12 / 60
第12話「新しいスタート」
しおりを挟む
第12話「新しいスタート」
結婚式から一週間が過ぎた。香織の告白という試練を乗り越えた私たちの関係は、以前よりもずっと深いものになっていた。
「美月、今度の週末、僕の母に結婚の挨拶をしに行かない?」
健一がそう提案した時、私は思わずコーヒーカップを落としそうになった。
「結婚の挨拶?」
「うん。君と結婚したいんだ」
健一は真剣な表情で私を見つめていた。
「でも、まだ付き合い始めてそんなに経ってないのに」
「時間の長さは関係ない。僕は君と一生を共にしたい」
胸の奥が熱くなった。
「健一...」
「美月、僕と結婚してくれる?」
正式なプロポーズだった。
涙が溢れそうになったが、同時に不安もよぎった。
「私、健一にふさわしい女性でしょうか」
「何を言ってるんだ。君以上に僕にふさわしい人なんていない」
「でも私の過去は...」
「もうその話はやめよう」健一は私の手を取った。「過去は過去だ。大切なのは今と未来」
私は健一の真剣な眼差しを見つめた。
「はい。健一と結婚したいです」
健一は私を抱きしめた。
「ありがとう、美月。君を幸せにする」
「私も、健一を幸せにします」
週末、私たちは健一の実家を訪れた。お母さんは私たちの報告を聞いて、涙を流して喜んでくれた。
「まあ、本当に?美月さん、息子をよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「でも結婚式はいつ頃を予定してるの?」
健一が答えた。
「来年の春頃を考えています」
「それは楽しみね。準備、大変でしょうけど頑張って」
その夜、健一の実家で過ごしながら、私は幸せを噛み締めていた。
でも同時に、まだ解決していない問題もあった。
「健一、私の家族にも紹介したいのですが」
「もちろんだ。いつでも」
「でも、恋人代行の仕事のことは言えないと思います」
健一は理解を示してくれた。
「分かってる。君の判断に任せる」
翌週、私は久しぶりに実家に帰った。両親に健一のことを話すためだった。
「美月、恋人ができたって?」
母が興味深そうに聞いた。
「はい。実は、結婚を考えています」
「結婚?」
父も驚いている。
「お相手はどんな方なの?」
「IT関係の会社を経営している人です。とても優しくて、真面目な人」
私は健一の写真を見せた。
「ハンサムな方ね。美月にはもったいないくらい」
母が冗談めかして言った。
「お仕事の方は順調なの?翻訳の」
父の質問に、少し躊躇した。
「はい、少しずつですが」
恋人代行の仕事のことは、やはり言えなかった。
「近いうちに、彼を紹介したいと思います」
「ぜひお会いしたいわ。いつでも連れてきなさい」
数日後、健一と一緒に実家を訪れた。
「初めまして、高橋健一と申します」
健一は丁寧に挨拶をした。
「こちらこそ。娘がお世話になってます」
父も母も、健一を気に入ってくれたようだった。
「美月のことをよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
夕食を一緒に取りながら、健一は私の家族に自分のことを話してくれた。仕事のこと、将来のこと、そして私への愛情について。
「美月さんは、本当に素晴らしい女性です。僕が出会った中で一番素敵な人です」
そんな健一の言葉を聞いて、両親も安心してくれたようだった。
帰り道、健一が言った。
「君の両親、とても温かい人たちだね」
「喜んでくれてよかった」
「美月がこんなに素敵なのは、きっと家庭環境のおかげだね」
健一の言葉に、心が温かくなった。
でもその夜、一人でいる時間に、ふと不安がよぎった。
結婚となると、より深い関係になる。健一の友人、同僚、家族との付き合いも増える。その時、私の過去が問題になることはないだろうか。
翌日、由香と久しぶりに会った。
「美月、結婚するって本当?」
「うん。来年の春に」
「おめでとう!でも大丈夫?」
「何がですか?」
「恋人代行の過去とか、バレない?」
由香の心配は、私の不安でもあった。
「分からない。でも健一は受け入れてくれてる」
「健一さんはそうでも、周りの人は?特に健一さんのお母さんとか」
「それは...」
答えられなかった。
「美月、隠し続けるのは大変よ。いっそのこと、結婚前に全部話しちゃった方がいいんじゃない?」
由香の提案に、私は迷った。
「でも、もし受け入れてもらえなかったら」
「その程度の愛情だったってことよ。本当に愛してくれてるなら、過去なんて関係ないでしょう?」
由香の言葉は正しいと思った。でも実行するのは怖かった。
その夜、健一に相談した。
「健一、私たちが結婚したら、私の過去のこと、お母さんや友人たちに話すべきでしょうか」
健一は少し考えてから答えた。
「美月の判断に任せる。でも僕としては、話す必要はないと思う」
「どうしてですか?」
「過去は過去だから。今の美月がすべてだ」
健一の優しさが、ありがたかった。
「でも、もしバレたら」
「その時はその時だ。僕が美月を守る」
その言葉に、安心感を覚えた。
数日後、私は重要な決断をした。
恋人代行をしていた会社の元同僚から、連絡があったのだ。
「美月、久しぶり。元気にしてる?」
「はい、おかげさまで」
「実は相談があるの。新しい子の教育係をやってもらえない?時々でいいから」
「申し訳ありませんが、もうその業界からは完全に足を洗いました」
「そっか。恋人ができたって聞いたけど、本当?」
「はい。来年結婚予定です」
「へー、すごいじゃない。幸せになりなよ」
電話を切った後、私は改めて決意を固めた。
過去とは完全に決別する。新しい人生を始める。
健一との結婚を通して、本当の自分になるのだ。
しかし、過去は時として思わぬ形で現在に影響を与える。
私はまだそのことを知らなかった。
第12話 完
