【完結】結婚式の隣の席

山田森湖

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第7話「わたしの嫉妬と、あなたの傷」

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第7話「わたしの嫉妬と、あなたの傷」
「ねえ、ケイスケって……今まで何人くらい付き合った?」

ベッドの中。隣で寝転ぶ彼の背中に問いかけると、一瞬、空気が止まった気がした。

「なんで?」

「なんとなく。……知りたくなった」

沈黙。私は、こういうときの彼の癖を知っている。答えたくないことは、質問を質問で返す。

「5人くらいかな。大学から数えて」

「ふーん」

ふーん、なんて言いながら、胸の奥がモヤモヤしていた。
その5人に、どんな風に触れて、どんな風に名前を呼んで、どんな風に愛していたんだろう。
私は、その一番最後に過ぎないんだ。

嫉妬。
小さな、それでいて厄介な感情。

私は、口をつぐんだ。

日曜の昼。ケイスケは仕事の同僚とランチに行った。
「元カノじゃないよ?」
そう言われても、疑ってしまう。

私の携帯に、既読のつかないLINEが溜まっていく。

既読にならない時間が長くなるほど、心の中にある不安が、大きくなっていく。

私は、自分で自分が面倒くさい女だと思った。

夜。帰ってきたケイスケは、ちょっとだけ酔っていた。

「ごめん、遅くなった」

「ううん」

私は無理に笑った。

「楽しかった?」

「まあ……仕事の話がほとんどだけど、ちょっとだけ恋バナも出たよ」

「……誰の?」

「俺の」

思わず、顔を上げてしまった。
ケイスケは照れたように笑っていたけど、私は笑えなかった。

「昔さ、ちょっとだけ、相手の浮気でボロボロになったことあるんだよね」

「……そうなんだ」

「でも、それ以来かな。誰かと“ちゃんと向き合いたい”って思ったのは、クルミが初めてだった」

その言葉に、私はぎゅっと唇を噛んだ。
嫉妬していた自分が、恥ずかしくなった。

「……ごめんね。私、すぐ疑ったり、ヤキモチ妬いたりするの」

「いいよ、そういうとこ、ちゃんと見せてくれて嬉しい」

彼は、私の髪を撫でながら、続けた。

「ほんとは、俺だってこわいんだ。クルミに嫌われたらって思うと、何も言えなくなる」

私は、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。

私たちは似てる。臆病で、不器用で、それでも誰かを大事にしたいと思ってる。

そう気づけた瞬間だった。

その夜は、抱き合った。

上品で、でもどこか切実な、触れ合い。

お互いの過去も、傷も、少しずつ撫でるように重ねた肌。

言葉は少なくていい。ただ、体温と鼓動が、お互いの存在を確かめ合っていた。

「ケイスケ……」

「ん?」

「私、あなたとなら、ちゃんと向き合える気がするよ」

「うん、俺も」

ぎゅっと抱きしめられて、私は静かに目を閉じた。

もう、あの結婚式の“隣の席”じゃない。
今は、彼の隣で、ちゃんと歩いている。
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