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ウワサの橋
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ウワサの橋
コウジは一人で参加した観光地巡りのバスツアーに、どこか心地よさを感じていた。参加者は年配の夫婦や友人同士が多く、若い一人参加者はほとんどいない。でも、写真を撮ったり、ぼんやり物思いにふけるのが好きなコウジにとって、この独特な静けさはむしろ心を落ち着けてくれた。
現地に到着すると、参加者たちはそれぞれ散っていった。コウジもぶらぶらと歩いていると、ひとりでスマホを見ながらキョロキョロしている女性が目に留まった。見覚えがある。バスで隣に座っていた女性だった。
「何か探してるんですか?」
声をかけると、彼女は少し驚いたようにこちらを見た。
「あっ……えっと、この辺りなんですけど……」
差し出されたスマホの地図を見て、コウジはすぐに場所を理解した。
「よかったら、ご案内しますよ」
彼女の名前はサユリ。なんとコウジと同じく、一人でバスツアーに参加するのが好きだという。目的地まで一緒に歩きながら、少しずつ打ち解けていった。
バスに戻ると、再びサユリの隣に座ることになった。
「さっきはありがとうございました」
「こちらこそ。楽しめました?」
「はい、おかげさまで」
会話は自然と弾み、次の観光地では一緒に回ることになった。お互いの写真を撮り合い、土産物を見て笑い合い、少しずつ距離が縮まっていくのを感じた。
ツアーの終わりには連絡先を交換した。
後日、サユリからメッセージが届いた。
「今度、ここ行ってみませんか?」
添えられていたのは“恋人橋”と呼ばれる観光名所の写真だった。
一瞬戸惑ったが、コウジも前から気になっていた場所だった。
「いいですね。行きましょう」
そう返すと、すぐに日程が決まり、週末のドライブが決まった。
迎えた当日。コウジは車でサユリを迎えに行った。
ふたりとも、異性との遠出は初めてで、どこかぎこちない。でも、車内の沈黙が苦になることはなく、少しずつ会話が増えていった。
途中のパーキングエリアで休憩すると、サユリがホットコーヒーを差し出してきた。
「はい、どうぞ。温かいのが飲みたくなるかなって」
「ありがとう」
ベンチに並んで座り、コーヒーを口に運ぶ。ふと横を見ると、笑顔のサユリがいる。その表情に見とれて、思わず言葉がこぼれた。
「……見とれちゃった」
しまった、と慌てて視線を外すコウジに、サユリは小さく笑って「私も、見てました」と呟いた。
目的地に着く頃には、ふたりの会話は自然と弾み、お互いに相手の趣味や感性に共感し合いながら、観光を楽しんだ。
やがて、「恋人橋」と書かれた案内板の前に立った。
“手を繋いで渡ると、ふたりの仲が深まる”——そう書かれていた。
「どうする? 別の場所行ってもいいよ?」
そう言ったコウジに、サユリはそっと手を差し出した。
「コウジくんとじゃ……ダメかな?」
赤くなった頬を隠すようにうつむくサユリ。
コウジは、その手をしっかり握った。
「ううん、サユリちゃんと渡りたい」
ふたりはぎこちなく橋を渡り、その先にある“恋人椅子”でも、恥ずかしそうにハートのポーズで写真を撮った。
帰り道、サユリは眠ってしまった。静かな車内、心地よい呼吸音。休憩所で目を覚ました彼女が、またコーヒーを差し出す。
「運転、ありがとう」
「ううん。サユリちゃんと一緒だから、楽しいよ」
別れ際、ふたりは見つめ合い、自然と唇が触れ合った。
「コウジくんのこと、好き」
「サユリちゃん、僕も……好きだよ」
もう一度、そっとキスを交わす。
「まだ、帰りたくないな……」
そうつぶやいたサユリに、コウジは微笑んで言った。
「じゃあ、夜のドライブでも行こうか」
「運転、疲れてない?」
