【完結】曖昧な距離で愛している

山田森湖

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第58話「答えの形」

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第58話「答えの形」


月曜日、久しぶりに会社に出勤した。

「田中さん、おかえりなさい」

チームのみんなが迎えてくれる。

「ただいま。みんな、元気だった?」

「元気でしたよ」

山田も挨拶に来た。

「田中さん、お疲れ様でした」

「ありがとう。山田さん、元気だった?」

「はい。田中さんがいない間、頑張りました」

山田は笑顔で言う。

「実は、私、彼氏ができました」

「本当?よかったね」

「はい。田中さんのおかげです」

午後、上司に呼ばれた。

「田中さん、お疲れ様。プロジェクト、大成功だったよ」

「ありがとうございます」

「次も、大きなプロジェクトを任せたい」

「はい、お願いします」

「ただ、今度は国内だから、安心してくれ」

上司が笑う。

「奥さんに、感謝しないとな」

「はい」

夜、帰宅すると、美咲が笑顔で迎えてくれた。

「おかえり」

「ただいま」

「今日、どうだった?」

「みんな、温かく迎えてくれたよ」

「よかったね」

夕飯を食べながら、俺は思う。

この日常が、一番幸せだ。

美咲と一緒にいる。

それだけで、十分だ。

食後、二人でソファに座る。

「美咲」

「ん?」

「俺たち、恋人には戻れなかったね」

「うん」

「でも、それでよかったと思う」

「私も」

美咲が俺を見つめる。

「拓海、私たちの関係って、何だと思う?」

「何だろうね」

俺は少し考える。

「家族、かな」

「家族」

「うん。でも、ただの家族じゃない」

「どういう?」

「他人だからこそ、お互いを選び続ける関係」

美咲が笑う。

「それ、いいね」

「だろ?」

「曖昧で、程よい距離で」

「でも、確かな愛がある」

二人で見つめ合う。

「これが、俺たちの答えなんだ」

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