【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第56話「次世代の夢」

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第56話「次世代の夢」

健一郎が十歳、美穂が九歳になった頃、二人の将来への意識がはっきりしてきた。

「おばあちゃん、僕の夢を聞いて」

健一郎がビデオ通話で真剣な表情をしていた。

「どんな夢?」

「僕、世界中の子供たちが仲良くできるような仕事をしたい」

「具体的にはどんな?」

「パパみたいに国連で働いて、戦争をなくしたい」

十歳でこんな立派な夢を持っている健一郎。

「素晴らしい夢ね」

「でも僕、まだ子供だから、何をすればいいか分からない」

「まずは勉強することね。そして色んな国の文化を学ぶこと」

「うん。ママが中国語も教えてくれてるの」

エミリーが映像に現れた。

「Kenichiro is learning Mandarin very quickly」

「そうなの?」

「Yes. He wants to communicate with children all over the world」

健一郎の語学への情熱は、私たちの家系を受け継いでいるようだった。

美穂からも嬉しい報告があった。

「おばあちゃん、みーちゃんの学校で発表会があったの」

「どんな発表?」

「『世界の挨拶』っていうテーマで、十ヶ国の言葉で挨拶を教えたの」

「十ヶ国語?」

美咲が補足してくれた。

「美穂は今、十ヶ国語の挨拶ができるんです」

「すごいじゃない」

「見て見て」

美穂が披露してくれた。

「こんにちは、Hello, Guten Tag, 你好, Bonjour, Hola, Ciao, Привет, مرحبا, สวัสดี」

流暢に十ヶ国語で挨拶する九歳の美穂。

「素晴らしいわ」

「みーちゃんの夢はね」

美穂が目を輝かせた。

「世界中の子供たちに、お互いの言葉を教える先生になりたいの」

「それって、お母さんと同じ夢ね」

「うん。でも、みーちゃんは学校じゃなくて、インターネットで世界中の子供たちに教えたいの」

九歳でオンライン教育のアイデアを持っている美穂。

時代の変化を感じた。

その夜、健一と話していた。

「健一、孫たちの夢を聞いてると、感動しませんか?」

「そうだね。二人とも、世界平和に貢献したいという気持ちを持ってる」

「私たちの価値観が受け継がれているのね」

「でも彼らの方法は、僕たちとは違う」

「どういう意味?」

「より直接的で、より広範囲な影響を与えようとしている」

確かに、健一郎は国連で、美穂はオンライン教育で、世界中の子供たちに直接働きかけようとしていた。

数ヶ月後、健太から報告があった。

「健一郎が学校で表彰されました」

「どんな表彰?」

「国際理解作文コンクールで最優秀賞を取ったんです」

「どんな作文を書いたの?」

「『僕のおばあちゃんの愛の物語』というタイトルで」

驚いた。

「私のことを?」

「はい。おばあちゃんが恋人代行から始めて、世界中で愛を広げた話を書いたんです」

「そんなこと書いて大丈夫?」

「大丈夫です。とても美しい愛の物語として評価されました」

健一郎が私たちの物語を、次世代に伝えてくれている。

美咲からも嬉しい報告があった。

「美穂の動画が話題になってるんです」

「動画?」

「YouTubeで『みーちゃん先生の世界の挨拶』という動画を作ったんですが、再生回数が十万回を超えました」

「十万回?」

「はい。世界中の子供たちが見てくれて、コメントもたくさん来てます」

九歳の美穂が、既にインターネットを通じて世界中の子供たちと繋がっている。

時代の変化と、孫たちの可能性を感じた。

ある日、思いがけない連絡があった。

国連の教育担当者からだった。

「美月さん、実はお願いがあります」

「どのようなお願いでしょうか?」

「お孫さんの健一郎くんと美穂ちゃんのことでお聞きしました」

「はい」

「国連で開催する『子供サミット』で、発表していただけませんか?」

「子供たちがですか?」

「はい。次世代の平和構築について、子供たちの視点から話してもらいたいのです」

これは大きなチャンスだった。

家族で相談すると、健一郎と美穂は迷わず「やりたい」と答えた。

「僕、世界中の子供たちと話してみたい」

「みーちゃんも、みんなと仲良くなりたい」

子供サミットの日、私たちは家族全員でニューヨークに向かった。

国連本部の会議室には、世界各国から子供たちが集まっていた。

健一郎の発表は素晴らしかった。

「僕のおばあちゃんは、昔特別なお仕事をしていました」

英語で堂々と発表している。

「でもそのお仕事から、本当の愛を学んで、世界中で愛を広げました」

「僕も、おばあちゃんみたいに愛を広げたいです」

会場の子供たちが真剣に聞いていた。

美穂の発表も感動的だった。

「言葉は違うけど、心は同じです」

「みんなで一緒に、世界の言葉を覚えませんか?」

美穂が十ヶ国語で挨拶すると、会場の子供たちも一緒に復唱した。

「Hello」
「こんにちは」
「Guten Tag」

様々な言語が飛び交う中で、子供たちの笑顔が輝いていた。

発表が終わった後、多くの子供たちが健一郎と美穂に話しかけてきた。

「君のおばあちゃんの話、感動した」

「私も多言語を覚えたい」

「一緒に平和のために頑張ろう」

世界中の子供たちと繋がる健一郎と美穂。

私は涙が止まらなかった。

「美月、誇らしいね」

健一が私の肩を抱いてくれた。

「はい。孫たちが世界の舞台で活躍するなんて」

その夜、ホテルで家族全員が集まった時、健一郎が言った。

「おばあちゃん、僕今日確信した」

「何を?」

「愛は本当に世界を変えることができるって」

美穂も頷いた。

「みーちゃんも思った。言葉は違うけど、愛は同じだって」

孫たちの言葉に、私たちの物語の意味を再認識した。

恋人代行から始まった小さな愛が、今では世界中の子供たちに希望を与えている。

これ以上の成果があるだろうか。

「健一郎、美穂、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう、おばあちゃん」

「おばあちゃんの愛の物語のおかげで、僕たちも夢を持てた」

愛は確実に次世代に受け継がれ、そして世界に広がっている。

それが私たちの物語の究極の意味だった。

第56話 完
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