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卒業式のあと、君は僕の名前を忘れた
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卒業式のあと、君は僕の名前を忘れた
校庭に撒かれた紙吹雪のように、僕らの高校生活はあっけなく終わった。
卒業式の帰り道、アヤと手を繋いで歩いたのを今でも覚えている。
「ねえ、これからも一緒にいようね」
制服の袖を引っ張る彼女に、僕は笑ってうなずいた。
――けれど翌日、その約束は壊れた。
アヤが交通事故に遭った。命は助かったものの、記憶を一部失ってしまった。
病室で目を覚ました彼女は、僕を見て首を傾げた。
「……ごめんなさい、どなたですか?」
その瞬間、胸に空いた穴から冷たい風が吹き抜けた。
卒業式の余韻も、未来への期待も、一気に消えていった。
数週間後。
僕はアヤの前に「初対面のふり」をして立った。
「はじめまして。俺はリョウ。同じ高校だったんだ」
「そうなんだ……」アヤは人懐っこく笑った。
その笑顔に、僕はもう一度恋をした。
退院後も彼女に会いに行った。学校帰りに図書館やカフェで一緒に過ごし、他愛ない話を繰り返した。
以前の思い出はなくても、新しい時間を積み重ねればいい――そう思った。
だが夜になると、ベッドで考えてしまう。
「彼女にとって俺は、もう“知らない人”なんだ」
思い出を共有できない虚しさが、胸を締めつけた。
ある夜、彼女を家に送ったあと、思い切って言った。
「なあ……もし俺と付き合ってみない?」
アヤは驚いたように目を丸くした。
「……付き合う? 私のこと、そんなに好きなの?」
「うん。ずっと前から」
嘘じゃない。ただ“ずっと”の意味を彼女は知らない。
その夜、彼女の部屋で僕らは唇を重ねた。
制服を脱がせる指先が震える。初めてじゃないのに、初めてみたいに。
「怖い……けど、あなたならいい」
彼女の声に、胸が張り裂けそうになった。
本当は“もう一度”なのに、“初めて”として触れ合う。
それが苦しくもあり、救いでもあった。
それから、僕らは恋人としての日々を過ごした。
放課後にカフェで勉強し、夜には電話で笑い合う。
だけど、僕の心の奥には常に影があった。
あるとき、アヤが無邪気に言った。
「ねえ、もし私が全部思い出したらどうなるんだろうね」
「……」
言葉が詰まった。
思い出したら、彼女は気づくはずだ。
“この人ともう一度恋をしている”ことに。
それとも、忘れたままの方が幸せなんだろうか。
卒業してから一年。
春の風がまた吹き始めた頃、アヤが突然言った。
「この前、夢を見たの。あなたと制服で歩いてる夢」
「……そっか」
「なんでだろうね。懐かしい感じがした」
彼女の瞳に涙が浮かんでいた。
僕はその手を握りしめた。
「きっと、それはこれからも続いていく夢だよ」
彼女は小さく笑ってうなずいた。
――彼女が記憶を取り戻すかどうかはわからない。
だけど僕は、何度でも彼女に恋をする。
卒業式の約束は、形を変えて今も続いているのだから。
校庭に撒かれた紙吹雪のように、僕らの高校生活はあっけなく終わった。
卒業式の帰り道、アヤと手を繋いで歩いたのを今でも覚えている。
「ねえ、これからも一緒にいようね」
制服の袖を引っ張る彼女に、僕は笑ってうなずいた。
――けれど翌日、その約束は壊れた。
アヤが交通事故に遭った。命は助かったものの、記憶を一部失ってしまった。
病室で目を覚ました彼女は、僕を見て首を傾げた。
「……ごめんなさい、どなたですか?」
その瞬間、胸に空いた穴から冷たい風が吹き抜けた。
卒業式の余韻も、未来への期待も、一気に消えていった。
数週間後。
僕はアヤの前に「初対面のふり」をして立った。
「はじめまして。俺はリョウ。同じ高校だったんだ」
「そうなんだ……」アヤは人懐っこく笑った。
その笑顔に、僕はもう一度恋をした。
退院後も彼女に会いに行った。学校帰りに図書館やカフェで一緒に過ごし、他愛ない話を繰り返した。
以前の思い出はなくても、新しい時間を積み重ねればいい――そう思った。
だが夜になると、ベッドで考えてしまう。
「彼女にとって俺は、もう“知らない人”なんだ」
思い出を共有できない虚しさが、胸を締めつけた。
ある夜、彼女を家に送ったあと、思い切って言った。
「なあ……もし俺と付き合ってみない?」
アヤは驚いたように目を丸くした。
「……付き合う? 私のこと、そんなに好きなの?」
「うん。ずっと前から」
嘘じゃない。ただ“ずっと”の意味を彼女は知らない。
その夜、彼女の部屋で僕らは唇を重ねた。
制服を脱がせる指先が震える。初めてじゃないのに、初めてみたいに。
「怖い……けど、あなたならいい」
彼女の声に、胸が張り裂けそうになった。
本当は“もう一度”なのに、“初めて”として触れ合う。
それが苦しくもあり、救いでもあった。
それから、僕らは恋人としての日々を過ごした。
放課後にカフェで勉強し、夜には電話で笑い合う。
だけど、僕の心の奥には常に影があった。
あるとき、アヤが無邪気に言った。
「ねえ、もし私が全部思い出したらどうなるんだろうね」
「……」
言葉が詰まった。
思い出したら、彼女は気づくはずだ。
“この人ともう一度恋をしている”ことに。
それとも、忘れたままの方が幸せなんだろうか。
卒業してから一年。
春の風がまた吹き始めた頃、アヤが突然言った。
「この前、夢を見たの。あなたと制服で歩いてる夢」
「……そっか」
「なんでだろうね。懐かしい感じがした」
彼女の瞳に涙が浮かんでいた。
僕はその手を握りしめた。
「きっと、それはこれからも続いていく夢だよ」
彼女は小さく笑ってうなずいた。
――彼女が記憶を取り戻すかどうかはわからない。
だけど僕は、何度でも彼女に恋をする。
卒業式の約束は、形を変えて今も続いているのだから。
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