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2:二人旅
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しおりを挟む「そう言えば下で色々聞いてきたんだけどね」
「……」
口に含んでいるので、言葉は返さずに視線で続きを促せば、冒険者たちから聞いたこの町の武器・防具・道具屋、ピンからキリまでの話。
朝食の美味しいレストラン、ランチがお得なレストラン、夜のムードがいいレストラン、屋台ではどの店の何が特にいいかなどなど。使えると言えば使えるし、使えないと言えば使えないネタを貰ってきたらしい。
「あとは衛兵の一部は金を握らせると融通してくれるらしい、とか二つとなりの街にダンジョンが出来たらしいが結構難易度が高くて戻ってきてない冒険者が居るらしいとか」
「なぜそっちを先に言わない?」
飲み込んだタイミングで指摘をすれば、肩をすくめて笑うだけ。
どうせ話を引き延ばしたいとかその程度だと思う。引き延ばさなくとも俺はまだ食事を終えていない。
「ダンジョンには興味があるが……」
「そうだね。高難易度なんて滅多にお目にかかれないものだけど……でもここから二つ先なんて正直弱い魔物ばかりのはずなんだけどね」
「ランクが高くてコボルトあたりだったと記憶しているが……」
「そうだねぇ……集団戦が不得手な場合は苦戦するかなって感じだね」
群れを成す魔物は基本的に、単体の能力こそ低めだがこと連携に関しては恐ろしいほど巧みだ。
囮・誘導役と奇襲役がハマっている。集団の中で動きが鈍いものは、狩った獲物を運ぶなどの役割を持っているので、基本無駄がない。
司令塔役をいち早く見極める必要があるし、攻撃役をしとめる火力も忘れてはいけない。
コボルトは素材としてそこまで重要なものがないから、いっそすべて焼き払うというのも強引な手法ではあるが、悪くはない。ただ、世の中の集団戦が得意な種族のごく一部、稀にしか会えない相手などは余すところなく貴重な素材だったりするので、殲滅戦に持ち込むのはぎりぎりまで避けたいこともある。
死んでは元も子もないので、逃げられる手段の一つなら悩むまでもないだろうが。
ということで、このあたりの魔物は手間こそあるが慢心さえなければ酷い負け戦になることはないはずで。
たまに出来上がるダンジョンもまた、周辺の状態に似通るはずであるから、二つ先のそれが高難易度とは正直思えず。
とは言え弱いと断じられる魔物にも例外はある。
冊子にも何気なく書かれてあったが、種族が生活するのに適正な土地だとまれに恩恵があって、知られ公開されている情報から1~3割ほど強くなっていることがある。
逆に、不適合な土地に住み続けられる存在は、とても強力だったりもする(どうしようもなくてとても弱い場合も勿論あるのだが)
そういった場合には、世界共通情報上では危険度が低ランクとされていても、特殊な地域でのみ中ランクほどになってしまう魔物も一部存在するとされている。全てが把握されているわけではないため、ギルドでも注意が促されている。
例えば海などに住む魔物は陸付近に居ればいるほど弱体化が激しいが、体の一部にでも水の供給があるだけで能力が跳ね上がるそうだ。
羽根や翼のある飛行系種族は空などの遮蔽物のない場所が得意と言うのも知られた話。逃げ場がないともとれるが、逆に言えばどのようにも逃げ回れる。森などに行けば、葉や枝などがあって身こそ隠せるがうまく飛び回れないないだろう。
と、色々と考えてみたが、どちらにしてもこの国でのコボルト種はそこまでの強さではない。一部地域でのみ能力値情報が更新された、などと言う話も特に耳にしてはいない。
この件についての詳細が知りたければ、自らダンジョンへ向かうしかないだろう。やがては、行きたい。
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