隣に座っただけの未来

山田森湖

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第7話「気づけば週1で会う関係に」

第7話「気づけば週1で会う関係に」


気づいたら、だった。

最初は偶然。
次は「時間が合えば」。
それがいつの間にか、毎週金曜の夜に、彼女と会うのが当たり前になっていた。

名前を呼ぶほど近くなったのに、関係の名前は、どこにもない。

「また一週間終わりましたね」

カウンターに並んで、彼女がそう言う。
それを聞くだけで、肩の力が抜ける自分がいる。

仕事の話をして、上司の愚痴を言って、笑って。
それだけなのに、不思議と満たされる。

——居心地がいい。

これが一番、厄介だった。

身体の関係があるからじゃない。
正直、体の相性がいいのは事実だ。

でもそれ以上に、何も考えずにいられる時間が、心地よすぎた。

この日も、自然な流れで彼女の部屋に行った。

「シャワー、先どうぞ」

そう言われて、遠慮なく借りる。
彼女の生活の匂いがする空間に、もう違和感がない。

ベッドに並んで横になる。
キスは、ゆっくりだった。

急がない。
欲望より先に、触れたいという気持ちがくる。

「……ねえ」

彼女が、俺の胸に顔をうずめたまま言う。

「私たち、何なんでしょうね」

心臓が、一瞬跳ねた。

答えを用意していなかった。
いや、用意できなかった。

「……さあ」

正直すぎる返事に、自分でも苦笑する。

彼女は怒らなかった。
それが、余計に胸に刺さる。

「でも」

俺は、言葉を探す。

「会いたいって思うのは、本当です」

嘘じゃなかった。

体を重ねるときも、ただ欲しいだけじゃない。
彼女の反応一つひとつが、愛おしい。

呼吸。
声。
背中に回した腕の細さ。

終わったあと、抱き合ったまま眠るのが、最近の習慣になっていた。

「……このまま寝てもいいですか」

彼女が小さく聞く。

「もちろん」

答えながら、胸の奥が少し痛んだ。

——これ、恋人じゃないのか?

そう思う自分と、
そう呼ぶのが怖い自分が、同時にいる。

朝、目が覚めると、彼女はまだ寝ていた。
無防備な寝顔。

思わず、髪に触れる。

その瞬間、強く思った。

——失いたくない。

でも、だからこそ、踏み込めない。

恋人になって、壊れたらどうする。
重くなって、終わったらどうする。

経験はある。
それなりに、恋愛もしてきた。

でも、こんなふうに、静かに深く入り込んでくる感情は、初めてだった。

彼女が目を覚まして、目が合う。

「おはよう」

その一言で、全部が報われる気がした。

別れ際、玄関で靴を履きながら、彼女が言う。

「来週も……会えますか」

迷わず頷いていた。

「はい」

帰り道、一人になって、ようやく自覚する。

——俺はもう、この関係を「軽い」とは思っていない。

週1で会う。
体を重ねる。
心まで、触れてしまっている。

それでもまだ、名前をつけられずにいる。

この曖昧さが、今は心地よくて。
でも同時に、いつか壊れる気もしていた。

それでも。

次の金曜が、待ち遠しい自分がいる。
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