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第46話「過去と向き合う時」
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第46話「過去と向き合う時」
健太が大学三年生、美咲が高校三年生になった頃、ついに私たちが避けて通れない時がやってきた。
「ママ、パパ、お話があります」
健太が真剣な表情で切り出した。
「どんなお話?」
「僕、卒業論文で『現代における家族の形』について研究してるんです」
私の心臓が止まりそうになった。
「それで、色々調べていたら気づいたことがあって」
「何を?」
「僕たちの出会いの話、いつも曖昧だったでしょう?」
健一と私は顔を見合わせた。
「お仕事で出会ったって言ってたけど、具体的にはどんな仕事だったんですか?」
ついにこの時が来た。
美咲も興味深そうに聞いていた。
「みーちゃんも知りたい」
「健太、美咲」
私は深呼吸をした。
「実は、ママとパパの出会いについて、お話していないことがあります」
「やっぱり」
健太は予想していたような表情だった。
「どんなお話?」
美咲が身を乗り出した。
健一が私の手を握ってくれた。
「話そう、美月」
「はい」
私は覚悟を決めた。
「ママは昔、恋人代行というお仕事をしていました」
「恋人代行?」
健太が首をかしげた。
「どんなお仕事?」
美咲も不思議そうだった。
「寂しい人のために、恋人のふりをするお仕事です」
しばらく静寂が続いた。
健太が最初に口を開いた。
「つまり、パパもその...」
「そうです。パパは最初、お客さんでした」
美咲の目が大きくなった。
「でも、お客さんじゃないでしょう?パパは」
「最初はそうでした。でも時間が経つにつれて、本当の恋人になったの」
健太は少し考えてから言った。
「いつ頃から本当の恋人に?」
「健太のパパのお友達のパーティーの頃かな」
「僕が生まれる前?」
「そうよ。その頃にはもう、ママは本当にパパを愛していました」
健一が付け加えた。
「僕も美月を愛していた。もう仕事の関係ではなくなっていたんだ」
美咲が手を挙げた。
「じゃあ、愛し合って結婚したんでしょう?」
「そうよ」
「それって、普通の恋愛と同じじゃない?」
美咲の純粋な指摘に、はっとした。
健太も頷いた。
「確かに。出会い方が少し変わっていただけで、結果的には普通の恋愛結婚ですね」
「そう思ってくれる?」
「もちろんです」
健太は微笑んだ。
「それより、ママがそんな大変な時期を経験して、今こんなに幸せな家族を築いてくれたことに感謝してます」
涙が溢れそうになった。
「ありがとう、健太」
美咲も駆け寄ってきた。
「ママ、だいじょうぶ。みーちゃんたち、ママとパパの子供で幸せだから」
私たちは家族四人で抱き合った。
「隠していて、ごめんなさい」
「いえ、話すのは勇気が必要だったでしょう」
健一が言った。
「でも正直に話してくれて、ありがとう」
その夜、健一と二人で話していた。
「美月、よく話してくれた」
「もう隠し事はしたくありませんでした」
「子供たちの反応、素晴らしかったね」
「はい。私たちが思っていた以上に理解してくれました」
「愛情深く育った証拠だ」
数日後、健太が改めて話しかけてきた。
「ママ、僕の論文のこと覚えてる?」
「現代の家族形態についてでしょう?」
「そうです。実は、僕たち家族のことを書きたいんです」
驚いた。
「私たちのこと?」
「はい。恋人代行から始まって、世界各地で暮らして、子供たちが国際人として育った家族の物語」
「でも恋人代行のことを書くのは...」
「もちろん、プライバシーに配慮して書きます。でも僕は思うんです」
健太は真剣だった。
「この物語は、多くの人に希望を与えると思うんです」
「希望?」
