相棒は邪龍らしい。

渡邉 幻日

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2:二人旅

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それはそうと……。
「お前からみて、この町の武器・防具屋には価値がありそうか」
「そうだねえ……まずは実物を見たいところだけど……。興味があるところはある、かな」
「では日が昇ったら覘いてみるか」
場所を聞けば宿の近くに建っているらしい。ちょうどいい。
先ほど目を通したギルドの冊子を、ベリーにも目を通すようにと渡す。

かつての屋敷で数か月、それから俺との旅を経て人間の生活をそれなりに見知っただろうけれど、冒険者としての行いなどは人間である俺も知らなかったことがあったし、こういったものも見ておいて損はないだろう。
ベリーならば選んだ立場上立ち回りにもうまく活用できるはずだ。
ぱらりと流し読みをしたあと、魔力を通していた。俺と同じことをしたな……まあ当然か。あの厚みじゃあな……。


俺が寝起きかつ食後にあたるので、しばらく雑談をしてから寝ることにした。
差し当たっては明日向かう店について。
近くにある武器と防具の店を見に行く。他は武器のみ、防具のみが定番だが、その店はいろいろ扱いがあるらしい。それでいて質も悪くないのだそうだ。なんでも偏屈な店主が、その時ハマっているモノを作り続けるのだとか。嫁さんが快活なひとだから店として成り立っているとまで言われているらしい。
なんにしても商品は悪くないので、店主らと付き合いが出来る人間は贔屓にしているとかなんとか。

そのあとには出店の商品を見て回りながら商業ギルドを見て、良さそうなら作っていたポーションを売ってしまいたいところだ。空間魔法の中のものは悪くならないように出来るし収納数に明確な上限はないが、何となく圧迫感を感じてしまう。それにそれほど供給されているわけではなかった筈なので、必要なところに使われる方が良いだろう。
とは言えギルドに登録したばかりで実績もないし、いきなり大量に卸すことはしない方が良いだろうとも思う。
いらぬ嫌疑をかけられるのが目に浮かぶ。

腹が満たされて、改めて睡魔がやってきたので、抗うことなく眠りに落ちていった。



わいわいと賑やかしい街並みだ。ついでに、確かに微かながら金属を叩く音が聞こえてくる。防音の効果がある壁に阻まれてこれならば、実際はさぞ喧しいことだろう。宿から斜め向かいに昨日話していた店舗があるので、気になる店が他にありそうではあるがまずは武器・防具の店へ向かう。


《武器・防具の店 エムヴァン》
「……うん、なんていうか繊細でいて力強い字だねぇ。元気があるっていうか」
「子供の落書きか」
「おれが柔らかく言った意味ィ!」
「ずいぶん言ってくれるじゃねえか。入るのか、入らねえのか」
大きな看板を見上げながら話していたら、背後から声を掛けられた。言い回しからして店主だっただろうか。くるりと体ごと振り返れば、同じくらいの身長で体格のいい、ひげがもじゃもじゃした壮年くらいの男が居た。これはあまりにも……。
「お前さんの想像通り、俺はここの店主でドワーフってやつだな」
「……ぶしつけな視線を向けて申し訳ない」
「んん? お前さん、子供なんじゃあないのか?」
「子供だが……?」
「フフッ」

俺とドワーフの店主と互いに首を傾げあっていると、一人訳知りな反応をするベリーが笑っている。
「店主、弟が申し訳ない。ちゃんと見ていくつもりだから許しておくれよ」
手を引かれるどころか幼い子供扱いで抱え上げられ、ベリーは軽い足取りで店内へと入っていった。
ちりん、とやけに澄んだ音を出すドアベルに目が行く。見た目はとてもシンプルで、その辺につけられているものと違いはなさそうだが、とても耳に残る音だった。
「……坊主のお眼鏡に適ったか」
見すぎていたのか、後から入ってきた店主もドアベルに目を向けながら声を掛けてきた。
「あー……ああ、とても綺麗な音だと思う」
「そうかい」
ふむぅ、と感嘆とともにあごひげを撫でて店の奥へと入っていった。
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