【完結】君は恋人、でもまだ家族じゃない

山田森湖

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第15話:友人の出産

第15話:友人の出産

実家に帰って3日が経った。母は何も聞かずに、ただ優しく迎えてくれた。父は心配そうな顔をしているけれど、詮索はしてこない。

朝、母と一緒に朝食を食べながら、私は窓の外を眺めていた。実家の庭には、季節の花が咲いている。穏やかな時間。でも、私の心は、穏やかではなかった。

携帯には、彼からのメッセージが何通も来ていた。でも、私はまだ返信していない。今、彼と話す準備ができていない。

「由美、今日は美咲ちゃんの家に行くんでしょ?」

母が聞いてくる。そうだった。今日は、美咲が出産したばかりで、お祝いに行く約束をしていた。

「うん、午後から行くね」

「赤ちゃん、楽しみね」

母の笑顔を見ながら、私は複雑な気持ちになった。赤ちゃん。家族。それは、私がずっと夢見ていたものだった。

午後、私は美咲の家を訪れた。チャイムを鳴らすと、美咲の夫が笑顔で出迎えてくれた。

「いらっしゃい。美咲、待ってたよ」

リビングに入ると、美咲がソファに座って、赤ちゃんを抱いていた。その光景を見て、私の胸が熱くなった。

「由美!来てくれてありがとう」

美咲が、幸せそうに微笑む。私は、美咲の隣に座って、赤ちゃんを見つめた。

「可愛い...」

小さな手、小さな足。眠っている赤ちゃんの顔は、天使のようだった。

「抱いてみる?」

美咲が聞いてくる。私は頷いて、慎重に赤ちゃんを抱きしめた。その温もり。その重さ。全てが、愛おしかった。

「軽いね」

「でも、意外と重いんだよ」

美咲が笑いながら言う。私は、赤ちゃんを見つめながら、涙が出そうになった。

「美咲、幸せそうだね」

「うん、幸せ。大変なこともあるけど、この子がいるだけで、全部報われる」

美咲の言葉が、私の心に染みた。これが、家族を持つということ。

「由美は?彼と、どうなった?」

美咲が、心配そうに聞いてくる。私は、赤ちゃんを美咲に返しながら、答えた。

「実家に帰ってきた。少し、距離を置いてる」

「そっか...辛いね」

「うん。でも、このままじゃダメだと思って」

美咲は、私の手を握った。

「由美の気持ち、わかるよ。でも、諦めないでほしい」

「諦めたくない。でも、彼が答えを出してくれないと、私たちは前に進めない」

美咲は、赤ちゃんを見つめながら言った。

「私も、結婚する前は不安だった。本当に、この人と一生を過ごせるのかって。でも、決断したの。不安よりも、一緒にいたい気持ちの方が大きかったから」

美咲の言葉が、私の心に響く。

「彼も、きっと同じだと思う。不安なんだよ。でも、由美と一緒にいたい気持ちはある。その気持ちに、気づいてもらわないと」

「どうやって?」

「待つしかないよ。でも、ちゃんと、自分の気持ちは伝え続けること」

私は、頷いた。美咲の言葉は、いつも的確だった。

赤ちゃんが泣き始めて、美咲は授乳の準備を始めた。私は、その光景を見つめながら、思った。

私も、こんな風に家族を持ちたい。彼との子どもを抱きたい。でも、それは、彼が決断してくれないと実現しない。

「ねえ、美咲」

「ん?」

「私、まだ待てるかな」

美咲は、優しく微笑んだ。

「待てるよ。由美は、強い子だから」

その言葉に、私は少し勇気をもらった。

美咲の家を出て、駅へ向かう途中、私は携帯を見た。彼からの新しいメッセージ。

「会って話せないかな。待ってる」

私は、少し迷ってから、返信した。

「もう少し、時間をください」

送信ボタンを押して、私は深く息を吐いた。まだ、会う準備ができていない。でも、諦めたわけでもない。

実家に帰ると、母が夕飯を作っていた。

「おかえり。赤ちゃん、可愛かった?」

「うん、すごく可愛かった」

私は、母の隣に座って、手伝いを始めた。

「由美、無理しないでね」

母が、優しく言う。

「大丈夫。ちょっと、考える時間が欲しかっただけだから」

「そう。でも、母はいつでも味方だからね」

母の言葉に、私は涙が出そうになった。家族の温もり。それが、今の私を支えてくれている。

夜、ベッドに入って、私は天井を見つめた。美咲の幸せそうな顔。赤ちゃんの温もり。全てが、私の心を揺さぶっていた。

私も、家族を作りたい。彼と。

でも、彼は、まだ答えを出してくれない。この先、どうなるのだろう。私たちは、前に進めるのだろうか。

携帯を見ると、彼からまたメッセージが来ていた。

「君がいなくて、寂しい。早く帰ってきてほしい」

その言葉を見て、私は複雑な気持ちになった。寂しいと言ってくれる。でも、それだけじゃ足りない。

私は、返信した。

「私も寂しい。でも、あなたの答えを待ってる」

送信して、携帯を置いた。彼は、どんな答えを出すのだろう。それとも、また逃げてしまうのだろうか。

不安と期待が入り混じった感情を抱えたまま、私は目を閉じた。

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