【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第47話「巣立ちの時」

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第47話「巣立ちの時」

健太がハーバード大学院に旅立つ日がやってきた。空港で見送りをする私たちの心は、誇りと寂しさが入り混じっていた。

「健太、体に気をつけて」

「ありがとう、ママ」

「困ったことがあったら、いつでも連絡して」

「はい。でも大丈夫です。僕は世界のどこでも生きていけますから」

健太の自信に満ちた笑顔を見て、この子が本当に立派に成長したことを実感した。

「美咲、お兄ちゃんがいなくて寂しくない?」

「寂しいけど、健太お兄ちゃんの夢を応援したいの」

十八歳になった美咲も、すっかり大人の考えを持つようになっていた。

「健太、国連での夢、絶対に叶えてね」

「もちろんです。そして美咲も、世界中の子供たちに言葉を教える先生になって」

「約束する」

兄妹は固く握手を交わした。

搭乗時間が近づいた。

「パパ、ママ、本当にありがとうございました」

健太が深く頭を下げた。

「僕を世界市民として育ててくれて」

「それは健太が素直に成長してくれたからよ」

「恋人代行から始まった僕たちの家族が、こんなに素晴らしい家族になったのも、ママとパパの愛があったからです」

健太の言葉に、涙が止まらなかった。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

健太の姿が搭乗ゲートの向こうに消えていくのを見守りながら、私は胸がいっぱいだった。

「美月、寂しいね」

健一も涙をこらえているようだった。

「でも誇らしいです」

「そうだね。健太は立派になった」

美咲も涙ぐんでいた。

「みーちゃんも、健太お兄ちゃんみたいに頑張る」

「美咲も十分頑張ってるわ」

数ヶ月後、健太からボストンでの生活の報告が届いた。

『ママ、パパ、美咲へ
ハーバードでの生活が始まりました。世界各国から集まった学生たちと一緒に学ぶのは、とても刺激的です。
僕の多言語能力と国際経験が、思った以上に役立っています。
教授からも「君のような国際的背景を持つ学生は貴重だ」と言われました。
ママとパパが与えてくれた経験に、改めて感謝しています。
美咲も大学生活、楽しんでね。
愛を込めて
健太』

美咲もすっかり大学生活に慣れていた。

「今日、国際交流のイベントがあったの」

「どんなイベント?」

「留学生に日本語を教えるボランティア」

「楽しかった?」

「とても。みーちゃんの夢に一歩近づいた気がする」

美咲は着実に自分の道を歩んでいた。

私も新しい挑戦を始めていた。

「美月さん、国際会議での同時通訳をお願いできませんか?」

「どちらの会議ですか?」

「アジア太平洋教育サミットです」

大きな国際会議での同時通訳。新しい挑戦だった。

「やらせていただきます」

健一も新しいプロジェクトに取り組んでいた。

「美月、今度のプロジェクトは特別なんだ」

「どんなプロジェクトですか?」

「世界の教育格差を解消する国際プログラム」

「素晴らしいですね」

「健太や美咲の世代が活躍できる世界を作りたいんだ」

健一の仕事も、次世代への貢献という色合いを強めていた。

アジア太平洋教育サミットでの同時通訳は、私にとって大きな転機となった。

「美月さんの通訳は素晴らしかったです」

国連の教育担当者から高い評価をいただいた。

「今度、ニューヨークでの会議でもお願いできませんか?」

国連本部での通訳の機会をいただけることになった。

家に帰って健一に報告した。

「すごいじゃないか」

「健太の夢の場所で働けるなんて」

「君も国際的に活躍できるようになったね」

「健一のおかげです。海外での経験がなければ、こんな機会はありませんでした」

数週間後、私はニューヨークの国連本部にいた。

健太に連絡すると、ボストンから駆けつけてくれた。

「ママ、すごいじゃないですか」

国連本部のロビーで再会した健太は、誇らしげだった。

「僕の将来の職場で、ママが働いているなんて」

「健太の夢に少し近づけたかしら」

「はい。僕もママのように、世界に貢献したいです」

母子で国連本部を歩きながら、私は感慨深かった。

恋人代行をしていた頃の私が、まさか国連で働く日が来るなんて。

人生は本当に予測がつかない。

「ママ、僕の論文、覚えてます?」

「もちろん」

「あれが出版社の目に留まって、本になることになったんです」

「本当?」

「はい。『愛が紡ぐ国際家族の物語』というタイトルで」

健太の本が出版されることになった。私たちの物語が、多くの人に読まれることになる。

「恋人代行のことも書かれてるのよね」

「はい。でも愛の物語として書いています」

「ありがとう、健太」

「こちらこそ、ありがとうございます。こんな素晴らしい物語を与えてくれて」

その夜、ホテルで健一とビデオ通話をした。

「美月、健太に会えてよかったね」

「はい。本当に立派になりました」

「君も国連で活躍して、素晴らしい」

「美咲はどう?」

「元気だよ。『ママとお兄ちゃん、すごいね』って言ってる」

画面に美咲が現れた。

「ママ、おつかれさま」

「ありがとう、美咲」

「みーちゃんも頑張る。世界一の語学の先生になる」

「きっとなれるわ」

家族は離れていても、心は繋がっている。

これが私たちの家族の絆だった。

翌日、国連での仕事を終えて、健太と一緒に昔を思い出していた。

「ママ、恋人代行の仕事、大変でしたか?」

「大変だったけれど、パパと出会えたから」

「運命ですね」

「そう思う。あの時パパと出会わなかったら、健太も美咲も生まれていなかった」

「僕たちの存在も奇跡ですね」

「そうよ。だから毎日を大切に生きなければいけない」

「はい。僕も世界のために働きます」

健太の決意を見ていると、この子が将来どんな素晴らしい仕事をするのか楽しみだった。

恋人代行から始まった私たちの物語は、次世代へと受け継がれていく。

愛は世代を超えて続いていく。

それが私たちの物語の真髄だった。

第47話 完
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