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ケーキから見つかった怪しげな粉末。まるで毒のようにも見え、その場にいた誰もが狼狽した。
「こ、これはなんだ……?」
「ど、毒……まさか、本当に?」
口々に響く声を聞きながら、ココナは呆然と立ち尽くしていた。さっきまでは単なる失言とドジで終わるはずだったのに、蓋を開ければ本当に“毒らしき”ものが現れるなんて。
「ローレライ様、これは……一体」
そこに駆け寄ってきたのは、公爵令嬢と親しい他の貴族たち。彼女たちも不安げな表情を浮かべ、ローレライを問い詰めようとする。
「私、全然知らなくて……おかしいわ。材料には厳重に気を遣っていたのに」
ローレライはうろたえながらも自分の料理過程を必死に思い出そうとする。しかし、どうしても毒なんて入れようがないと首を振るばかりだ。
場を収めようと、公爵家の執事や関係者たちが慌ただしく動き始める。とりあえず検査をするからと、ケーキの破片を回収しようとしたが、粉末は床の汚れや周囲の砂と混じり合って、もはやまともに回収できる状態ではなかった。
「こんな時に限って……」
その光景を目にしながら、ココナは声も出せずにいた。周囲からは冷たい視線を浴びせられているのを感じる。まるで “私がわざと落として、この粉末を暴いたのではないか” と言わんばかりの空気だ。
「ココナ様、あなた最初に『毒でも入っているのでは』と言っていましたわよね。なにかご存知なの?」
「まさか、毒を仕込んだのがココナ様……?」
令嬢たちの疑いが別の方向に向き始める。ココナの咄嗟の失言があっただけに、疑惑の矢は容赦なく飛んでくる。
「ち、違います! 私はただ、言葉のあやで……」
顔から血の気が引く。確かに自分が“毒”という言葉を口走ったのは事実だが、そんなことをするはずもない。勢いでケーキを落としてしまったのも本当だが、狙ってやったわけではない。
「落ち着いて、皆様。今ははっきりとしたことが何もわかりませんわ」
ローレライが必死に取り繕う。しかし、当の本人であるローレライも疑いの視線を浴びつつあり、まるで嵐の只中にいるようだ。
不審な粉末が毒かどうかは定かではない。だが、この一件によってココナの悪評はさらに加速していくことが明らかだった。実際、この場にいるほとんどの貴族が 「なんてことを……」 と軽蔑に近い眼差しを向けている。
そして、パーティーは中止に近い形でお開きになる。あまりに不吉な事件だった。
ココナは帰りの馬車の中で、瞳を閉じたまま必死に涙を堪えていた。自分のせいでこんな騒ぎになってしまったことへの後悔と、毒らしきものが本当に存在したという衝撃。両方が重くのしかかる。
「私は……何も……」
誤解されるのは慣れていると思っていたが、今回ばかりは質が違う。もし、毒が仕込まれていたとしたら、一体誰が、何のために? そしてそれを暴いた形になったのは結果的に自分——さらに悪名を被るしかないのか。
考えを巡らせるほどに胸が苦しくなる。答えなどすぐに出ないが、ただ一つだけ言えるのは、このままでは終われないということだった。
「こ、これはなんだ……?」
「ど、毒……まさか、本当に?」
口々に響く声を聞きながら、ココナは呆然と立ち尽くしていた。さっきまでは単なる失言とドジで終わるはずだったのに、蓋を開ければ本当に“毒らしき”ものが現れるなんて。
「ローレライ様、これは……一体」
そこに駆け寄ってきたのは、公爵令嬢と親しい他の貴族たち。彼女たちも不安げな表情を浮かべ、ローレライを問い詰めようとする。
「私、全然知らなくて……おかしいわ。材料には厳重に気を遣っていたのに」
ローレライはうろたえながらも自分の料理過程を必死に思い出そうとする。しかし、どうしても毒なんて入れようがないと首を振るばかりだ。
場を収めようと、公爵家の執事や関係者たちが慌ただしく動き始める。とりあえず検査をするからと、ケーキの破片を回収しようとしたが、粉末は床の汚れや周囲の砂と混じり合って、もはやまともに回収できる状態ではなかった。
「こんな時に限って……」
その光景を目にしながら、ココナは声も出せずにいた。周囲からは冷たい視線を浴びせられているのを感じる。まるで “私がわざと落として、この粉末を暴いたのではないか” と言わんばかりの空気だ。
「ココナ様、あなた最初に『毒でも入っているのでは』と言っていましたわよね。なにかご存知なの?」
「まさか、毒を仕込んだのがココナ様……?」
令嬢たちの疑いが別の方向に向き始める。ココナの咄嗟の失言があっただけに、疑惑の矢は容赦なく飛んでくる。
「ち、違います! 私はただ、言葉のあやで……」
顔から血の気が引く。確かに自分が“毒”という言葉を口走ったのは事実だが、そんなことをするはずもない。勢いでケーキを落としてしまったのも本当だが、狙ってやったわけではない。
「落ち着いて、皆様。今ははっきりとしたことが何もわかりませんわ」
ローレライが必死に取り繕う。しかし、当の本人であるローレライも疑いの視線を浴びつつあり、まるで嵐の只中にいるようだ。
不審な粉末が毒かどうかは定かではない。だが、この一件によってココナの悪評はさらに加速していくことが明らかだった。実際、この場にいるほとんどの貴族が 「なんてことを……」 と軽蔑に近い眼差しを向けている。
そして、パーティーは中止に近い形でお開きになる。あまりに不吉な事件だった。
ココナは帰りの馬車の中で、瞳を閉じたまま必死に涙を堪えていた。自分のせいでこんな騒ぎになってしまったことへの後悔と、毒らしきものが本当に存在したという衝撃。両方が重くのしかかる。
「私は……何も……」
誤解されるのは慣れていると思っていたが、今回ばかりは質が違う。もし、毒が仕込まれていたとしたら、一体誰が、何のために? そしてそれを暴いた形になったのは結果的に自分——さらに悪名を被るしかないのか。
考えを巡らせるほどに胸が苦しくなる。答えなどすぐに出ないが、ただ一つだけ言えるのは、このままでは終われないということだった。
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