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第12話「“あいつら”より幸せになろう」
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第12話「“あいつら”より幸せになろう」
入籍届に、私たちの名前が並んでいる。
ケイスケの名前と、私の名前。
くっきりと書かれたふたつの文字を見つめていたら、胸の奥がじんわりと熱くなってくる。
「ほんとに出しちゃうよ?」
「うん。出しちゃおう」
役所の窓口で手続きを終えたあと、私たちはふたりで顔を見合わせて、自然と笑っていた。
「あっけないもんだな」
「うん、でも……すごく、嬉しい」
私の手を、ケイスケが握ってくれる。
それだけで、今の気持ちは充分だった。
午後からは、ふたりで新婚旅行の計画を練る。
といっても、派手な海外旅行じゃなくて、静かな温泉宿を探していた。
「ここどう? 川沿いで、貸切露天風呂つき」
「え、そこ高くない?」
「でも、記念だし」
「じゃあ……奮発、しちゃおっか」
画面の向こうの景色に、私たちは未来の自分たちを重ねて笑った。
夜、ベッドの中で。
「クルミさ」
ケイスケがぽつりと口にした。
「……?」
「最初、あの結婚式で出会ったとき。あのとき、もし隣が別の席だったら、こうなってなかったのかなって、ふと思ってさ」
「うーん……そうかもね」
「でも、俺、運命ってあると思うんだよ」
私は彼の胸に顔をうずめながら、小さく笑った。
「私も。あのとき、隣があなただったから、あいつらの結婚にも折り合いつけられたの。……あ、言っちゃった」
「言っちゃったな」
「だってさ、今なら言える。――あいつらより、私たちの方が幸せだって」
ケイスケがククッと笑う。
「間違いないね」
「うん。嫉妬も、不安も、全部超えて、ちゃんと向き合えたから。私たち、ちゃんと幸せになれたんだと思う」
その言葉に、ケイスケはそっとキスをくれた。
優しく、でも深く、想いを重ねるように。
そのまま、体を寄せ合って、肌と肌を重ねながら、何度も「好き」を確かめ合った。
静かに、あたたかく、ひとつになる感覚。
こんなふうに愛せる人と出会えた私は、ほんとうに、幸せ者だ。
「ケイスケ」
「ん?」
「これからも、たまに不安になると思う。面倒くさくて、ごめんね」
「それがクルミでしょ。ずっとそばにいるよ」
「……ありがとう」
目を閉じながら、私はそっとつぶやいた。
――“あいつら”より幸せになろう。
そんなノリで始まった私たちだけど、今はもう、他人との比較じゃない。
私は、ケイスケと一緒にいる未来が、一番好きだ。
終わり、じゃない。ここからが、はじまり。
“私たちの”物語の、ほんとうの第一章。
入籍届に、私たちの名前が並んでいる。
ケイスケの名前と、私の名前。
くっきりと書かれたふたつの文字を見つめていたら、胸の奥がじんわりと熱くなってくる。
「ほんとに出しちゃうよ?」
「うん。出しちゃおう」
役所の窓口で手続きを終えたあと、私たちはふたりで顔を見合わせて、自然と笑っていた。
「あっけないもんだな」
「うん、でも……すごく、嬉しい」
私の手を、ケイスケが握ってくれる。
それだけで、今の気持ちは充分だった。
午後からは、ふたりで新婚旅行の計画を練る。
といっても、派手な海外旅行じゃなくて、静かな温泉宿を探していた。
「ここどう? 川沿いで、貸切露天風呂つき」
「え、そこ高くない?」
「でも、記念だし」
「じゃあ……奮発、しちゃおっか」
画面の向こうの景色に、私たちは未来の自分たちを重ねて笑った。
夜、ベッドの中で。
「クルミさ」
ケイスケがぽつりと口にした。
「……?」
「最初、あの結婚式で出会ったとき。あのとき、もし隣が別の席だったら、こうなってなかったのかなって、ふと思ってさ」
「うーん……そうかもね」
「でも、俺、運命ってあると思うんだよ」
私は彼の胸に顔をうずめながら、小さく笑った。
「私も。あのとき、隣があなただったから、あいつらの結婚にも折り合いつけられたの。……あ、言っちゃった」
「言っちゃったな」
「だってさ、今なら言える。――あいつらより、私たちの方が幸せだって」
ケイスケがククッと笑う。
「間違いないね」
「うん。嫉妬も、不安も、全部超えて、ちゃんと向き合えたから。私たち、ちゃんと幸せになれたんだと思う」
その言葉に、ケイスケはそっとキスをくれた。
優しく、でも深く、想いを重ねるように。
そのまま、体を寄せ合って、肌と肌を重ねながら、何度も「好き」を確かめ合った。
静かに、あたたかく、ひとつになる感覚。
こんなふうに愛せる人と出会えた私は、ほんとうに、幸せ者だ。
「ケイスケ」
「ん?」
「これからも、たまに不安になると思う。面倒くさくて、ごめんね」
「それがクルミでしょ。ずっとそばにいるよ」
「……ありがとう」
目を閉じながら、私はそっとつぶやいた。
――“あいつら”より幸せになろう。
そんなノリで始まった私たちだけど、今はもう、他人との比較じゃない。
私は、ケイスケと一緒にいる未来が、一番好きだ。
終わり、じゃない。ここからが、はじまり。
“私たちの”物語の、ほんとうの第一章。
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