「愛の形は様々だということ。どんな出会いでも、真実の愛に変わることができるということ」
健太の言葉に、胸が熱くなった。
「それに、現代の多様な家族の形を示すいい例だと思います」
「書いてもいいの?」
「はい。僕たち家族の物語を、学術的な観点から紹介したいんです」
美咲も賛成してくれた。
「みーちゃんも賛成。みんなが幸せになるなら」
「ありがとう、美咲」
こうして、健太は私たちの家族の物語を論文にまとめ始めた。
数ヶ月後、健太の論文が完成した。
「読んでみてください」
論文のタイトルは「国際化時代における新しい家族のかたち—ある国際家族の事例研究」
読み進めながら、涙が止まらなかった。
健太は私たちの物語を、愛と成長の物語として美しく描いてくれていた。
恋人代行という出会いも、運命的な出会いとして表現されていた。
「素晴らしい論文ね」
「ありがとうございます」
「この論文は、きっと多くの人の心に届くわ」
健太の論文は大学で高く評価され、後に学術誌にも掲載されることになった。
美咲も高校の卒業論文で、私たちの多言語家族について書いた。
「言語は愛を伝える手段」
美咲の論文のテーマだった。
「家族の愛があれば、どんな言語でも心は通じ合う」
美咲らしい、温かい視点からの論文だった。
その年の春、健太は東大を卒業し、アメリカの大学院に進学することが決まった。
美咲も国際関係学部への進学が決まった。
「いよいよ二人とも巣立っていくのね」
「寂しいですが、誇らしいです」
健一も感慨深そうだった。
卒業式の日、家族写真を撮った。
「この写真も、僕たちの物語の一部になるんですね」
健太が言った。
「そうね。恋人代行から始まった物語の」
「最終章に向かって」
美咲が付け加えた。
「最終章じゃないわ」
私は首を振った。
「これからが新しい章の始まりよ」
「新しい章?」
「健太と美咲が、世界に羽ばたいていく章よ」
家族の物語は、まだまだ続いていく。
愛があれば、どんな困難も乗り越えられる。
そのことを、私たちの人生が証明している。
第46話 完
健太が大学三年生、美咲が高校三年生になった頃、ついに私たちが避けて通れない時がやってきた。
「ママ、パパ、お話があります」
健太が真剣な表情で切り出した。
「どんなお話?」
「僕、卒業論文で『現代における家族の形』について研究してるんです」
私の心臓が止まりそうになった。
「それで、色々調べていたら気づいたことがあって」
「何を?」
「僕たちの出会いの話、いつも曖昧だったでしょう?」
健一と私は顔を見合わせた。
「お仕事で出会ったって言ってたけど、具体的にはどんな仕事だったんですか?」
ついにこの時が来た。
美咲も興味深そうに聞いていた。
「みーちゃんも知りたい」
「健太、美咲」
私は深呼吸をした。
「実は、ママとパパの出会いについて、お話していないことがあります」
「やっぱり」
健太は予想していたような表情だった。
「どんなお話?」
美咲が身を乗り出した。
健一が私の手を握ってくれた。
「話そう、美月」
「はい」
私は覚悟を決めた。
「ママは昔、恋人代行というお仕事をしていました」
「恋人代行?」
健太が首をかしげた。
「どんなお仕事?」
美咲も不思議そうだった。
「寂しい人のために、恋人のふりをするお仕事です」
しばらく静寂が続いた。
健太が最初に口を開いた。
「つまり、パパもその...」
「そうです。パパは最初、お客さんでした」
美咲の目が大きくなった。
「でも、お客さんじゃないでしょう?パパは」
「最初はそうでした。でも時間が経つにつれて、本当の恋人になったの」
健太は少し考えてから言った。
「いつ頃から本当の恋人に?」
「健太のパパのお友達のパーティーの頃かな」
「僕が生まれる前?」
「そうよ。その頃にはもう、ママは本当にパパを愛していました」
健一が付け加えた。
「僕も美月を愛していた。もう仕事の関係ではなくなっていたんだ」
