【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第25話「試練と成長」

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第25話「試練と成長」

結婚から半年が過ぎた頃、私たちに最初の試練が訪れた。

「美月、実は相談があるんだ」

健一が深刻な表情で帰ってきた。

「どうしたんですか?」

「会社のプロジェクトで問題が起きた」

健一は疲れ切っているようだった。

「どんな問題ですか?」

「システムに大きな不具合があって、納期に間に合わない可能性が出てきた」

「それは大変」

「最悪の場合、僕の責任になる」

健一はソファに座り込んだ。

「プロジェクトリーダーとして、チーム全員に迷惑をかけてしまう」

私は健一の隣に座った。

「健一、詳しく話してくれませんか?」

健一は問題の詳細を説明してくれた。技術的な部分は分からなかったが、彼がいかに追い詰められているかは理解できた。

「健一、私に何かできることはありませんか?」

「美月がいてくれるだけで十分だ」

「でも」

「本当だよ。君がいてくれるから、僕は頑張れる」

それから健一は、毎日遅い帰宅が続いた。時には徹夜で会社に泊まることもあった。

「おかえりなさい」

深夜に帰ってくる健一を、私はいつも待っていた。

「美月、遅くまで起きてなくていいのに」

「夫の帰りを待つのは妻の役目です」

「ありがとう」

健一は疲れ切っていたが、私が待っていることで少しでも安らげているようだった。

「お疲れさま。お風呂沸いてますよ」

「助かる」

健一がお風呂に入っている間、私は夜食を準備した。

「美味しい」

簡単なうどんだったが、健一は嬉しそうに食べてくれた。

「美月の料理を食べると、力が湧いてくる」

「本当ですか?」

「本当だよ。君がいてくれるから、僕は戦える」

そんな生活が一ヶ月続いた。

私も翻訳の仕事があったが、健一のサポートを優先した。

「美月、君の仕事に支障が出てない?」

「大丈夫です。出版社の方も理解してくださってます」

「申し訳ない」

「夫婦なんですから、お互い様です」

ある夜、健一が珍しく早く帰ってきた。

「どうしたんですか?」

「実は、解決の糸口が見つかったんだ」

健一の顔が明るかった。

「本当ですか?」

「うん。まだ油断はできないけど、希望が見えてきた」

「よかった」

健一は私を抱きしめた。

「美月、この一ヶ月、本当にありがとう」

「どういたしまして」

「君がいなかったら、きっと途中で諦めていた」

「健一は諦めるような人じゃありません」

「でも精神的に参ってた。君が支えてくれたから持ちこたえられた」

その言葉が嬉しかった。

「私も健一に支えられてます」

「お互い様だね」

そして一週間後、ついに朗報が届いた。

「美月!」

健一が勢いよくドアを開けて入ってきた。

「どうしたんですか?」

「プロジェクト、成功した!」

「本当ですか?」

「システムの不具合も修正できて、予定より早く納期を迎えられそうだ」

健一は私を抱き上げて回した。

「やりましたね!」

「美月のおかげだ」

「健一が頑張ったからです」

その夜はお祝いをした。

「乾杯」

「乾杯」

久しぶりに、健一の笑顔を見ることができた。

「美月、この試練を乗り越えたことで、僕たちの絆がより深くなったような気がする」

「私もそう思います」

「夫婦って、こういうことなんだね」

「はい。お互いを支え合うこと」

「美月、結婚してよかった」

「私もです」

翌月、健一の会社では昇進の話が出た。

「美月、部長職の打診があったんだ」

「それはすごいじゃないですか」

「君の支えがあったからこそだよ」

「健一の実力です」

「でも部長になると、もっと忙しくなる」

健一は少し心配そうだった。

「美月に負担をかけてしまうかもしれない」

「大丈夫です。私も翻訳の仕事で忙しくなりそうですし」

「そうか」

「お互い忙しくても、支え合っていけばいいんです」

「ありがとう、美月」

健一は部長職を受けることにした。

私たちの結婚生活は、試練を通してより強固なものになっていた。

恋人代行から始まった関係が、今では真のパートナーシップになっている。

「美月、僕たちなら何でも乗り越えられる」

「はい。一緒なら」

新しい挑戦が待っているが、私たちは恐れていなかった。

お互いがいるから。

愛があるから。

第25話 完
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