結婚式から一週間が過ぎた。香織の告白という試練を乗り越えた私たちの関係は、以前よりもずっと深いものになっていた。
「美月、今度の週末、僕の母に結婚の挨拶をしに行かない?」
健一がそう提案した時、私は思わずコーヒーカップを落としそうになった。
「結婚の挨拶?」
「うん。君と結婚したいんだ」
健一は真剣な表情で私を見つめていた。
「でも、まだ付き合い始めてそんなに経ってないのに」
「時間の長さは関係ない。僕は君と一生を共にしたい」
胸の奥が熱くなった。
「健一...」
「美月、僕と結婚してくれる?」
正式なプロポーズだった。
涙が溢れそうになったが、同時に不安もよぎった。
「私、健一にふさわしい女性でしょうか」
「何を言ってるんだ。君以上に僕にふさわしい人なんていない」
「でも私の過去は...」
「もうその話はやめよう」健一は私の手を取った。「過去は過去だ。大切なのは今と未来」
私は健一の真剣な眼差しを見つめた。
「はい。健一と結婚したいです」
健一は私を抱きしめた。
「ありがとう、美月。君を幸せにする」
「私も、健一を幸せにします」
週末、私たちは健一の実家を訪れた。お母さんは私たちの報告を聞いて、涙を流して喜んでくれた。
「まあ、本当に?美月さん、息子をよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「でも結婚式はいつ頃を予定してるの?」
健一が答えた。
「来年の春頃を考えています」
「それは楽しみね。準備、大変でしょうけど頑張って」
その夜、健一の実家で過ごしながら、私は幸せを噛み締めていた。
でも同時に、まだ解決していない問題もあった。
「健一、私の家族にも紹介したいのですが」
「もちろんだ。いつでも」
「でも、恋人代行の仕事のことは言えないと思います」
健一は理解を示してくれた。
「分かってる。君の判断に任せる」
翌週、私は久しぶりに実家に帰った。両親に健一のことを話すためだった。
「美月、恋人ができたって?」
母が興味深そうに聞いた。
「はい。実は、結婚を考えています」
「結婚?」
父も驚いている。
「お相手はどんな方なの?」
「IT関係の会社を経営している人です。とても優しくて、真面目な人」
私は健一の写真を見せた。
「ハンサムな方ね。美月にはもったいないくらい」
母が冗談めかして言った。
「お仕事の方は順調なの?翻訳の」
父の質問に、少し躊躇した。
「はい、少しずつですが」
恋人代行の仕事のことは、やはり言えなかった。
「近いうちに、彼を紹介したいと思います」
「ぜひお会いしたいわ。いつでも連れてきなさい」
数日後、健一と一緒に実家を訪れた。
「初めまして、高橋健一と申します」
健一は丁寧に挨拶をした。
「こちらこそ。娘がお世話になってます」
父も母も、健一を気に入ってくれたようだった。
「美月のことをよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
夕食を一緒に取りながら、健一は私の家族に自分のことを話してくれた。仕事のこと、将来のこと、そして私への愛情について。
「美月さんは、本当に素晴らしい女性です。僕が出会った中で一番素敵な人です」
そんな健一の言葉を聞いて、両親も安心してくれたようだった。
帰り道、健一が言った。
「君の両親、とても温かい人たちだね」
「喜んでくれてよかった」
「美月がこんなに素敵なのは、きっと家庭環境のおかげだね」
健一の言葉に、心が温かくなった。
でもその夜、一人でいる時間に、ふと不安がよぎった。
結婚となると、より深い関係になる。健一の友人、同僚、家族との付き合いも増える。その時、私の過去が問題になることはないだろうか。
翌日、由香と久しぶりに会った。
「美月、結婚するって本当?」
「うん。来年の春に」
「おめでとう!でも大丈夫?」
「何がですか?」
「恋人代行の過去とか、バレない?」
由香の心配は、私の不安でもあった。
「分からない。でも健一は受け入れてくれてる」
「健一さんはそうでも、周りの人は?特に健一さんのお母さんとか」
「それは...」
答えられなかった。
「美月、隠し続けるのは大変よ。いっそのこと、結婚前に全部話しちゃった方がいいんじゃない?」
由香の提案に、私は迷った。
「でも、もし受け入れてもらえなかったら」
「その程度の愛情だったってことよ。本当に愛してくれてるなら、過去なんて関係ないでしょう?」
由香の言葉は正しいと思った。でも実行するのは怖かった。
その夜、健一に相談した。
「健一、私たちが結婚したら、私の過去のこと、お母さんや友人たちに話すべきでしょうか」
健一は少し考えてから答えた。
「美月の判断に任せる。でも僕としては、話す必要はないと思う」
「どうしてですか?」
「過去は過去だから。今の美月がすべてだ」
健一の優しさが、ありがたかった。
「でも、もしバレたら」
「その時はその時だ。僕が美月を守る」
その言葉に、安心感を覚えた。
数日後、私は重要な決断をした。
恋人代行をしていた会社の元同僚から、連絡があったのだ。
「美月、久しぶり。元気にしてる?」
「はい、おかげさまで」
「実は相談があるの。新しい子の教育係をやってもらえない?時々でいいから」
「申し訳ありませんが、もうその業界からは完全に足を洗いました」
「そっか。恋人ができたって聞いたけど、本当?」
「はい。来年結婚予定です」
「へー、すごいじゃない。幸せになりなよ」
電話を切った後、私は改めて決意を固めた。
過去とは完全に決別する。新しい人生を始める。
健一との結婚を通して、本当の自分になるのだ。
しかし、過去は時として思わぬ形で現在に影響を与える。
私はまだそのことを知らなかった。
第12話 完
11
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる