【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第48話「本の出版」

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第48話「本の出版」

健太の本『愛が紡ぐ国際家族の物語』が出版される日がやってきた。

「ママ、パパ、美咲、見てください」

健太がボストンから送ってくれた写真には、本屋に並んだ彼の著書があった。

「すごいじゃない、健太」

「お兄ちゃん、作家さんになったのね」

美咲が興奮していた。

日本でも翻訳版が出版されることになり、私たちは出版記念のイベントに招待された。

「美月さん、健太さんのお母様ですね」

編集者の方が挨拶してくれた。

「息子がお世話になっております」

「素晴らしい本です。多くの読者に感動を与えています」

書店でのトークイベントでは、健太がオンラインで参加した。

「この本は、私の家族の物語です」

スクリーン越しの健太が、満席の会場に語りかけた。

「恋人代行という特殊な出会いから始まった両親の関係が、どのように真実の愛に変わったか」

「そして、その愛がどのように世界中で育まれ、次世代に受け継がれたか」

会場の人たちは、真剣に聞いていた。

「現代社会では、様々な形の愛があります。大切なのは、出会いの形ではなく、その後に育まれる愛の深さです」

質疑応答の時間になった。

「お母様に質問です。恋人代行のお仕事をされていた時、こんな未来を想像していましたか?」

マイクを向けられた私は、少し考えてから答えた。

「全く想像していませんでした。でも今振り返ると、すべてが必然だったような気がします」

「どういう意味ですか?」

「恋人代行の仕事で学んだことが、実は本当の愛を育むために必要だったんです」

「具体的には?」

「相手の気持ちを理解すること、思いやりを持って接すること。それらは演技として学びましたが、結果的に真実の愛の基礎になりました」

会場から拍手が起こった。

別の質問者が手を挙げた。

「お子さんたちは、お母様の過去をどう受け止められましたか?」

美咲が立ち上がった。

「私が答えます」

「美咲...」

「ママの過去は、ママの勇敢さの証明だと思います」

会場がざわめいた。

「どんな仕事でも、ママは一生懸命やっていました。そして運命的にパパと出会って、私たち家族が生まれました」

美咲の言葉に、私は涙が出そうになった。

「出会いの形は関係ありません。愛の深さが全てです」

会場から大きな拍手が起こった。

イベントが終わった後、多くの読者の方が声をかけてくれた。

「勇気をもらいました」

「愛の形は様々だということがよく分かりました」

「素敵な家族ですね」

私たちの物語が、多くの人に希望を与えているのを感じた。

数週間後、健太の本は ベストセラーになった。

「健太、おめでとう」

電話で祝福すると、健太は謙虚だった。

「僕の本じゃなくて、僕たち家族の本です」

「でも書いたのは健太よ」

「でも物語を作ったのは、ママとパパです」

健太の優しさに、胸が温かくなった。

本の成功によって、私たちにも新しい機会が生まれた。

「美月さん、講演会の依頼があります」

「講演会?」

「国際結婚や多文化家族についてお話していただけませんか?」

「私なんかでよろしいのですか?」

「健太さんの本を読んで、ぜひあなたのお話を聞きたいという声が多いんです」

こうして、私は講演活動を始めることになった。

最初の講演は緊張した。

「皆様、本日はありがとうございます」

会場には、様々な年齢の方々がいらしていた。

「私は、恋人代行という仕事から始まって、今では国際的な翻訳者として働いています」

「その間に、世界四カ国で暮らし、二人の子供を国際人として育てました」

聴衆の皆さんは、興味深そうに聞いてくれていた。

「人生は予測がつきません。でも愛があれば、どんな困難も乗り越えられます」

講演後、質問をしてくれた若い女性がいた。

「私も恋人代行の仕事をしていました。でも自分を責めてしまいます」

その告白に、胸が痛んだ。

「あなたは何も悪いことをしていません」

「でも...」

「恋人代行の仕事も、人を幸せにする仕事です。そして何より、あなた自身が幸せになる権利があります」

女性の目に涙が浮かんだ。

「ありがとうございます」

この経験が、私の使命を明確にしてくれた。

同じような境遇の人たちに、希望を与えたい。

そんな想いで、講演活動を続けることにした。

健一も私の活動を全面的にサポートしてくれた。

「美月の話は、多くの人を救うと思う」

「そうでしょうか?」

「確信している。君の経験は貴重な財産だ」

美咲も大学で、私たちの家族について発表していた。

「多様性の中で育った経験を、みんなに伝えたい」

「どんな反応?」

「とても興味を持ってくれる。特に留学生の子たちが」

家族みんなで、それぞれの形で社会に貢献していた。

ある日、健太から嬉しい報告があった。

「ママ、僕、国連でのインターンシップが決まりました」

「本当?」

「はい。夢に一歩近づきました」

「おめでとう、健太」

健太の夢が、着実に現実になっていく。

美咲も語学教師を目指して、教育実習に励んでいた。

「子供たちに言葉を教えるって、本当に楽しい」

「良い先生になりそうね」

「健太お兄ちゃんみたいに、世界の役に立ちたい」

兄妹で同じ志を持っている。親として、これ以上の喜びはなかった。

その夜、健一と話していた。

「美月、僕たちの人生、本当に豊かになったね」

「そうですね。恋人代行から始まったなんて、今では信じられません」

「でもそれがスタートだった」

「運命的な出会いでしたね」

「君に出会えて、本当によかった」

「私もです」

窓の外を見ると、満月が美しく輝いていた。

「健一、私たちの物語はまだ続きますね」

「そうだね。健太と美咲の活躍も楽しみだ」

「きっと私たち以上に素晴らしいことを成し遂げるでしょう」

愛する家族と過ごす毎日が、人生の最高の贈り物だった。

恋人代行から始まった物語が、今では多くの人に希望を与える物語になっている。

人生の不思議さと美しさを、改めて感じていた。

第48話 完
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