私との婚約、今日で終わりですか?

ともえなこ

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翌朝、ココナは早速ローレライに会うため、公爵家へ足を運ぶことにした。先日の気まずさを思い出すと少し憂鬱だったが、彼女が協力を申し出てくれたのも事実。今は頼れる味方を失いたくなかった。

 馬車を降り、門をくぐると、広い庭を見渡せる道の先にローレライが立っているのが見えた。明るい色のドレスを着て、やや緊張した面持ちでこちらを見つめている。

「おはよう、ココナ様。お越しいただけるなんて、嬉しいわ」

「こちらこそ。突然お邪魔してごめんなさい。少し、話をしたいことがあって」

 ローレライは笑みを浮かべる。その表情にはどこか迷いがあるように見えたが、すぐにココナの腕をそっと取り、屋敷の応接間へと案内する。

「実は、私のほうも気になることがあるの。あのケーキの材料を仕入れた商会から、変わった報告が入っているみたいなの」

「商会から?」

 ココナは思わず身を乗り出す。先日、自分も執事に調査を依頼したところだった。同じ商会の情報であれば、何か手がかりが得られるかもしれない。

「ええ。父が独自に調べさせたところ、最近その商会の経営者が急に変わったらしいの。詳しい事情ははっきりしないけれど、何か後ろ暗いことがあったようだって」

「経営者が変わる……それもまた急に。まるで誰かが口封じをしたみたいにも聞こえますね」

 ココナの言葉にローレライは不安げな表情を浮かべる。もし毒が本当に仕込まれたものだとしたら、それを実行した人物や背景があるはずだ。それを隠すために経営者ごとすり替えたという可能性は否定できない。

 そして、ココナは思い切って打ち明ける。

「私も父に頼んで、その商会を探ってもらっていたんです。今はまだ情報が少ないのですが、どうやら王宮の人間と裏で取引をしていたようだ、という噂まであるらしくて」

「王宮の人間……? じゃあ、もしかして、本当に王族か、または王族に近い誰かが絡んでいるの?」

「断定はできません。でも、私たちが思っている以上に、この事件は単純じゃないように感じます」

 ローレライは小さく頷き、ハンカチをぎゅっと握りしめた。自分のケーキが利用されたのだと考えれば、その気持ちも複雑だろう。

「一緒に調べましょう、ココナ様。怖いけれど、私も何とか真実を知りたいわ」

「ありがとう。ローレライ様が一緒にいてくださるなら心強いです」

 二人は視線を交わし合い、ほんの小さく微笑んだ。お互いに傷を負い、噂の矢面に立たされている身。手を取り合わなければ、何も前へ進まない。

 そのあと、ローレライは父のエリオット公爵に取り次いでくれ、わずかながら商会の書類ややりとりのコピーを見せてもらうことができた。そこには確かに、特定の人物名が伏せられた不審な取引の記録が残っていた。

「これを解読できれば、あるいは……」

 ココナは書類を見つめながら思案する。ひとつめの手がかりとも言える事実。しかし同時に、背後に潜む闇の大きさを感じざるを得なかった。
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