【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第11話「運命の結婚式」

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第11話「運命の結婚式」

結婚式当日の朝は、雲一つない快晴だった。

「美月、準備はいい?」

健一が迎えに来てくれた。黒のスーツに身を包んだ彼は、やはりハンサムだった。

「はい」

私は薄いブルーのドレスに、小さなパールのアクセサリーを合わせた。上品で控えめ、でも美しく見えるよう心がけた。

「きれいだね」

健一の言葉に、頬が温かくなった。

「ありがとう」

式場へ向かうタクシーの中で、健一が言った。

「美月、今日は本当にありがとう」

「どういたしまして」

「君がいなければ、僕は香織の結婚式に出席する勇気がなかった」

「健一が決めたことです」

「でも君が後押ししてくれたから」

式場は、都内の有名ホテルだった。エレガントな装飾が施されたチャペルに、多くの参列者が集まっていた。

「健一?」

声をかけられて振り返ると、健一の大学時代の友人だった。

「久しぶり。香織の結婚式に来るって聞いて、驚いたよ」

「ああ、こちら恋人の美月です」

「初めまして」

友人は私を見て、少し驚いたような表情を見せた。

「美しい方ですね。健一、やるじゃない」

その後、何人かの知り合いに紹介された。皆、健一に恋人ができたことを喜んでくれているようだった。

そして、香織の姿を見た。

ウェディングドレスに身を包んだ彼女は、息をのむほど美しかった。幸せそうな笑顔で、新郎と共に参列者に挨拶をしている。

「きれいね」

思わずつぶやいた。

「そうだね」

健一の声に、わずかな感慨があった。

挙式が始まった。香織が入場する時、健一の表情を横目で見ていた。

複雑な感情が、彼の顔に現れていた。懐かしさ、寂しさ、そして少しの後悔。

『やっぱり健一は、まだ香織さんを愛してるのかもしれない』

そんな不安が心をよぎった。

でも次の瞬間、健一が私の手を握った。

「大丈夫?」

小声で聞いてくれた。私のことを気にかけてくれている。

「大丈夫です」

神父が「永遠の愛を誓いますか」と尋ねる時、香織がちらりと健一の方を見たような気がした。その瞬間、私の胸がきゅっと痛んだ。

挙式が終わって披露宴会場に移動する時、香織が私たちのところにやってきた。

「健一、来てくれてありがとう」

「おめでとう、香織」

「美月さんも、ありがとうございます」

香織は私に微笑みかけた。でもその笑顔の奥に、何か複雑な感情があるのを感じた。

「お幸せに」

「ありがとう。でも健一...」

香織は少し躊躇してから言った。

「後で少し、二人で話せる?」

私の心臓が跳ねた。

「香織、今日は君の結婚式だ」

「分かってる。でも、どうしても話したいことがあるの」

健一は私を見た。

「美月、少しの間...」

「いいえ」

私は首を振った。

「私も一緒にお話を聞きます」

香織が驚いた表情を見せた。

「美月さん、でも...」

「健一と私は恋人同士です。秘密の話をする必要はありません」

強い口調で言った。

香織は困ったような表情になった。

「分かりました。披露宴が終わったら、三人で少し時間を取りましょう」

披露宴の間、私は香織を観察していた。新郎と幸せそうに過ごしているが、時々健一の方を見ている。

そして健一も、香織を見つめる瞬間があった。

『やっぱり、まだお互いに特別な感情があるのかもしれない』

そう思うと、胸が苦しくなった。

披露宴が終わって、私たちは三人でホテルのラウンジに移った。

「改めて、おめでとう」

健一が言うと、香織は微笑んだ。

「ありがとう。でも健一、実は...」

香織は少し躊躇してから続けた。

「私、今日まで迷ってた」

「何を?」

「本当にこの結婚でいいのかって」

健一の顔が青ざめた。

「香織、何を言ってるんだ」

「健一を見てて、思ったの。私、まだ健一のことが好きなのかもしれないって」

私の血が凍った。

「でも君は結婚したじゃないか」

「結婚はした。でも心は別」

香織は涙ぐんでいた。

「美月さん、ごめんなさい。でも私、正直な気持ちを言わずにはいられなかった」

私は立ち上がった。

「分かりました。お話は以上ですね」

「美月...」健一が困っている。

「健一、香織さんとゆっくりお話ください」

「待って、美月」

でも私はラウンジを出た。

ホテルのロビーで、私は一人でソファに座っていた。

『やっぱりこうなった』

心の準備はしていたつもりだった。でも実際に香織の告白を聞くと、胸が裂けそうに痛かった。

三十分ほど経って、健一がやってきた。

「美月」

「お話は終わりましたか?」

「美月、話を聞いてくれ」

健一は私の隣に座った。

「香織は混乱してるだけだ。結婚式という大きな節目で、過去を振り返って不安になっている」

「それで?」

「僕は香織に言った。『君は素晴らしい女性だし、昔は愛していた。でも今は違う。僕が愛してるのは美月だ』って」

その言葉に、少し心が軽くなった。

「本当ですか?」

「本当だ。美月、僕の答えは変わらない」

健一は私の手を取った。

「君が僕の人生のパートナーだ」

涙がこぼれそうになった。

「ありがとう、健一」

「僕の方こそ、ありがとう。今日、君がいてくれて本当によかった」

その夜、健一のマンションで、私たちは深く抱き合った。

「美月、愛してる」

「私も愛してます」

今度は迷いがなかった。お互いの気持ちが、本物だと確信できた。

恋人代行から始まった関係が、ついに本物の愛に変わった瞬間だった。

でも心の片隅で、小さな疑問が残っていた。

香織の告白は、本当に混乱からくるものだったのだろうか。それとも、本心だったのだろうか。

そしてもし本心だったとしたら、健一の気持ちは本当にもう揺れないのだろうか。

第11話 完
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