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第9話「ベタなドライブと、忘れられない笑顔」
第9話「ベタなドライブと、忘れられない笑顔」
正直に言うと、俺は「ドライブデート」ってやつがあまり得意じゃない。
音楽は何をかければ正解なのか分からないし、
沈黙が続くと、運転に集中してるふりをしたくなる。
それでも今日は、彼女を助手席に乗せて、少し遠くまで走ってみようと思った。
理由は単純だ。
あの夜——俺が弱音を吐いたあと、彼女が見せた表情が、ずっと頭から離れなかった。
心配そうで、でも優しくて、
「逃げないでいてくれる人」の顔だった。
「ドライブとか、ベタすぎ?」
ハンドルを握りながらそう聞くと、彼女は笑った。
「ベタなの、嫌いじゃないですよ」
その言い方が、妙に可愛くて、アクセルを踏む足に力が入る。
目的地は、海沿いの小さなカフェ。
誰かに自慢できるような場所じゃないけど、静かで、落ち着く。
車内では、他愛ない話をした。
仕事の愚痴、昔好きだったドラマ、コンビニのコーヒー論争。
それなのに、不思議と楽しい。
信号待ちのたびに、彼女の横顔を盗み見る。
風に揺れる髪、少し緊張したみたいな口元。
——ああ、これ、完全にデートだ。
そう気づいた瞬間、胸がざわついた。
カフェで並んで座り、同じデザートを分け合う。
スプーンが触れそうになるたび、変に意識してしまう。
「なんか、今日のあなた、静かですね」
そう言われて、誤魔化すように笑った。
「考え事してただけ」
嘘じゃない。
でも、考えていたのは仕事じゃなくて、彼女のことだった。
帰り道、夕焼けがフロントガラスを染める。
「綺麗ですね」
彼女がそう言って、写真を撮ろうとする。
「……今の顔のほうが、綺麗だけど」
言った瞬間、自分で驚いた。
彼女は一瞬固まって、それから小さく笑った。
「そういうの、急に言うの反則です」
耳まで赤くなっているのを見て、心臓が跳ねる。
——もう、遊びじゃない。
家に着いても、なかなか別れたくなくて、
結局、部屋に上がってもらった。
ソファに並んで座り、肩が触れる。
触れただけなのに、熱が伝わる。
キスは、ゆっくりだった。
欲望よりも、確かめるみたいに。
彼女の反応を一つ一つ感じながら、抱きしめる。
ベッドに横になったあとも、すぐには始めなかった。
「……今日は、こういうのも、いいな」
そう言うと、彼女は少し驚いた顔をして、でも頷いた。
触れる距離は近いのに、心はもっと近づいた気がした。
眠る前、彼女がぽつりと呟く。
「今日、楽しかったです」
その一言で、胸がいっぱいになる。
——俺もだよ。
いや、それ以上だ。
彼女の笑顔が、頭から離れない。
助手席で笑っていた顔も、照れた横顔も。
これはもう、「特別」なんて言葉じゃ足りない。
でも、名前をつけるのが、少し怖い。
眠る彼女を見つめながら、俺は思った。
次は、ちゃんと気持ちを向き合わなきゃいけない。
この関係を、
「都合のいいまま」には、もう戻せない。
そう、はっきりと自覚した夜だった。
正直に言うと、俺は「ドライブデート」ってやつがあまり得意じゃない。
音楽は何をかければ正解なのか分からないし、
沈黙が続くと、運転に集中してるふりをしたくなる。
それでも今日は、彼女を助手席に乗せて、少し遠くまで走ってみようと思った。
理由は単純だ。
あの夜——俺が弱音を吐いたあと、彼女が見せた表情が、ずっと頭から離れなかった。
心配そうで、でも優しくて、
「逃げないでいてくれる人」の顔だった。
「ドライブとか、ベタすぎ?」
ハンドルを握りながらそう聞くと、彼女は笑った。
「ベタなの、嫌いじゃないですよ」
その言い方が、妙に可愛くて、アクセルを踏む足に力が入る。
目的地は、海沿いの小さなカフェ。
誰かに自慢できるような場所じゃないけど、静かで、落ち着く。
車内では、他愛ない話をした。
仕事の愚痴、昔好きだったドラマ、コンビニのコーヒー論争。
それなのに、不思議と楽しい。
信号待ちのたびに、彼女の横顔を盗み見る。
風に揺れる髪、少し緊張したみたいな口元。
——ああ、これ、完全にデートだ。
そう気づいた瞬間、胸がざわついた。
カフェで並んで座り、同じデザートを分け合う。
スプーンが触れそうになるたび、変に意識してしまう。
「なんか、今日のあなた、静かですね」
そう言われて、誤魔化すように笑った。
「考え事してただけ」
嘘じゃない。
でも、考えていたのは仕事じゃなくて、彼女のことだった。
帰り道、夕焼けがフロントガラスを染める。
「綺麗ですね」
彼女がそう言って、写真を撮ろうとする。
「……今の顔のほうが、綺麗だけど」
言った瞬間、自分で驚いた。
彼女は一瞬固まって、それから小さく笑った。
「そういうの、急に言うの反則です」
耳まで赤くなっているのを見て、心臓が跳ねる。
——もう、遊びじゃない。
家に着いても、なかなか別れたくなくて、
結局、部屋に上がってもらった。
ソファに並んで座り、肩が触れる。
触れただけなのに、熱が伝わる。
キスは、ゆっくりだった。
欲望よりも、確かめるみたいに。
彼女の反応を一つ一つ感じながら、抱きしめる。
ベッドに横になったあとも、すぐには始めなかった。
「……今日は、こういうのも、いいな」
そう言うと、彼女は少し驚いた顔をして、でも頷いた。
触れる距離は近いのに、心はもっと近づいた気がした。
眠る前、彼女がぽつりと呟く。
「今日、楽しかったです」
その一言で、胸がいっぱいになる。
——俺もだよ。
いや、それ以上だ。
彼女の笑顔が、頭から離れない。
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これはもう、「特別」なんて言葉じゃ足りない。
でも、名前をつけるのが、少し怖い。
眠る彼女を見つめながら、俺は思った。
次は、ちゃんと気持ちを向き合わなきゃいけない。
この関係を、
「都合のいいまま」には、もう戻せない。
そう、はっきりと自覚した夜だった。
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