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第4話「一夜で終わるはずだったのに」
第4話「一夜で終わるはずだったのに」
目が覚めたとき、知らない天井だった。
ホテルの白い天井。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、やけに現実味を帯びている。
——ああ、そうだ。
昨夜、バーで出会った彼。
勢いで、ここまで来てしまった。
隣を見ると、彼はまだ眠っていた。
寝顔は意外と無防備で、仕事中に見せていそうな余裕の表情とはまるで違う。
「……一夜で終わる関係」
昨夜、自分に言い聞かせるように口にした言葉が、胸の中で反芻される。
そう。これは、よくある話だ。
大人なんだから、割り切れるはずだった。
なのに。
彼の寝息を聞いていると、なぜか胸が落ち着かない。
帰る準備をしなきゃ、と思うのに、体が動かない。
昨夜のことを、思い出す。
正直に言うと、少し意外だった。
もっと慣れた感じの人だと思っていたのに、彼は不器用で、慎重で。
そのぎこちなさが、変に心に残った。
「……慣れてる人より、不器用な人のほうが好きかも」
思わず口にした自分の言葉を、今さら思い出して、恥ずかしくなる。
あれは本音だった。
彼が、ゆっくり目を覚ました。
「……おはよう」
寝起きの低い声。
それだけで、胸がきゅっとする自分に、戸惑う。
「おはようございます」
他人行儀な返事をしてしまった。
距離を保とうとしたのに、彼は少し困ったように笑った。
沈黙が続く。
気まずいのに、壊したくない空気。
「……これで、終わりですよね」
確認するように言った瞬間、胸の奥が少し痛んだ。
本当に終わりなら、それでいいはずなのに。
「はい。無理はしません」
彼の返事は、あっさりしていた。
それが正解なのに、なぜか少し寂しい。
支度をして、部屋を出る。
エレベーターの中で、肩が触れそうで触れない距離。
——このまま、何もなかった顔で別れる。
そう思っていたのに。
ロビーに出たところで、彼が声をかけてきた。
「……あの、連絡先、交換しませんか」
一瞬、言葉を失った。
軽い気持ちで聞いているだけかもしれない。
でも、その「もしも」に、心が揺れた。
「……はい」
自分でも驚くほど、素直な返事だった。
スマホを返してもらうとき、指先が触れる。
ほんの一瞬なのに、妙に意識してしまう。
外に出ると、朝の空気は冷たくて、現実に引き戻される。
「じゃあ……」
それ以上、言葉が続かない。
別れ際、振り返ると、彼もこちらを見ていた。
目が合って、軽く会釈する。
それだけなのに、胸がいっぱいになる。
——一夜で終わる関係。
そう思っていたはずなのに。
駅に向かう途中、スマホが震えた。
彼からのメッセージ。
『無事、着きました?』
たったそれだけの文。
でも、画面を見つめながら、自然と笑っている自分がいた。
「……終わらなかった、かも」
小さく呟いた言葉は、朝の雑踏に溶けていった。
目が覚めたとき、知らない天井だった。
ホテルの白い天井。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、やけに現実味を帯びている。
——ああ、そうだ。
昨夜、バーで出会った彼。
勢いで、ここまで来てしまった。
隣を見ると、彼はまだ眠っていた。
寝顔は意外と無防備で、仕事中に見せていそうな余裕の表情とはまるで違う。
「……一夜で終わる関係」
昨夜、自分に言い聞かせるように口にした言葉が、胸の中で反芻される。
そう。これは、よくある話だ。
大人なんだから、割り切れるはずだった。
なのに。
彼の寝息を聞いていると、なぜか胸が落ち着かない。
帰る準備をしなきゃ、と思うのに、体が動かない。
昨夜のことを、思い出す。
正直に言うと、少し意外だった。
もっと慣れた感じの人だと思っていたのに、彼は不器用で、慎重で。
そのぎこちなさが、変に心に残った。
「……慣れてる人より、不器用な人のほうが好きかも」
思わず口にした自分の言葉を、今さら思い出して、恥ずかしくなる。
あれは本音だった。
彼が、ゆっくり目を覚ました。
「……おはよう」
寝起きの低い声。
それだけで、胸がきゅっとする自分に、戸惑う。
「おはようございます」
他人行儀な返事をしてしまった。
距離を保とうとしたのに、彼は少し困ったように笑った。
沈黙が続く。
気まずいのに、壊したくない空気。
「……これで、終わりですよね」
確認するように言った瞬間、胸の奥が少し痛んだ。
本当に終わりなら、それでいいはずなのに。
「はい。無理はしません」
彼の返事は、あっさりしていた。
それが正解なのに、なぜか少し寂しい。
支度をして、部屋を出る。
エレベーターの中で、肩が触れそうで触れない距離。
——このまま、何もなかった顔で別れる。
そう思っていたのに。
ロビーに出たところで、彼が声をかけてきた。
「……あの、連絡先、交換しませんか」
一瞬、言葉を失った。
軽い気持ちで聞いているだけかもしれない。
でも、その「もしも」に、心が揺れた。
「……はい」
自分でも驚くほど、素直な返事だった。
スマホを返してもらうとき、指先が触れる。
ほんの一瞬なのに、妙に意識してしまう。
外に出ると、朝の空気は冷たくて、現実に引き戻される。
「じゃあ……」
それ以上、言葉が続かない。
別れ際、振り返ると、彼もこちらを見ていた。
目が合って、軽く会釈する。
それだけなのに、胸がいっぱいになる。
——一夜で終わる関係。
そう思っていたはずなのに。
駅に向かう途中、スマホが震えた。
彼からのメッセージ。
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でも、画面を見つめながら、自然と笑っている自分がいた。
「……終わらなかった、かも」
小さく呟いた言葉は、朝の雑踏に溶けていった。
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