【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第57話「愛の遺産」

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第57話「愛の遺産」

健一郎が中学生、美穂が小学校高学年になった頃、私は人生の総仕上げについて考えるようになっていた。

「ママ、最近よく考え事をしてるけど、何か心配事?」

美咲が気遣ってくれた。

「心配事じゃないの。むしろ、これまでの人生を振り返って、感謝の気持ちでいっぱいなの」

「どんなことを考えてるの?」

「私たちの愛の物語を、どうやって次世代に残していこうかって」

「本はもう出版してるじゃない」

「そうね。でももっと具体的な形で残したいの」

健一と相談すると、彼も同じことを考えていた。

「美月、財団を設立するのはどうだろう」

「財団?」

「愛と国際理解を促進する財団」

「どんな活動をするの?」

「恋人代行のような特殊な境遇にある女性の支援」

「それは素晴らしいアイデアね」

「国際結婚や多文化家族の支援も」

「子供たちの国際教育支援も含めましょう」

こうして、『愛の架け橋財団』の設立準備が始まった。

健太も積極的に協力してくれた。

「僕の国連での経験も活かせそうです」

「どんな風に?」

「国際的なネットワークを使って、世界各地で活動できます」

美咲も教育の専門家として参加してくれた。

「ワールドハート学園のノウハウも提供できます」

「ありがとう」

財団の設立記念式典では、多くの人が集まってくれた。

恋人代行時代を知る人、講演会で出会った人、本の読者、そして家族や友人たち。

「皆様、本日はありがとうございます」

私は壇上で挨拶した。

「この財団は、愛には様々な形があるということを伝えるために設立しました」

聴衆の皆さんが真剣に聞いてくれていた。

「私は恋人代行という仕事から始まって、本当の愛を知りました」

「その愛が、こんなに大きな輪になりました」

「今度は、その愛を社会に還元したいと思います」

式典には、健一郎と美穂もビデオメッセージを送ってくれた。

「おばあちゃん、おめでとうございます」

健一郎が英語と日本語で話していた。

「僕も大きくなったら、この財団で働きたいです」

美穂も可愛い声で言った。

「みーちゃんも、お手伝いしたい。世界中の子供たちと仲良しになりたい」

孫たちの応援メッセージに、会場も温かい雰囲気に包まれた。

財団の活動は多岐にわたった。

恋人代行や風俗業界で働く女性たちへのカウンセリング支援。

国際結婚家庭の子供たちへの教育支援。

多文化理解促進のためのセミナー開催。

そして海外にルーツを持つ子供たちの語学学習支援。

一年が過ぎる頃には、財団の活動が各方面で評価されるようになった。

「美月さんの財団の活動、素晴らしいですね」

テレビ番組のインタビューで、コメンテーターの方が言ってくれた。

「特に、偏見を持たれがちな職業の女性への支援は画期的です」

「ありがとうございます」

「財団設立の原動力は何だったのですか?」

「自分自身の経験です」

「恋人代行のご経験ですね」

「はい。その経験があったからこそ、同じような境遇の女性の気持ちが分かります」

「そして今、その経験が多くの人を救っている」

「それが私の使命だと思っています」

番組放送後、多くの反響があった。

特に印象的だったのは、現在も恋人代行の仕事をしている若い女性からの手紙だった。

『美月さんへ
私は現在、恋人代行の仕事をしています。
毎日、自分を責める気持ちでいっぱいでした。
でも美月さんの番組を見て、希望が湧きました。
私も、いつか本当の愛に出会えるかもしれない。
そして今の経験も、きっと意味があるのだと思えるようになりました。
ありがとうございました。』

この手紙を読んで、改めて財団活動の意義を感じた。

健一郎と美穂も、それぞれの形で財団を応援してくれていた。

健一郎は中学校で「愛の架け橋プロジェクト」を立ち上げた。

「同級生たちと一緒に、多文化理解の活動をしてるの」

「どんな活動?」

「外国にルーツを持つ生徒との交流会とか」

中学生らしい等身大の活動だった。

美穂はオンラインでの語学レッスンをボランティアで続けていた。

「今、世界十五ヶ国の子供たちと繋がってるの」

「すごいじゃない」

「みんな、とても仲良し。言葉は違うけど、心は同じだって分かるの」

孫たちの活動を見ていると、愛の連鎖が確実に広がっているのを感じた。

ある日、健一と二人で財団のオフィスにいる時、彼が言った。

「美月、君は本当にすごいことを成し遂げたね」

「どういう意味?」

「恋人代行から始まって、こんなに大きな社会貢献活動まで」

「一人ではできませんでした。健一や子供たち、そして多くの人の支えがあったから」

「でも原点は君の愛だった」

「そうでしょうか」

「確信している」

健一は私の手を取った。

「君の愛が、僕を変え、子供たちを育て、孫たちを導き、そして今、社会を変えている」

その言葉に、涙が溢れた。

「ありがとう、健一」

「こちらこそ、ありがとう。君と出会えて、僕の人生は本当に豊かになった」

窓の外を見ると、夕日が美しく輝いていた。

恋人代行から始まった愛の物語が、今では多くの人の人生を照らしている。

これが私の人生の遺産だった。

愛を育て、愛を伝え、愛を制度として残すこと。

それが私にできる、最大の社会貢献だった。

第57話 完
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