「大丈夫。……サユリちゃんが好きだから」
アクセルを踏む足に、迷いはなかった。
夜の道へ走り出す車内には、確かな温もりがあった。
コウジは一人で参加した観光地巡りのバスツアーに、どこか心地よさを感じていた。参加者は年配の夫婦や友人同士が多く、若い一人参加者はほとんどいない。でも、写真を撮ったり、ぼんやり物思いにふけるのが好きなコウジにとって、この独特な静けさはむしろ心を落ち着けてくれた。
現地に到着すると、参加者たちはそれぞれ散っていった。コウジもぶらぶらと歩いていると、ひとりでスマホを見ながらキョロキョロしている女性が目に留まった。見覚えがある。バスで隣に座っていた女性だった。
「何か探してるんですか?」
声をかけると、彼女は少し驚いたようにこちらを見た。
「あっ……えっと、この辺りなんですけど……」
差し出されたスマホの地図を見て、コウジはすぐに場所を理解した。
「よかったら、ご案内しますよ」
彼女の名前はサユリ。なんとコウジと同じく、一人でバスツアーに参加するのが好きだという。目的地まで一緒に歩きながら、少しずつ打ち解けていった。
バスに戻ると、再びサユリの隣に座ることになった。
「さっきはありがとうございました」
「こちらこそ。楽しめました?」
「はい、おかげさまで」
会話は自然と弾み、次の観光地では一緒に回ることになった。お互いの写真を撮り合い、土産物を見て笑い合い、少しずつ距離が縮まっていくのを感じた。
ツアーの終わりには連絡先を交換した。
後日、サユリからメッセージが届いた。
「今度、ここ行ってみませんか?」
添えられていたのは“恋人橋”と呼ばれる観光名所の写真だった。
一瞬戸惑ったが、コウジも前から気になっていた場所だった。
「いいですね。行きましょう」
そう返すと、すぐに日程が決まり、週末のドライブが決まった。
迎えた当日。コウジは車でサユリを迎えに行った。
ふたりとも、異性との遠出は初めてで、どこかぎこちない。でも、車内の沈黙が苦になることはなく、少しずつ会話が増えていった。
途中のパーキングエリアで休憩すると、サユリがホットコーヒーを差し出してきた。
「はい、どうぞ。温かいのが飲みたくなるかなって」
「ありがとう」
ベンチに並んで座り、コーヒーを口に運ぶ。ふと横を見ると、笑顔のサユリがいる。その表情に見とれて、思わず言葉がこぼれた。
「……見とれちゃった」
しまった、と慌てて視線を外すコウジに、サユリは小さく笑って「私も、見てました」と呟いた。
目的地に着く頃には、ふたりの会話は自然と弾み、お互いに相手の趣味や感性に共感し合いながら、観光を楽しんだ。
やがて、「恋人橋」と書かれた案内板の前に立った。
“手を繋いで渡ると、ふたりの仲が深まる”——そう書かれていた。
「どうする? 別の場所行ってもいいよ?」
そう言ったコウジに、サユリはそっと手を差し出した。
「コウジくんとじゃ……ダメかな?」
赤くなった頬を隠すようにうつむくサユリ。
コウジは、その手をしっかり握った。
「ううん、サユリちゃんと渡りたい」
ふたりはぎこちなく橋を渡り、その先にある“恋人椅子”でも、恥ずかしそうにハートのポーズで写真を撮った。
帰り道、サユリは眠ってしまった。静かな車内、心地よい呼吸音。休憩所で目を覚ました彼女が、またコーヒーを差し出す。
「運転、ありがとう」
「ううん。サユリちゃんと一緒だから、楽しいよ」
別れ際、ふたりは見つめ合い、自然と唇が触れ合った。
「コウジくんのこと、好き」
「サユリちゃん、僕も……好きだよ」
もう一度、そっとキスを交わす。
「まだ、帰りたくないな……」
そうつぶやいたサユリに、コウジは微笑んで言った。
「じゃあ、夜のドライブでも行こうか」
「運転、疲れてない?」
「大丈夫。……サユリちゃんが好きだから」
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