【完結】キミに届いた思い

山田森湖

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キミに届いた思い

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キミに届いた思い

ソウタは、大学生活が始まってからというもの、慌ただしい毎日を送っていた。そんなある日、地元の友達から電話がかかってきた。

「今度、花火大会があるから来いよ!」

誘いにソウタは、二つ返事で「いいよ」と答えた。久しぶりに地元へ帰り、友達に会えることが楽しみだった。

一方そのころ、メグも地元の友達から連絡を受けていた。

「花火大会、みんな浴衣着てくるから、メグも着てね!」

そう言われ、メグは久々にタンスから浴衣を引っ張り出した。少し緊張しながらも、胸の奥にわく期待に心が弾んでいた。

迎えた花火大会当日。ソウタが待ち合わせ場所に着くと、すでに高校時代の悪友たちが集まっていた。懐かしい顔ぶれにホッとしたそのとき、ふと視線の先に、浴衣姿のメグがいた。

高校時代、ソウタは密かにメグのことが好きだった。しかし、いじられキャラの彼は、いつも「お前って○○ちゃんが好きなんだろ」とからかわれていた。冗談だとわかっていても、毎回「違うよ」と笑ってごまかすしかなかった。本当の気持ちは、誰にも言えなかった。

そしてこの日も、「おっ、○○ちゃんいるじゃん!」とからかわれ、ソウタはいつも通り苦笑いしながら受け流した。

みんなで出店を回り、焼きそばやかき氷を楽しみながらも、自然と男子と女子に分かれて行動していた。花火が始まる前、誰かがブルーシートを敷いて場所を確保すると、

「ちょっと食べ物買ってくる!」

と男子たちが立ち上がり、続いて女子たちも

「お酒買ってくる!」

と言ってその場を離れた。

気づけば、ソウタとメグの二人きり。周囲に人は多いとはいえ、まさかこんな形で二人きりになるとは思わず、ソウタの心臓は高鳴った。暗がりに紛れて、自分の赤くなった耳や頬が見えないことに、少し安堵する。

勇気を出して、ソウタが口を開いた。

「最近どう? 大学生活、楽しい?」

メグは笑顔で頷き、久しぶりの会話が弾んだ。けれど、友達はなかなか戻ってこない。

「遅いなぁ……」

そう言ってソウタが立ち上がろうとしたとき、メグが小さく「待って」と言って、彼の手をぎゅっと握った。

驚くソウタに、メグは続けた。

「……暗いのが、ちょっと怖くて。だから、そばにいてほしい」

その一言で、ソウタの鼓動は跳ね上がる。さらにメグは、そっとソウタの腕を引き寄せ、彼に身を預けた。肌に伝わる彼女の体温と、首元の汗の感触に、ソウタの頭は真っ白になる。

そして、メグの耳元から、静かに言葉がこぼれた。

「ソウタ君、好き。」

その意味を理解するのに、ほんの数秒かかった。けれど気づけば、ソウタも自然に答えていた。

「僕も、好き。」

次の瞬間、近くの茂みから友人たちが飛び出してきた。

「やっぱりなー!」

と、満面の笑みでからかってくる友人たち。驚きつつも、状況を理解したソウタとメグ。

実は、メグも高校時代からソウタのことが好きだったらしい。だが、友達から「ソウタは○○ちゃんが好きらしい」と聞かされ、告白できずにいたのだという。

今回の花火大会は、そんな二人の誤解を解き、くっつけるための友人たちの計画だった。

「ソウタって、やっぱりからかわれる運命だよな!」

と笑う友達たちに、メグもつられて笑った。だが不思議と、ソウタはその言葉が嬉しく思えた。

帰りの電車の中、ソウタとメグは並んで座っていた。さっきの出来事を思い返しながら、ソウタがぽつりとつぶやく。

「……こんないじられキャラの僕で、いいの?」

メグは静かに微笑み、優しく答えた。

「だから好きなの。ソウタ君は、みんなを明るくしてくれる。幸せな気持ちにしてくれるんだよ」

その言葉に、ソウタは初めて「自分らしさ」が誇らしく思えた。そして、そっとメグの手を握る。

「ありがとう」

遠くに聞こえる花火の音。ふたりの胸には、静かに何かが始まる予感が満ちていた。
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