美咲が手を挙げた。
「じゃあ、愛し合って結婚したんでしょう?」
「そうよ」
「それって、普通の恋愛と同じじゃない?」
美咲の純粋な指摘に、はっとした。
健太も頷いた。
「確かに。出会い方が少し変わっていただけで、結果的には普通の恋愛結婚ですね」
「そう思ってくれる?」
「もちろんです」
健太は微笑んだ。
「それより、ママがそんな大変な時期を経験して、今こんなに幸せな家族を築いてくれたことに感謝してます」
涙が溢れそうになった。
「ありがとう、健太」
美咲も駆け寄ってきた。
「ママ、だいじょうぶ。みーちゃんたち、ママとパパの子供で幸せだから」
私たちは家族四人で抱き合った。
「隠していて、ごめんなさい」
「いえ、話すのは勇気が必要だったでしょう」
健一が言った。
「でも正直に話してくれて、ありがとう」
その夜、健一と二人で話していた。
「美月、よく話してくれた」
「もう隠し事はしたくありませんでした」
「子供たちの反応、素晴らしかったね」
「はい。私たちが思っていた以上に理解してくれました」
「愛情深く育った証拠だ」
数日後、健太が改めて話しかけてきた。
「ママ、僕の論文のこと覚えてる?」
「現代の家族形態についてでしょう?」
「そうです。実は、僕たち家族のことを書きたいんです」
驚いた。
「私たちのこと?」
「はい。恋人代行から始まって、世界各地で暮らして、子供たちが国際人として育った家族の物語」
「でも恋人代行のことを書くのは...」
「もちろん、プライバシーに配慮して書きます。でも僕は思うんです」
健太は真剣だった。
「この物語は、多くの人に希望を与えると思うんです」
「希望?」
「愛の形は様々だということ。どんな出会いでも、真実の愛に変わることができるということ」
健太の言葉に、胸が熱くなった。
「それに、現代の多様な家族の形を示すいい例だと思います」
「書いてもいいの?」
「はい。僕たち家族の物語を、学術的な観点から紹介したいんです」
美咲も賛成してくれた。
「みーちゃんも賛成。みんなが幸せになるなら」
「ありがとう、美咲」
こうして、健太は私たちの家族の物語を論文にまとめ始めた。
数ヶ月後、健太の論文が完成した。
「読んでみてください」
論文のタイトルは「国際化時代における新しい家族のかたち—ある国際家族の事例研究」
読み進めながら、涙が止まらなかった。
健太は私たちの物語を、愛と成長の物語として美しく描いてくれていた。
恋人代行という出会いも、運命的な出会いとして表現されていた。
「素晴らしい論文ね」
「ありがとうございます」
「この論文は、きっと多くの人の心に届くわ」
健太の論文は大学で高く評価され、後に学術誌にも掲載されることになった。
美咲も高校の卒業論文で、私たちの多言語家族について書いた。
「言語は愛を伝える手段」
美咲の論文のテーマだった。
「家族の愛があれば、どんな言語でも心は通じ合う」
美咲らしい、温かい視点からの論文だった。
その年の春、健太は東大を卒業し、アメリカの大学院に進学することが決まった。
美咲も国際関係学部への進学が決まった。
「いよいよ二人とも巣立っていくのね」
「寂しいですが、誇らしいです」
健一も感慨深そうだった。
卒業式の日、家族写真を撮った。
「この写真も、僕たちの物語の一部になるんですね」
健太が言った。
「そうね。恋人代行から始まった物語の」
「最終章に向かって」
美咲が付け加えた。
「最終章じゃないわ」
私は首を振った。
「これからが新しい章の始まりよ」
「新しい章?」
「健太と美咲が、世界に羽ばたいていく章よ」
家族の物語は、まだまだ続いていく。
愛があれば、どんな困難も乗り越えられる。
そのことを、私たちの人生が証明している。
第46話 完
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