を揃えられないとなると本末転倒だ。それゆえにこの街をまとめる者はギルドと連携し、それぞれ得があるよう考えたのだろう。
とは言えこの政策はこの街くらいではないだろうか。聞きながらそんなことを思っていたが、やはり衛兵たちから見ても正直少ないだろうと思っているらしい。
確かにあまり聞かない方法だ。なんと言うか、丁寧に暮らそうとする者には手厚そうな対応だと思う。
初めてでこの街に来たのは良かったかもな、と笑って言っていた。かなり気さくな男だ。ベリーも感謝の言葉を言いながらにこやかに頷いていた。俺も礼を伝えておいた。
それはそれとして、やたらと長話をされたが良いのだろうかと周囲を見渡せば、俺たちの後ろでは興味深そうに耳を立てていたし、前の方ではどうやら審査が滞っていたようだ。
もしかするとあまり待たないように、ある程度間隔を決めてあるのかもしれない。
「……はい。ふふ。可愛い盛りの弟です。貴重なお話ありがとうございました」
ぽふん、と頭に手を置かれて意識を戻せば、今度は雑談をしていたらしい。どうでもいい様なことも幾つか話して、次は魔道具で審査があることを教わった。そして彼らは俺たちの後ろに並ぶ商人へと流れていく。
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